最近読んだ本・フランス書

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(フレデリック・トリスタン『灰と雷』)

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(BALLAND 1982年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで5冊目だと思います。ネットで見ると、トリスタンの作風には、中国もの、幻想驚異もの、偽史もの、迷宮ものの4種あるとしています。なぜ中国もの…

André Dhôtel『La nouvelle chronique fabuleuse』(アンドレ・ドーテル『新・架空噺』)

André Dhôtel『La nouvelle chronique fabuleuse』(Pierre Horay 1984年) 2年前読んだ『Les voyages fantastiques de JULIEN GRAINEBIS』(2022年1月15日記事参照)が面白かったので、手に取ってみました。期待どおり、不思議な冒険譚の数々が収められてい…

J.-H.ROSNY AINÉ『LA FEMME DISPARUE』(J=H・ロニー兄『消えた女』)

J.-H.ROSNY AINÉ『LA FEMME DISPARUE』(COSMOPOLITES 1925年?) 幻想小説アンソロジーでよく掲載されているロニー兄の作品です。以前、『L’ÉNIGME DE GIVREUSE(ジヴリューズの謎)』という分身を扱った超自然的小説を読んだことがありますが(2022年11月5…

EDMOND JALOUX『LA FIN D’UN BEAU JOUR』(エドモン・ジャルー『好日の終わり』)

EDMOND JALOUX『LA FIN D’UN BEAU JOUR』(ARTHÈME FAYARD 1930年) エドモン・ジャルーを読むのは初めて。廣瀬哲士の『新フランス文学』で、アンリ・ド・レニエの弟子筋と紹介されていたので、読んでみました。「LE LIVRE DE DEMAIN」という叢書の一冊で、…

ALEXANDRE DUMAS『Sur Gérard de Nerval』(アレクサンドル・デュマ『ネルヴァルについて』)

ALEXANDRE DUMAS『Sur Gérard de Nerval―Nouveaux Mémoires(ジェラール・ド・ネルヴァルについて―新たな思い出)』(Complexe 1990年) デュマが書いたネルヴァルの思い出となれば、読まずにはおれません。この本が世に出ることとなったいきさつをクロード…

Hubert Haddad『La double conversion d’Al-Mostancir』(ユベール・アダッド『アル・モスタンシルの二重の改宗』)

Hubert Haddad『La double conversion d’Al-Mostancir』(fayard 2003年) ユベール・アダッドを読むのは、これで5冊目。最初に読んだ短篇「Le Secret de l’immortalité(不死の秘密)」があまりに衝撃的だったので、続けて読んできましたが、これまででは、…

MAURICE RENARD『LE MAÎTRE DE LA LUMIÈRE』(モーリス・ルナール『光を支配するもの』)

カバー 本体 MAURICE RENARD『LE MAÎTRE DE LA LUMIÈRE』(TALLANDIER 1948年) モーリス・ルナールのフランス書を読むのはこれで7冊目。1933年に、「L'Intransigeant(非妥協)」という新聞に連載された小説で、この本が初版です。細かい字でびっちりと詰ま…

Pierre Gripari『Le gentil petit diable』(ピエール・グリパリ『善良な悪魔の子』)

Pierre Gripari『Le gentil petit diable et autres contes de la rue Broca』(Gallimard 1983年) 読み終わってから、これを書こうとネットを見ていたら、なんと、この作品を訳したらしき『ブロカ通りのコント』という本が朝日出版社から出ていることを知…

JOSÉPHIN PÉLADAN『LES AMANTS DE PISE』(ジョゼファン・ペラダン『ピサの恋人たち』)

JOSÉPHIN PÉLADAN『LES AMANTS DE PISE』(UNION GÉNÉRALE D’ÉDITIONS 1984年) 5年ほど前に、大阪古書会館の古本市で150円で買ったもの。前の持主が誤植を正すなど丁寧に読んだ形跡がありました。ペラダンの名前は、学生の頃から、澁澤龍彦の『悪魔のいる文…

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(フレデリック・トリスタン『蠅たちの王』)

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(CHRISTIAN BOURGOIS 1974年) 引き続きフレデリック・トリスタンを読んでみました。10年ほど前、パリのLibrairie Henri Vignesという古本屋で1ユーロで購入した本。手紙文が少し挿まれるだけで、あとは全篇日誌の…

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(フレデリック・トリスタン『名無し男の真面目で滑稽な物語』)

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(Balland 1980年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで三冊目。これまでの二冊は長篇小説で、エピソードが織り込まれながらも全体を統一したストーリーがありましたが、…

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(フレデリック・トリスタン『バルタザール・コベールの英雄的苦難』)

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(Fayard 1999年) 昨年読んだ『Dieu, l’Univers et madame Berthe(神と宇宙とベルト夫人)』があまりにも衝撃的だったので(10月10日記事参照)、M・シュネデール『フランス幻想文学史…

NOËL DEVAULX『LE PRESSOIR MYSTIQUE』(ノエル・ドォヴォー『神秘の圧搾機』)

NOËL DEVAULX『LE PRESSOIR MYSTIQUE』(GALLIMARD 1982年) 本書は、1937年から45年に書かれた作品を集めて1948年に出版されています。前回読んだ『l’auberge Parpillon(パルピヨン館)』は、1937年から44年までの作品をまとめて1945年に出版されています…

Noël Devaulx『L’auberge Parpillon』(ノエル・ドゥヴォー『パルピヨン館』)

Noël Devaulx『L’auberge Parpillon』(GALLIMARD 1984年) 昨年読んだ『LA DAME DE MURCIE(ムルシアの貴婦人)』がものすごかったので(2022年4月5日記事参照)、シュネデールの『フランス幻想文学史』でも第一小説集でありかつ代表作として紹介されていた…

GASTON COMPÈRE『LA FEMME DE PUTIPHAR』(ガストン・コンペール『ポティファルの妻』)

GASTON COMPÈRE『LA FEMME DE PUTIPHAR』(marabout 1975年) この作者についても、「小説幻妖弐 ベルギー幻想派特集」所収の森茂太郎の文章で教えられました。12篇が収められた短篇集で、期待して読んでみましたが、はっきり言ってがっかり。理由はいろいろ…

GUSTAVE KAHN『Le Roi Fou』(ギュスターヴ・カーン『狂王』)

GUSTAVE KAHN『Le Roi Fou』(G.HAVARD FILS 1896年) パリの古本屋の均一棚で6€で買った本。ギュスターヴ・カーンを読むのは初めて。名前は世紀末文学の評論などに象徴主義詩人としてよく出てきて、以前から読みたいと思っておりました。ところが、期待に反…

JEAN RICHEPIN『MIARKA―LA FILLE À L’OURSE』(ジャン・リシュパン『ミアルカ―熊に育てられた娘』)

JEAN RICHEPIN『MIARKA―LA FILLE À L’OURSE』(CHARPENTIER FASQUELLE 1948年) ひさしぶりに生田耕作旧蔵書を読みました。生田耕作旧蔵書は54冊所持していますが、読むのはこれで26冊目。350頁の長編です。読んだ印象は、同著者の短篇集『Le Coin des fous…

Rachilde『LA FEMME AUX MAINS D’IVOIRE』(ラシルド『象牙の手をした女』)

Rachilde『LA FEMME AUX MAINS D’IVOIRE』(J.FERENCZI ET FILS 1937年) 原著は1929年刊ですが、「LE LIVRE MODERNE ILLUSTRÉ」というシリーズでの再刊本。このシリーズは、数冊所持していますが、少し幅広の判型で表紙のデザインも統一され、版画の挿画が…

J.-H.Rosny ainé『L’ÉNIGME DE GIVREUSE』(J=H・ロニー兄『ジヴリューズの謎』)

J.-H.Rosny ainé『L’ÉNIGME DE GIVREUSE suivi de LA HAINE SURNATURELLE』(Bibliothèque nationale de France 2017年) フランスSFの祖の一人と言われるロニー兄の作品を読んでみました。これまで『フランス幻想文学傑作選3』(白水社)や『19世紀フランス…

Frédérick Tristan『Dieu, l’Univers et madame Berthe』(フレデリック・トリスタン『神と宇宙とベルト夫人』)

Frédérick Tristan『Dieu, l’Univers et madame Berthe』(FAYARD 2002年) 10年ほど前のパリ古本ツアーで、ジベール・ジョゼフ書店で買ったもの。フレデリック・トリスタンを読むのは初めて。たぶんトリスタン作品は一篇も翻訳が出てないはずです。名前を知…

LÉON-PAUL FARGUE『haute solitude』(レオン=ポール・ファルグ『気高い孤独』)

LÉON-PAUL FARGUE『haute solitude』(GALLIMARD 1982年) 珍しくパリで新刊で買った本。原著は、1941年刊。何かの本で高い評価がされていたので、読んでみましたが、読み始めた途端、この本を選ぶのではなかったと後悔しました。散文詩なのでとてつもなく難…

G.-O.CHÂTEAUREYNAUD『LA FACULTÉ DES SONGES』(シャトレイノー『夢見大学』)

GEORGES-OLIVIER CHÂTEAUREYNAUD『LA FACULTÉ DES SONGES』(France-Loisirs 1983年) 引き続き、シャトレイノーを読みました。長編で、本作でルノードー賞というのを受けています。幻想小説ではなく普通の小説の体裁をしていますが、変わった味わいを醸し出…

Châteaureynaud『Le Jardin dans l’île』(シャトレイノー『島の庭園』)

Georges-Olivier Châteaureynaud『Le Jardin dans l’île et autres nouvelles』(Librio 1996年) 久しぶりにシャトレイノーを読みました。シャトレイノーを読んだのはこれで7冊目。この短篇集は、比較的初期の短篇集で、10篇の作品が収められていますが、『…

marcel béalu『PASSAGE DE LA BÊTE』(マルセル・ベアリュ『獣道』)

marcel béalu『PASSAGE DE LA BÊTE』(pierre belfond 1969年) 続いて、マルセル・ベアリュ。今回は、あまり気持ちのいい読書ではありませんでした。冒頭しばらくは落ち着いた筆致で、たまに洗練された表現が出てきて期待を抱きましたが、途中から一転、夫…

MARCEL BÉALU『la grande marée』(マルセル・ベアリュ『大潮』)

カバー 中 MARCEL BÉALU『la grande marée』(belfond 1973年) 6年ほど前、セーヌ河岸の古本屋で買ったもの。フランスの本にしては珍しくカバーがかかっています。ベアリュは、短篇集『水蜘蛛』を翻訳で読んで以来、『Mémoires de l’ombre(影の記憶)』な…

CATULLE MENDÈS『ZO’HAR』(カチュール・マンデス『ゾハール』)

CATULLE MENDÈS『ZO’HAR―ROMAN CONTEMPORAIN』(G.CHARPENTIER 1886年) 文学史や評論などで、よく名前を目にするカチュール・マンデスを読んでみました。4年ほど前に、神田の田村書店で購入したもの。そう言えばコロナのせいで、神田にもずっと行けてません…

NOËL DEVAULX『LA DAME DE MURCIE』(ノエル・ドゥヴォー『ムルシアの貴婦人』)

NOËL DEVAULX『LA DAME DE MURCIE』(GALLIMARD 1987年) 私の愛でるフランス幻想小説の一群のなかに、また新たな作家がつけ加わりました。前回、マルセル・ブリヨンの記事でも触れた『現代フランス幻想小説』というアンソロジーで、表題作「ムルシアの貴婦…

marcel brion『l’ombre d’un arbre mort』(マルセル・ブリヨン『枯木の木蔭』)

marcel brion『l’ombre d’un arbre mort』(albin michel 1970年) ブリヨンの比較的後期の長編小説。これでウィキペディアに載っている小説19篇のうち、残すのは初期の『Un enfant de la terre et du ciel(地と空の子)』と没後編まれたらしき『Ivre d’un …

Maurice Pons『Le passager de la nuit』(モーリス・ポンス『夜の同乗者』)

Maurice Pons『Le passager de la nuit』(Points 2017年) 引き続き、モーリス・ポンスを読みました。1959年に書かれた初期の作品です。前回読んだ『La passion de Sébastien N.』(1968年)に比べて、こちらは一転してまっとうな小説。共通点は、車が主人…

Maurice Pons『La passion de Sébastien N.―Une histoire d’amour』(モーリス・ポンス『セバスチャン・Nの情熱―愛の物語』)

Maurice Pons『La passion de Sébastien N.―Une histoire d’amour』(Denoël 1968年) 久しぶりにモーリス・ポンスを読みます。ポンスを読むのは、これでたぶん翻訳1冊を含めて11冊目になります(このページの検索欄で「Maurice Pons」で検索してみてくださ…