2013-01-01から1年間の記事一覧

:聖ブランダン航海譚

藤代幸一訳著『聖ブランダン航海譚―中世のベストセラーを読む』(法政大学出版局 1999年) 池上俊一が『狼男伝説』の「彼岸への旅」でケルトのイムラヴァ文学として取り上げていたのを見て、手元にあったのを思い出して引っ張り出して読んでみました。ここし…

:池上俊一『狼男伝説』

池上俊一『狼男伝説』(朝日選書 1992年) エルクマン・シャトリアンの狼憑き小説を読んだ流れと、併せて中世への興味から読んでみました。「狼男伝説」というタイトルはあまりよくありません。というのは、狼男について書かれている部分はこの本の五分の一…

:ネットで見つけた格安本

大手ネット書籍のAは古本も扱っていますが、この部門で新本に近い状態のものが、なぜかきわめて安く出ていることがあります。ここしばらく著者名などで検索をかけていたら、下記の三冊を購入できました。いずれも超美本で定価も高い割には安い。今回は特別…

:海野弘『装飾空間論』

海野弘『装飾空間論―かたちの始源への旅』(美術出版社 1973年) 『「装飾」の美術文明史』に続いて、世界の文様に関する本。私の持っている本は、どこかの古本屋で大昔買ったものですが、面白いことに裏見返しに、「訂正原本」と書かれていて、どうやら第二…

:Erckmann-Chatrian『L’œil invisible―Contes fantastique TomeⅡ』(エルクマン=シャトリアン『見えない眼―幻想物語集Ⅱ』)

Erckmann-Chatrian『L’œil invisible―Contes fantastique TomeⅡ』(L’ARBRE VENGEUR 2008年) エルクマン=シャトリアンの名前はずっと昔から聞いていましたが、作品はあまり訳されていないようです。調べてみると、この本のなかの「見えない眼」「人殺しの…

:オークションを中心に

オークションを続けていると不思議なことも起こるものです。以前、オークションで競り負けたとき、入札した人が返事が遅かったために、二着の私に回って来たことを書きましたが、今度は、私の競り負けた本がもう一冊出てきたと出品者から連絡があり(本当かし…

:鶴岡真弓『「装飾」の美術文明史』

鶴岡真弓『「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト・イスラームから日本へ』(NHK出版 2004年) 渦巻文様や組紐文様、グロテスク文様、アラベスクなど文様の世界史を展望した書。「装飾」と「美術」の関係や、ゴシックやロココ、ラファエル前派、アール…

:畑耕一の二冊

/// 畑耕一『戯塲壁談義』(奎運社 1924年) 畑耕一『愚人の祭壇―変質文斈者として』(大學書房 1927年) 前回に引き続き畑耕一を読みました。この二冊はまだ若い頃の出版で、大正から昭和にかけての古い本。これまでは本は読めればよいと、汚れはあまり気に…

:畑耕一『ラクダのコブ』『微笑の園』

函中 畑耕一『ラクダのコブ』(大阪屋號書店 1926年) 畑耕一『微笑の園』(天佑書房 1942年) この前ヤフーオークションで畑耕一の『怪異草紙』を入札し、5000円までせり上がった時、そういえば畑耕一は持ってはいるが、怪異文学を語った二三編以外これまで…

:たにまち月いち古書即売会不発

先週末、大阪古書会館の古本市最終日に行ってまいりました。最終日のせいか、それともこちらの体調が悪かったせいか、めぼしいものがなく、おまけにK文庫の店員らしきのが3名ほど、客たちがいる中で大声をあげながら書棚の整理をはじめ、書棚から本をどんど…

:JEAN LOUIS BOUQUET『L’ombre du vampire』(ジャン=ルイ・ブーケ『吸血鬼の影』)

JEAN LOUIS BOUQUET『L’ombre du vampire』(marabout 1978年) 前回読んだ『LE VISAGE DE FEU(炎の顔)』(2011年5月24日記事参照http://d.hatena.ne.jp/ikoma-san-jin/20110524/1306196623)に比べて、一般向け(子ども向けか?)に面白おかしく書かれて…

:エミール・マール『ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで』

エミール・マール柳宗玄・荒木成子訳『ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで』(岩波文庫 1996年) 岩波文庫の上下二冊本。これはエミール・マールが自身の四冊に及ぶ大部の著作を自ら一冊にまとめたものです。エミール・マールは、これまで読ん…

:中世美術の本続く。馬杉宗夫『大聖堂のコスモロジー』

馬杉宗夫『大聖堂のコスモロジー―中世の聖なる空間を読む』(講談社現代新書 1992年) この本を読み出して間もなく、これを先に読むべきだったと思いました。まったくの門外漢を相手にして、ゼロから教会建築のことを教えてくれる本です。要領よくまとめられ…

:南西フランスで見た奇怪な図像

10月末にフランス南西部へ行った時に出会った奇怪な図像をご紹介します。もともと中世ロマネスク彫刻を見がてらボルドーでワインを飲もうという魂胆の旅行なので、教会彫刻が中心です。 トゥールーズでは、あちこちの本で紹介されていたサン・セルナン教会に…

:ベルリオーズ「幻想交響曲」オルガン版を聴く、ほか

先月末に、フランス南西部を旅してまいりましたが、トゥールーズでオルガン音楽祭に出くわし、プログラムの一つにベルリオーズ「幻想交響曲」オルガン版という珍しいのがあったので、聴いてきました。場所はダルバード教会というところ。 プログラムによると…

:百万遍智恩寺の「秋の古本まつり」

一昨日は、百万遍の恒例「秋の古本まつり」に行ってまいりました。昔のことはよく覚えていませんが、第一回からずっと(関西を離れていた時以外は)参加し続けてきました、と思います。今年はNEXUS7に不完全だが購入書リストを取り込んで行ったので、怪しい…

:フランス中世の本、小佐井伸二『中世が見た夢』

小佐井伸二『中世が見た夢―ロマネスク芸術頌』(筑摩書房 1988年) 引き続いてフランス中世の本。この本は美術の本というより、中世への憧れに満ちた手記といった印象です。著者が「幸い、ぼくは美術史家ではないから(p83)」と自ら書いているように、美術は…

:フランス中世美術の本続く、吉川逸治『ロマネスク美術を索めて』

吉川逸治『ロマネスク美術を索めて』(美術出版社 1979年) 黒江光彦の『フランス中世美術の旅』に触発されて、しばらくフランス中世美術に関する本を続けて読もうと思います。吉川逸治氏は黒江さんの大学時代の先生。『フランス中世美術の旅』にもしばしば…

:四天王寺秋の大古本祭りと天神さんの古本まつり

昨日は、四天王寺秋の大古本祭りと天神さんの古本まつりの二つの古本市に行ってまいりました。両方ともそろって初日というのは初めてではないでしょうか。かなりハードな一日となってしまいました。おまけに天気予報は雨マークが出ていたので、帽子もかぶら…

:THOMAS OWEN『PITIÉ POUR LES OMBRES et autres contes fantastiques』(トマス・オーウェン『幽霊への哀れみ―幻想短編集』)

THOMAS OWEN『PITIÉ POUR LES OMBRES et autres contes fantastiques』(MARABOUT 1973年) 引き続きMaraboutの「幻想小説叢書」を読んでいます。THOMAS OWENは『Cérémonial nocturne(夜の儀式)』(2010年9月2日記事参照http://d.hatena.ne.jp/ikoma-san-jin…

:黒江光彦『フランス中世美術の旅』

黒江光彦『フランス中世美術の旅』(新潮選書 1982年) 少し趣きを変えて、フランス中世に飛んでみました。タイトルに「旅」とあるように一種の旅行記ですが、中世の教会建築の美術的側面を分かりやすく解説してくれています。こういう本をソファで音楽を聴…

:柳宗悦の工藝に関する本二冊

/// 柳宗悦『工藝』(創元社 1941年) 柳宗悦『私の念願』(不二書房 1942年) 『民藝四十年』に引き続いて、柳宗悦の工藝に関する本二冊を読んでみました。両方とも同じ頃の出版ですが、『工藝』が比較的戦時色の強くなった昭和15年以降のものが中心なのに…

:オークションはほどほどに

このところオークションで私の好みのジャンルの本が大量に安く出ていたので、入札を繰返し半分程度落札できました。なかでは、珍しいところで。 「海 41」(海の会、77年11月、500円) 薄っぺらい雑誌ですが、鶴岡義久の鈴木漠論「〈風景論〉を読んで―わが漠論…

:GÉRARD PRÉVOT『CELUI QUI VENAIT DE PARTOUT et autres contes fantastiques』(ジェラール・プレヴォ『いたるところから現れたもの―幻想短編集』)

GÉRARD PRÉVOT『CELUI QUI VENAIT DE PARTOUT et autres contes fantastiques』(MARABOUT 1973年) ジェラール・プレヴォは二年前にも、『LE DÉMON DE FÉVRIER ET AUTRES CONTES FANTASTIQUES (2月の悪魔―幻想短編集)』を読んだことがあります。(2011年6月…

:松本民芸館に触発されて

先日、信州松本に古本ツアーに行った折り(9月11日記事参照http://d.hatena.ne.jp/ikoma-san-jin/20130911)、「松本民芸館」の展示品の素晴らしさに感激し、蒐集を行なった丸山太郎氏の書いたものを土産として買いました。両冊とも館内に展示もされていて、…

:文豪怪談傑作選二冊

/// 東雅夫編『文豪怪談傑作選 川端康成集 片腕』(ちくま文庫2006年) 東雅夫編『文豪怪談傑作選 芥川龍之介集 妖婆』(ちくま文庫 2010年) 二人の作家の怪奇的趣向のある作品を読み比べてみました。芥川のほうが7年早く生まれています。二人の怪異への傾…

:松本古本ツアー決行

昨年、金沢古本ツアーに行った東京の友人とふたたび松本の古本屋をまわりました。松本は落ち着いた大人の雰囲気の町で、とても気に入りました。洒落た看板のかかっているお店が目につき、飲み屋もオーセンティックなバーが多くありました。少し中心から離れ…

:文学における「向う側」

国文学研究資料館編『文学における「向う側」』(明治書院 1985年) 二年ほど前、古本屋で買った本。不思議なタイトルだったので、なにかなと思って手に取ってみると、平川祐弘、芳賀徹両氏が、それぞれ桃源郷について書いていたので購入したもの。 国文学研…

:GEORGES-OLIVIER CHÂTEAUREYNAUD『LE KIOSQUE ET LE TILLEUL』(ジョルジュ=オリヴィエ・シャトレイノー『東屋と菩提樹』)

GEORGES-OLIVIER CHÂTEAUREYNAUD『LE KIOSQUE ET LE TILLEUL』(BABEL 1997年) 昨年のパリでの購入本。はじめて読む作家です。この人の名も、マルセル・シュネデールの『フランス幻想文学史』で知りました。「今日の幻想」という現代作家を紹介した最後の章…

:マルセル・ベアリュの訳本二冊

/// マルセル・ベアリュ高野優訳『奇想遍歴』(パロル舎 1998年) マルセル・ベアリュ高野優訳『夜の体験』(パロル舎 1998年) 先日読んだベアリュの『Journal d’un mort(死者の日記)』があまりに面白かったので、先月入手した『奇想遍歴』を読み、その勢…