2024-01-01から1年間の記事一覧

志村ふくみ『一色一生』

志村ふくみ『一色一生』(講談社文芸文庫 1999年) 志村ふくみについては、以前、宇佐見英治との対談『一茎有情』を読んで面白かったので、少しずつ買いためていましたが、そのうちの一冊。先日読んだ若松英輔の本にも名前が出てきていたので、また読むこと…

若松英輔/小友聡『すべてには時がある』

若松英輔/小友聡『すべてには時がある―旧約聖書「コヘレトの言葉」をめぐる対話』(NHK出版 2022年) 旧約聖書のなかの昔「伝道の書」と言われていた「コヘレトの言葉」について、このところ読んでいる若松英輔と、神学の専門家で牧師でもある小友聡のテレビ…

若松英輔『神秘の夜の旅』

若松英輔『神秘の夜の旅』(トランスビュー 2011年) タイトルに惹かれて買いましたが、内容は、越知保夫という50歳で亡くなった文芸批評家についての評論。若松英輔が書いた二冊目の本です(一冊目は、井筒俊彦について書いた本)。前回読んだ二冊に比べる…

若松英輔の二冊

若松英輔『悲しみの秘義』(文春文庫 2023年) 若松英輔『生きる哲学』(文春新書 2016年) 堀江敏幸の後は若松英輔を少し読んでみます。この二人は、文章の風合いも書いている内容も異なりますが、私のなかではなぜか同じグループのように感じています。二…

堀江敏幸『回送電車』ほか

堀江敏幸『回送電車』(中公文庫 2008年) 堀江敏幸『一階でも二階でもない夜―回送電車Ⅱ』(中公文庫 2009年) 堀江敏幸は、この「回送電車」をシリーズ化していて、現在Ⅵまで出版されているようです。『回送電車』の冒頭に、「回送電車主義宣言」というのが…

堀江敏幸の二冊

堀江敏幸『正弦曲線』(中央公論新社 2010年) 堀江敏幸『その姿の消し方―Pour saluer André Louchet: à la recherche d’un poète inconnu』(新潮社 2017年) 清水茂や伊藤海彦、矢内原伊作と、最近フランス系エッセイを読んできたので、その流れで読んでみ…

Émile Verhaeren『Le Travailleur étrange』(エミール・ヴェルハーレン『奇妙な仕事師』)

Émile Verhaeren『Le Travailleur étrange』(Ombres 2013年) この本は、8年前ぐらいにジベール・ジョゼフでたまたま目にした「PETITE BIBLIOTHÈQUE OMBRES(影叢書)」の一冊で、この叢書には、以前読んだPaul Févalの『Le Chevalier Ténèbre(暗黒騎士)…

伊藤海彦『旋律と風景』

伊藤海彦『旋律と風景』(国文社 1982年) 伊藤海彦の音楽エッセイ。33の楽曲について、その旋律と分かちがたく繋がっている思い出の風景を綴ったもので、クラシック曲もあれば、タンゴ、シャンソンもあり、東京音頭や尺八曲、大薩摩節という三味線音楽まで…

伊藤海彦の二冊

伊藤海彦『季節の濃淡』(国文社 1982年) 伊藤海彦『渚の消息』(湯川書房 1988年) 久しぶりに伊藤海彦を読んでみました。このブログを始める前、2006年頃に、『きれぎれの空』と編著『詩人の肖像』を読んでいますが、自然の風物を織り込んだ詩人らしい抒…

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(フレデリック・トリスタン『灰と雷』)

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(BALLAND 1982年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで5冊目だと思います。ネットで見ると、トリスタンの作風には、中国もの、幻想驚異もの、偽史もの、迷宮ものの4種あるとしています。なぜ中国もの…

清水茂『詩とミスティック』

清水茂『詩とミスティック』(小沢書店 1996年) 今年に入って、清水茂を、『詩と呼ばれる希望』、『遠いひびき』、『翳のなかの仄明り』と読んできた続きで取り上げてみました。小沢書店らしい瀟洒な造りの本です。内容は、大きく、詩とミスティックをめぐ…

今年は2ヶ月でまだ7冊

今年初めての古本報告です。今年に入って、特別な古本市もなく、わざわざ古書店に行くにも気乗りがせず、興味のある本を細々とネットで注文するのに留まりました。さすがにこれ以上買ってどうする?という声も内から聞こえてきて、この調子で古本買いもその…

博学系評論二冊

篠田一士『三田の詩人たち』(講談社文芸文庫 2006年) 松浦寿輝『黄昏客思(こうこんかくし)』(文藝春秋 2015年) この二冊も、たまたま続けて読んだというだけで、そんなに共通点はありません。強いて言えば、二人とも大学の文学の先生で、文学芸術全般…

森於菟と上林暁の随筆集

森於菟(池内紀解説)『耄碌寸前』(みすず書房 2011年) 上林暁/山本善行編『文と本と旅と―上林暁精選随筆集』(中公文庫 2022年) この二人は、森於菟が1890年生まれ、上林暁が1902年で、年も少し離れていますし、仕事の畑もまったく違って、何の関係もあ…

André Dhôtel『La nouvelle chronique fabuleuse』(アンドレ・ドーテル『新・架空噺』)

André Dhôtel『La nouvelle chronique fabuleuse』(Pierre Horay 1984年) 2年前読んだ『Les voyages fantastiques de JULIEN GRAINEBIS』(2022年1月15日記事参照)が面白かったので、手に取ってみました。期待どおり、不思議な冒険譚の数々が収められてい…

中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』

中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』(新潮文庫 2008年) 入院することがあり、ベッドで寝転がっても読める文庫本を持って行ったので、しばらく文庫本が続きます。日本の古語に疎いので、この本を読んでみたところ、新しく知り得たことが沢山ありました…

清水茂の二冊

清水茂『遠いひびき』(舷燈社 2015年) 清水茂『翳のなかの仄明り―詩についての断想』(青樹社 2004年) 先日読んだ『詩と呼ばれる希望』に続いて、清水茂を読んでみました。『遠いひびき』は、11章のそれぞれが独立したテーマをもった随想集、『翳のなかの…

J.-H.ROSNY AINÉ『LA FEMME DISPARUE』(J=H・ロニー兄『消えた女』)

J.-H.ROSNY AINÉ『LA FEMME DISPARUE』(COSMOPOLITES 1925年?) 幻想小説アンソロジーでよく掲載されているロニー兄の作品です。以前、『L’ÉNIGME DE GIVREUSE(ジヴリューズの謎)』という分身を扱った超自然的小説を読んだことがありますが(2022年11月5…

矢内原伊作『顔について』

矢内原伊作『顔について―矢内原伊作の本 1』(みすず書房 1986年) 前回読んだ清水茂『詩と呼ばれる希望』の解説で、担当編集者が、矢内原伊作と清水茂がともに雑誌「同時代」の同人であり、深い交友があったことについて触れていたこともあり、架蔵してい…

清水茂『詩と呼ばれる希望』

清水茂『詩と呼ばれる希望―ルヴェルディ、ボヌフォワ等をめぐって』(コールサック社 2014年) フランスを舞台にしたエッセーを読んでいたら、なぜか清水茂を読みたくなりました。この本は、清水茂のフランス滞在を題材にした初期エッセイとは違って、副題に…

EDMOND JALOUX『LA FIN D’UN BEAU JOUR』(エドモン・ジャルー『好日の終わり』)

EDMOND JALOUX『LA FIN D’UN BEAU JOUR』(ARTHÈME FAYARD 1930年) エドモン・ジャルーを読むのは初めて。廣瀬哲士の『新フランス文学』で、アンリ・ド・レニエの弟子筋と紹介されていたので、読んでみました。「LE LIVRE DE DEMAIN」という叢書の一冊で、…

フランスを舞台にしたエッセー二冊

赤瀬雅子『フランス随想―比較文化的エセー』(秀英書房 2007年) 西出真一郎『木苺の村―フランス文学迷子散歩』(作品社 2010年) フランスへ行くにも、まだロシアの上を飛べないので時間はかかるし、航空料金も高くなってるし、おまけに円安でホテル代も高…

翻訳に関する本二冊

芳賀徹編『翻訳と日本文化』(山川出版社 2000年) 鴻巣友季子『明治大正 翻訳ワンダーランド』(新潮新書 2005年) これまで読んできたのよりは、出版年の新しい本です。これまでとは違った新たな視点があるのが特徴。『翻訳と日本文化』では、書籍にとどま…