2020-01-01から1年間の記事一覧

阪神百貨店古書ノ市ほか

年末の阪神古書ノ市には、例年、忘年会と併せて古本仲間が集まることになっていますが、今年は3名とだんだん少なくなってきました。今回は、コロナで自粛が呼びかけられていたこともあり、4時からの時差開催による茶話会程度のものを予定していましたが、結…

CLAUDE FARRÈRE『L’Homme qui assassina』(クロード・ファレール『殺した男』)

CLAUDE FARRÈRE『L’Homme qui assassina』(PAUL OLLENDORFF 1915年?) クロード・ファレールの本はこれまで5冊読んでいて、今回読むのは5年ぶり。文章がとても分かりやすいので気に入っています。難しい単語も、ときどきトルコ語らしき意味不明の語が出て…

中村禎里『回転する円のヒストリア』

中村禎里『回転する円のヒストリア』(朝日新聞社 1979年) 中村禎里という著者についてはまったく知りませんでしたが、理系と文系が融合したような随筆で、面白く読めました。「数理科学」という雑誌に連載されたものを中心にまとめています。理学部ご出身…

M・ルルカー『象徴としての円』

マンフレート・ルルカー竹内章訳『象徴としての円―人類の思想・宗教・芸術における表現』(法政大学出版局 1991年) 「十字」と「渦巻」の次は「円」についての本です。円による文様は装飾のもっとも古いモチーフのひとつであり、また古来より、円はさまざま…

パスカル・キニャールの二冊

パスカル・キニャール高橋啓訳『めぐり逢う朝』(早川書房 1992年) パスカル・キニャール吉田加南子訳『音楽のレッスン』(河出書房新社 1993年) キニャールの作品は、ずいぶん昔に、端正で詩的な文章が目にとまって、『辺境の館』というのを読んだことが…

大和岩雄『十字架と渦巻』

大和岩雄『十字架と渦巻―象徴としての生と死』(白水社 1995年) 10年近く前に、螺旋や渦巻についての本を何冊か読み、このブログでも感想を書きましたが、その続きで、形についての本を何冊か読んでいきたいと思います。まず、面白そうなタイトルのこの本か…

HUBERT HADDAD『Un rêve de glace』(ユベール・アダッド『氷の夢』)

HUBERT HADDAD『Un rêve de glace』(ZULMA 2006年) 前回読んだ『Géographie des nuages(雲の地誌)』が出色の出来ばえだったので、勢いこんで読みましたが、若干期待外れ。アダッドの小説の処女作のようです。そのせいか文章が凝っていて、単語も聞きなれ…

アルベール・カミュ『ペスト』

アルベール・カミュ宮崎嶺雄訳『ペスト』(新潮文庫 2020年) 奈良日仏協会の催しで、「カミュ『ペスト』を読む」という講演会があったので、原作を読んでおこうと手にしました。最近のコロナ騒ぎに見られる社会現象を考えるうえで参考になるかなという関心…

中平解の回顧随筆二冊

中平解『霧の彼方の人々』(清水弘文堂 1991年) 中平解『冬の没(い)りつ日』(清水弘文堂 1993年) 前回読んだ『フランス語學新考』の戦前の文章と比べると書き方がずいぶんやさしくなっています。中平解が晩年に人生を振り返って、主に人との交流の思い…

中平解『フランス語學新考』

中平解『フランス語學新考 改訂版』(三省堂 1943年) 著者が1935年に最初に書いた本の改訂版。この後、もう一度改訂しているようです。初歩の文法では些末なこととしてあまり説明されないが、実際の読書ではひっかかるような27の表現を取りあげて、本国の文…

中平解のフランス動植物随筆二冊

中平解『風流鳥譚―言語学者とヒバリ、その他』(未来社 1983年) 中平解『鰻のなかのフランス』(青土社 1983年) この二冊は、中平解のなかでは、『郭公のパン』と並んで、かなりまともな随筆の部類ではないでしょうか。『語源漫筆』や『フランス語博物誌』…

百万遍の「秋の古本まつり」ほか

百万遍の「秋の古本まつり」初日へ行ってきました。京都の大型古本市が1年ぶりに再開したということでしたが、今年は古本仲間も集まらず、一人寂しく会場をさまよいました。 古本市に行く途中にある臨川書店に、開店前に到着しましたが、今回はフランス語の…

中平解『フランス文学にあらわれた動植物の研究』

中平解『フランス文学にあらわれた動植物の研究』(白水社 1981年) フランスの小説からの原文の引用が大半を占め、550ページもあるうえに細かい字で印刷された大部の書。いつもフランス書を読む時間枠を使って何とか読み終えました。引用している文章は比較…

Hubert Haddad『Géographie des nuages』(ユベール・アダッド『雲の地誌』)

Hubert Haddad『Géographie des nuages』(Paulsen 2016年) Hubert Haddadを読むのは、『Le Secret de l’immortalité(不死の秘密)』(2014年7月23日記事参照)、『Le peintre d’éventail(扇絵師)』(2017年2月12日記事)に次いで、これで三冊目です。著…

中平解のフランス語語源解説4冊

中平解『フランス語語源漫筆』(大学書林 1958年) 中平解『フランス語語源漫筆(2)』(大学書林 1961年) 中平解『フランス語博物誌〈植物篇〉』(八坂書房 1988年) 中平解『フランス語博物誌〈動物篇〉』(八坂書房 1988年) 中平解の語源随筆の続きです…

四天王寺秋の大古本祭り報告ほか

報告が遅くなりましたが、10月初旬、四天王寺秋の大古本祭りの二日目に行ってまいりました。コロナでたびたび中止となり、1年ぶりの開催とのことでした。本格的な古本市は久しぶりだったせいか、はじめの1時間は何も買わずにうろうろするだけでしたが、1冊買…

何かの気配を感じさせる音楽 その⑤

フランス篇の第2弾。今回も分量が多くなりそうなので、核心部分だけで他は端折ります。まず前回の続き。ショーソンの管弦楽作品のCDが届きました。 ショーソン『交響曲/交響詩「祭りの夕べ」/交響詩「ヴィヴィアンヌ」』(ERATO WPCS-28027) ミシェル・プラ…

中平解の語学随筆二冊

中平解『言葉―風土と思考』(芳文堂 1943年) 中平解『郭公のパン―ことばの随筆』(大修館書店 1955年) 先日読んだ『日本の名随筆 香』のなかの中平解「フランス文学と花」を読んで、フランスの小説がたくさん引用されていたのに驚いたので、しばらく中平解…

Jean Lorrain『Le Poison de la Riviera』(ジャン・ロラン『リヴィエラの毒』)

Jean Lorrain『Le Poison de la Riviera』(LA TABLE RONDE 1992年) 今はなき天牛書店堺筋本町店で買った古本。ロラン最後の作品のようですが、序文で、ティボー・ダントネが衝撃的な事実を暴いています。それはロラン研究の第一人者として、伝記も書き、死…

ジャン・ロラン『ポルトレ集』ほか

今月は古本買いを若干抑え気味にしました。なかでは、オークションで買った下記が値段は高いが、珍しいもの。 JEAN LORRAIN『Portraits Littéraires et Mondaines』(BAUDINIÈRE、1926年11月、4142円)→人物の紹介をするポルトレで、レニエ、ドールヴィイ、…

朱 捷『においとひびき』

朱 捷『においとひびき―日本と中国の美意識をたずねて』(白水社 2001年) 引き続き香りについての本。今回は、中国人で日本在住の研究者が、日本の匂いと中国の響きに関する感じ方考え方の比較を行ったものです。来日して、「におい」に関する微妙な使い方…

北原白秋晩年の二冊

北原白秋「香ひの狩猟者」(『白秋全集23』〔岩波書店 1986年〕所収) 北原白秋『薄明消息』(アルス 1946年) 先日読んだ塚本邦雄編『香―日本の名随筆48』に収められていた白秋の文章がすばらしかったので、「香ひの狩猟者」を読み、さらに同時期に書かれた…

何かの気配を感じさせる音楽 その④

「何かの気配を感じさせる音楽」は、しばらく間が空いてしまいましたが、フランス篇を書こうとして、持っていなかったCDなどを買って聞いたりしている間に時間が過ぎてしまいました。まだほかにも聞けてない曲もありますが、切りがないので。また新しい発見…

塚本邦雄絡み、香りの本二冊

塚本邦雄『芳香領へ―香気への扉』(ポーラ文化研究所 1983年) 塚本邦雄編『香―日本の名随筆48』(作品社 1988年) 塚本邦雄が香りについて書いた本と、塚本邦雄が香りに関する随筆を編集した本の二冊です。『芳香領へ』は、芳香の花、悪臭の花、香辛料とな…

JEAN LORRAIN『HÉLIE―GARÇON D’HOTEL』(ジャン・ロラン『エリ―ホテルの雇人』)

JEAN LORRAIN『HÉLIE―GARÇON D’HOTEL』(PAUL OLLENDORFF 1914年?) この作品も、前回読んだ『MADAME MONPALOU(モンパルー夫人)』と同様、避暑地、温泉地の物語。最晩年の作品のようで、「Très russe(超ロシア的)」(1886年、後に「Villa Mauresque(ム…

暇にまかせて次々に購入

相変わらず、コロナが収まりそうにありません。外出することも少なくなっていますが、今月初め一回だけ、小学校時代の仲間に誘われて神戸の港湾開発地をサイクリングしました。18歳まで神戸で育ちましたが、三宮の海側に広大な別世界ができているのにびっく…

コンスタンス・クラッセンほか『アローマ―匂いの文化史』

コンスタンス・クラッセン、デイヴィッド・ハウズ、アンソニー・シノット時田正博訳『アローマ―匂いの文化史』(筑摩書房 1997年) 香りについてこれまで読んできたなかでは、好事家的な興味だけでなく、幅広い視野を持ち、人間生活との関係を歴史的社会的に…

香りについての二冊

山田憲太郎『香談―東と西』(法政大学出版局 1981年) 諸江辰男『香りの歳時記』(東洋経済新報社 1985年) 山田憲太郎は小川香料、諸江辰男は高砂香料と、ともに香料会社に勤務していた方で、山田憲太郎は22年勤務の後に大学での研究の道に進み、諸江辰男は…

JEAN LORRAIN『MADAME MONPALOU』(ジャン・ロラン『モンパルー夫人』)

JEAN LORRAIN『MADAME MONPALOU―HEURES DE VILLES D’EAUX(温泉地でのできごと)』(ALBIN MICHEL 1928年) 中編小説「MADAME MONPALOU」、ルポルタージュ風短編6篇の「QUELQUES SOURCES, QUELQUES PLAGES(温泉、海水浴場)」、連作短編6篇の「L’ÉTÉ DANS L…

村山貞也『人はなぜ匂いにこだわるか』

村山貞也『人はなぜ匂いにこだわるか―知らなかった匂いの不思議』(KKベストセラーズ 1989年) 読み始めて、前回読んだ『匂い遊びの博物誌』に比べると、緻密で科学的な書きぶりだと思いましたが、それは最初の部分だけで、あとはきわめて文学的、事例の羅列…