2020-01-01から1年間の記事一覧

高藤由明『匂い遊びの博物誌』

高藤由明『匂い遊びの博物誌』(現代出版 1986年) しばらく香りについての本を読みます。これはボードレールの詩に南洋の果実や香料の単語がたくさん出てきたので興味が湧いたからです。最初は読みやすそうな本からと思い、「メディアジャーナリスト」と紹…

川島昭夫の二冊

川島昭夫『植物園の世紀―イギリス帝国の植物政策』(共和国 2020年) 川島昭夫『植物と市民の文化』(山川出版社 1999年) ともに私の古本の師であり友人であった川島昭夫さんの本。『植物園の世紀』は遺著ですが、収められた論稿を実際に執筆した時期は1989…

二つの古本市をはしご、浜松の古本屋など

買った古本の話の前に、古本の師でもあった友人が今年2月に亡くなり、その形見分けとしていただいた本を紹介します(2月11日記事参照)。 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』(新潮社、昭和10年5月、―)→松野一夫装幀 そのときも書きましたが、この本は大学時代に…

山田兼士とヒドルストンのボードレール論

山田兼士『ボードレールの詩学』(砂子屋書房 2005年) J・A・ヒドルストン山田兼士訳『ボードレールと「パリの憂愁」』(沖積舎 1991年) これで、ボードレールについて書かれた単行本で私の所持しているものは最後です。今年1月から半年間ずっとボードレー…

J.M.A.Paroutaud(パルト)の作品

J.M.A.Paroutaud『PARPAILLOTE et autres contes cruels(パルパイヨット―ほか残酷譚集)』(on verra bien 2020年) J.M.A.Paroutaud「Petit traité de ma médecine(療法小概論)」(『LE PAYS DES EAUX(水の国)』on verra bien 2018年、所収) この二冊…

ベンヤミン『ボードレール』

ヴァルター・ベンヤミン川村二郎/野村修/円子修平訳『ボードレール』(晶文社 1975年) そろそろボードレール関係の本を読むのにも疲れてきました。頭が朦朧としてきたのか、意味がつかめない文章がたくさんありました。とくに「セントラル・パーク」の箴言…

何かの気配を感じさせる音楽 その③

気配を感じさせる音楽がないかと、『ロシア音楽の祭典』のCDに入っていた作曲家を追ってきましたが、これまで取り上げた以外のロシアの作曲家では、ムソルグスキーに濃厚に現われているようです。私の知っているのは「展覧会の絵」と「禿山の一夜」ぐらいで…

久しぶりに古本市へ行く

先週末、県域を跨ぐ移動が解禁されたこともあり、久しぶりに大阪へ出ました。前にも書いたかもわかりませんが、長年続けている近鉄沿線を一駅ずつ降りて飲み歩く「近鉄沿線友の会」で(と言っても二人だけです)、尼崎センタープール前での飲み会があったか…

多田道太郎編『ボードレール 詩の冥府』

多田道太郎編『ボードレール 詩の冥府』(筑摩書房 1988年) 前回読んだ杉本秀太郎の論文を含め、9名のボードレール論が収められています。多田道太郎による「あとがき」によると、当初、多田と杉本それに途中で亡くなった大槻鉄男の三人でボードレールを読…

山村嘉己と杉本秀太郎のボードレール論

山村嘉己『遊歩道のボードレール』(玄文社 1986年) 杉本秀太郎「ボードレール」(『杉本秀太郎文粋1エロスの図柄―ボードレール/ピサネロまたは装飾論』所収)(筑摩書房 1996年) 二人の文章の印象がまるで違っているのは、ご本人の性格もあるでしょうが…

出口裕弘『ボードレール』と矢野峰人の「ボードレール」

出口裕弘『ボードレール』(紀伊國屋書店 1969年) 矢野峰人「ボードレール」(『欧米作家と日本近代文学 フランス篇』所収)(教育出版センター 1974年) 出口裕弘の『ボードレール』は読みだしてすぐ、以前読んでこのブログでも取り上げたことに気づきまし…

CLAUDE SEIGNOLLE『INVITATION AU CHÂTEAU DE L’ÉTRANGE』(クロード・セニョール『不思議の館への招待』)

外観 中扉 CLAUDE SEIGNOLLE『INVITATION AU CHÂTEAU DE L’ÉTRANGE』(WALTER BECKERS 1974年) このブログにコメントを寄せていただいたJann Fastierさんから勧められた本。セニョールが知人らから聞いたり、自らが体験した超自然的な話を集めたものです。…

何かの気配を感じさせる音楽 その②

前回(5月6日記事参照)の続きで、不安を掻き立てるような揺らぐ響きのある音楽について書きます。書いているうちに分量が多くなってしまったので、今回はロシアの作曲家のなかでも、リムスキー・コルサコフだけにします。リムスキー・コルサコフのCDは何故…

関川左木夫『ボオドレエル・暮鳥・朔太郎の詩法系列』

関川左木夫『ボオドレエル・暮鳥・朔太郎の詩法系列―「囈語」による《月に吠える》詩体の解明』(昭和出版 1982年) 関川左木夫については、このブログで一度、書物趣味と、ビアズレーの日本への影響に関する二冊の本を取り上げています(2015年5月27日記事…

暇にまかせて古本処分

コロナで閉じこめられているうちにと、何年かぶりに本の整理に取り組みました。不思議なもので、結果は毎回段ボール12~3箱に落ち着きます。本棚の上にキノコのように平積みしていた本も減り、少し部屋が明るくなりました。以前も書きましたが、本の処分の際…

佐藤正彰のボードレール関係二冊

佐藤正彰『ボードレール雑話』(筑摩書房 1974年) 佐藤正彰『ボードレール』(筑摩書房 1956年) これまで読んで来たボードレール関連本がどちらかと言えば全体像を概観したものであったのに対し、この二冊は主として研究史的な視点から書かれています。『…

CHARLES BAUDELAIRE『Les fleurs du mal』(シャルル・ボードレール『悪の華』)

CHARLES BAUDELAIRE『Les fleurs du mal』(Jean-Claude Lattès 1987年) この歳になって、ようやく『悪の華』を原文で読みました。翻訳のあるものはフランス語ではなるべく読まないようにしていますが、詩は別格。再版後の各種拾遺詩篇も入れて全166篇、文…

何かの気配を感じさせる音楽 その①

以前、ヴュータンのヴァイオリン協奏曲第4番について書いたときにも触れたことがありましたが(2011年10月29日記事参照)、ロマン派以降の曲で、何かが起りそうな気配を感じさせ、不安を掻き立てるような揺らぐ響きを聞くことがよくあり、それが最近また気に…

齋藤磯雄『ボオドレエル研究』

齋藤磯雄『ボオドレエル研究』(三笠書房 1950年) 自らも『悪の華』を日夏耿之介風のゴシック浪漫詩体で訳している齋藤磯雄のボードレール論を読んでみました。本人のボードレールへの全面的な心酔がいたる所に感じられ、人柄が濃厚に感じられる読み物とな…

辰野隆『ボオドレエル研究序説』

辰野隆『ボオドレエル研究序説』(酣燈社 1951年) 20年前に一度読んだ本。まったく覚えていないので、新鮮な気持ちで読めました。前回読んだ矢野文夫/長谷川玖一『ボオドレエル研究』と比べて、文章が引き締まって理路整然としている印象があります。原詩を…

矢野文夫/長谷川玖一『ボオドレエル研究』

矢野文夫/長谷川玖一『ボオドレエル研究』(叢文閣 1934年) ボードレールについての本を続けて読んでいますが、いよいよ日本人の著作に移ります。時代的に古いと思われるものから。巻末に「ボオドレエル書誌」があり、それを見ると、ボードレールについての…

古本市中止続く

コロナ禍の影響で、その後も続々と古本市が延期や中止になっています。四天王寺、たにまち月いち、阪神百貨店、京都勧業館etc.。麻雀会飲み会も中止になって大阪に出かけることもなくなり、古本屋を覗く機会もなくなりました。もっぱら、ネットで購入してい…

ポーとボードレールについての二冊

パトリック・F・クィン松山明生訳『ポオとボードレール』(北星堂書店 1978年) 島田謹二『ポーとボードレール―比較文學史研究』(イヴニング・スター社 1948年) たしか中学生の頃にポーとボードレールを読んで、ポーについては「盗まれた手紙」とかの推理…

J.-C.MARDRUS『LA REINE DE SABA』(J・C・マルドリュス『シバの女王』)

Dr J.-C.MARDRUS『LA REINE DE SABA』(CHARPENTIER ET FASQUELLE 1926年) 久しぶりに、生田耕作旧蔵書を読みました。マルドリュスは『千一夜物語』のフランス語版翻訳で有名ですが、マラルメのサロンに出入りして、エレディア、R・モンテスキュー、ジッド…

ボードレール論3つ

ピエール・エマニュエル山村嘉己訳『ボードレール』(ヨルダン社 1973年) ピエール・ジャン・ジューヴ道躰章弘訳「ボードレールの墓」(『ボードレールの墓』せりか書房 1976年) フーゴー・フリードリヒ飛鷹節訳「ボードレール」(『近代詩の構造』人文書…

ゲルンスハイムのピアノ五重奏曲とチェロ協奏曲

昨年秋に、ゲルンスハイムのヴァイオリン協奏曲について書きましたが、その後昨年末に、注文していたゲルンスハイム関係のCDが三枚届きました。 『The Piano Quintets』(Oliver Triendl Pf.、Gémeaux Quartett)(cpo777 580-2) 『THE ROMANTIC CELLO CONCERTO…

Marcel Brion『Le château de la princesse Ilse』(マルセル・ブリヨン『イルズ姫の城』)

Marcel Brion『Le château de la princesse Ilse』(Albin Michel 1981年) 久しぶりに、ブリヨンを読みました。文章は前回読んだロチよりは長くなってやや難しくなりましたが、読み進むうちに慣れて、それほど難渋することもなく読めました。ネットで調べて…

フランス文人のボードレール論

ヴァレリー佐藤正彰訳「ボードレールの位置」(『ヴァレリー全集7』筑摩書房 1973年) プルースト鈴木道彦訳「ボードレールについて」(『プルースト文芸評論』筑摩書房 1977年) ジャン=ピエール・リシャール有田忠郎訳「ボードレールの深さ」(『詩と深さ…

コロナウィルス騒動で古本市続々と延期

コロナウィルス騒ぎの余波を受け、OB麻雀会が中止、見に行く予定だったシンポジウムや大相撲が無観客となって、なかなか大阪に出る機会がなくなり、あまり古本屋にも行けなくなってしまった、と嘆いていたら、今度は、サンボーホールのひょうご大古本市が3月…

ドミニック・ランセ『ボードレール』

ドミニック・ランセ鈴木啓司訳『ボードレール―詩の現代性』(白水社 1992年) 文庫クセジュの薄い本ですが、概説書だけあって全般に目を届かせていて、かつ内容はしっかりしてとても充実しておりました。まず簡単に生涯を追い、次いで文学史上でボードレール…