2021-01-01から1年間の記事一覧

GÉRARD PRÉVOT『L’INVITÉE DE LORELEI』(ジェラール・プレヴォ『ローレライからの招待』)

GÉRARD PRÉVOT『L’INVITÉE DE LORELEI』(FLEUVE NOIR 1999年) プレヴォの長篇3つ、短篇23、それに日記断片が収められている総ページ数635の大部の本。このうち短篇の19は『LE SPECTRE LARGE(大きい幽霊)』(2015年11月19日記事)で読んでいたので省略。…

年末報告―たにまち月いち古書即売会ほか

年末に近くなると、なぜか本が買いたくなってきます。歳も考えて辛抱しようとするんですが、なかなか思うようにはいきません。 先週、たにまち月いち古書即売会の初日の日に、たまたま甲子園で呑み会があったので、途中下車して立ち寄りました。下記4冊を購…

フィニイ『時の旅人』

ジャック・フィニイ浅倉久志訳『時の旅人』(角川書店 1996年) 『ふりだしに戻る』の続編ということなので、続けて読みました。この本も文庫にすれば上下二冊になるほどの分量で、読みごたえがありました。続編と言っても、『ふりだしに戻る』から25年もの…

ジャック・フィニイ『ふりだしに戻る』

ジャック・フィニイ福島正実訳『ふりだしに戻る(上)・(下)』(角川文庫 1991年) 時間旅行をテーマにしたフィニイの長編を読んでみました。あとがきで訳者も書いているように、『ゲイルズバーグの春を愛す』などの短篇のテイストがあり、それを目いっぱ…

ジャック・フィニイの二冊

フィニイ福島正実訳『レベル3』(早川書房 1961年) ジャック・フィニイ福島正実訳『ゲイルズバーグの春を愛す』(ハヤカワ文庫 1980年) 幻想都市、迷宮都市、架空の国、地図にない町などの本を読んでいますが、これはSFで扱う時間テーマのテイストにかなり…

『どこにもない国』と『地図にない町』

S・ミルハウザーほか柴田元幸編訳『どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集』(松柏社 2006年) フィリップ・K・ディック仁賀克雄編訳『地図にない町―ディック幻想短篇集』(ハヤカワ文庫 1976年) 「どこにもない」とか「地図にない」とか幻の町がテーマと…

東雅夫編『架空の町』

東雅夫編『架空の町』(国書刊行会 1997年) 国書刊行会の「書物の王国」という幻想小説アンソロジー・シリーズの第1巻目。アジアの架空の村の原点ともいえる陶淵明の桃源郷の小話を皮切りに、前半では、マンデヴィルの『東方旅行記』や千夜一夜物語など、遠…

『幻影都市のトポロジー』と『もうひとつの街』

A・ロブ=グリエ江中直紀訳『幻影都市のトポロジー』(新潮社 1979年) ミハル・アイヴァス阿部賢一訳『もうひとつの街』(河出書房新社 2013年) この二冊に共通するのは、夢のなかの出来事のように、支離滅裂、意味不明、何でもありの、書きたい放題、とも…

BRUNO GAY-LUSSAC『Dialogue avec une ombre』(ブリュノ・ゲー=リュサック『影との対話』)

BRUNO GAY-LUSSAC『Dialogue avec une ombre』(GALLIMARD 1972年) ゲー=リュサックの本はこれで二冊目です。前に読んだ『L’AUTRE VISITE(他者の訪れ)』(2015年10月15日記事参照)と同様、難しい単語も少なく平明なフランス語で、現在形で淡々と語られ…

『方形の円』と『迷宮都市』

ギョルゲ・ササルマン住谷春也訳『方形の円―偽説・都市生成論』(東京創元社 2019年) デヴィッド・ブルックス実川元子訳『迷宮都市』(福武書店 1992年) タイトルに「都市」と名がついて、架空の、幻影の、迷宮の、異次元のといった形容詞のついた、幻想小…

また二つの古本市へ

前回古本報告のあと、またふたつの古本市へ行きました。やや過熱気味。 ひとつは阪神百貨店の秋の阪神古書フェア。昔の職場の関係で芦屋に用事があり、帰りしなに1時間ほど立ち寄ることができました。 矢野書房で、 荒俣宏/松岡正剛『月と幻想科学』(工作舎…

JEAN-PIERRE BOURS『celui qui pourrissait』(ジャン・ピエール・ブール『腐っていった男』)

JEAN-PIERRE BOURS『celui qui pourrissait』(marabout 1977年) 5年ほど前、パリの幻想小説・SF専門古書店「L’amour du NOIR」で大量買いした中の一冊。あまり聞いたことのない作家ですが、1977年のジャン・レイ賞を受賞した人で、本業は弁護士のようです…

カルヴィーノ『マルコ・ポーロの見えない都市』

イタロ・カルヴィーノ米川良夫訳『マルコ・ポーロの見えない都市』(河出書房新社 1983年) これからしばらくは、架空都市、幻想都市、迷宮都市、異次元都市…に関連した小説、評論、詩を読んで行きたいと思います。まず第一弾は、この分野の先陣を切ったカル…

長谷川正海『日本庭園雑考』

長谷川正海『日本庭園雑考―庭と思想』(東洋文化社 1983年) これで庭の本はいったん終わりにします。著者略歴を見れば医学の教授とあり、趣味が高じて庭の研究に打ち込まれたみたいですが、相当熱心に調べていて、庭の研究者としても十分やっていけそうに思…

久しぶりに二つの古本市

コロナもようやく下火となり、古本市も続々と再開されました。その第一弾、昨年秋以来の開催となった四天王寺秋の大古本祭りに、初日に出かけました。真っ先に駆けつけた100円均一はものすごい人だかりの密状態。肩越しに本を見つめるのに疲れて早々に退避し…

庭園に関する本三冊

野田正彰『庭園との対話』(日本放送出版協会 1996年) 円地文子編『日本の名随筆―庭』(作品社 1983年) 高木昌史編訳『庭園の歓び―詞華による西欧庭園文化散策』(三交社 1998年) とにかく庭に関しての本。『庭園との対話』はNHK教育テレビの番組のテキス…

MICHEL DE GHELDERODE『SORTILÈGES et autres contes crépsculaires』(ミシェル・ド・ゲルドロード『魔法―薄明物語集』)

MICHEL DE GHELDERODE『SORTILÈGES et autres contes crépsculaires』(bibliothèque marabout 1962年) 大学時代に買った本。単語の意味を余白に丁寧に書き込んでいて、読もうと努力したあとが見えます。がそれもあえなく数ページで挫折しているのが可愛ら…

日本の庭に関する本二冊

宮元健次『月と日本建築―桂離宮から月を観る』(光文社新書 2003年) 栗田勇/岩宮武二(写真)『石の寺』(淡交社 1965年) 異質な本ですが、同時期に読み、また二冊とも日本の庭に関連しているので並べてみました。かたや、月を軸に日本の建築や庭を論じた…

作家の書いた「日本の庭」二冊

室生犀星『日本の庭』(朝日新聞社 1943年) 立原正秋『日本の庭』(新潮文庫 1983年) 日本の庭についての本。同じ作家で、しかも二人とも寺で育ったという境遇も同じ。しかし印象がまるで違った本になっています。生きていた時代が異なるせいもありますが…

日本の庭についての本二冊

海野弘『都市の庭、森の庭―未知なる庭園への旅』(新潮選書 1983年) 奈良本辰也『京都の庭』(河出新書 1966年) いよいよ日本の庭が中心の本です。この二冊に共通するのは、アットランダムな個々の庭の探訪が主軸になっているところです。正面を切って、庭…

ほそぼそとネットでの購入続く

相変わらずコロナで外出もままならないなか、もっぱらネットで古本を買っております。最近の特徴は、アマゾンや「日本の古本屋」での発注が増えたことでしょうか。ヤフーオークションは、安値で落札ができるかもというオークションならではの楽しみもありま…

MAURICE MAGRE『CONFESSIONS』(モーリス・マグル『告白録』)

MAURICE MAGRE『CONFESSIONS―SUR LES FEMMES, L’AMOUR, L’OPIUM, L’IDÉAL, ETC... (告白録―女性、愛、阿片、理想など)』(BIBLIOTHÈQUE-CHARPENTIER 1930) マグルの晩年(といっても64歳の生涯で53歳のとき)の回想録。25篇からなり、前半は、若き日の作…

西沢文隆『庭園論Ⅰ』

西沢文隆『西沢文隆小論集2 庭園論Ⅰ―人と庭と建築の間』(相模書房 1975年) 庭についての本の続き。西洋から日本の庭の方に移行していきます。この本は、庭と建築の関係を空間の視点から論じているのが特徴で、西洋の空間にも目を配りつつ、日本の庭につい…

何かの気配を感じさせる音楽 その⑦ 

またしばらく音楽から遠ざかっておりました。「何かの気配を感じさせる音楽」のシリーズも、ロシアに始まり、フランス、ドイツと辿ってきて、そろそろネタも尽きてきましたので、今回の拾遺篇でいちおう最後にしたいと考えています。現代の作曲家と、上記以…

『庭園の詩学』

チャールズ・W・ムーア/ウィリアム・J・ミッチェル/ウィリアム・ターンブル・ジュニア有岡孝訳『庭園の詩学』(鹿島出版会 1995年) この本には、これまで読んだ庭園の本とは違うテイストがありました。タイトルどおり、詩的な着眼点がすばらしいこと、広…

岡崎文彬の二冊

岡崎文彬『ヨーロッパの名園』(朝日新聞社 1973年) 岡崎文彬『名園のはなし』(同朋舎出版 1985年) 引き続き岡崎文彬。前回の『ヨーロッパの造園』が概説とすれば、この二冊は、著者のお気に入りの庭園を個別に紹介した本。『名園のはなし』のなかで、「…

CLAUDE SEIGNOLLE『HISTOIRES MALÉFIQUES』(クロード・セニョール『不吉な物語』)

CLAUDE SEIGNOLLE『HISTOIRES MALÉFIQUES』(marabout 1965年) 久しぶりに、クロード・セニョールを読みました。中篇、短篇取りまぜて、14篇収められています。中篇「Le rond des sorciers(呪術師たちの輪舞)」は、フランス語で既読なので今回読まず(201…

ふたつの古本市報告ほか

水曜日、下鴨神社納涼古本祭りの初日に行ってまいりました。今年は、いつもの古本仲間も集まらず、会場で古本魔人のMさんとsacomさんと少し言葉を交わしただけでした。こころなしか出店数も減っているみたいで、1時過ぎまででだいたい見終わった、というより…

岡崎文彬『ヨーロッパの造園』

岡崎文彬『ヨーロッパの造園』(鹿島出版会 1975年) いつの頃からか、塔や聖堂、墓地、桃源郷などとともに、庭園に興味が出て、少しずつ古本を買い集めてきました。岡崎文彬の本が未読のまま3冊ありますので、少しずつ読んでいきます。先日読んだ独文・美学…

鼓常良『西洋の庭園』

鼓常良『西洋の庭園』(創元社 1961年) 針ヶ谷鐘吉、岡崎文彬らと並んで、日本人が西洋庭園のことを書いたかなり初期の書物です。 あとがきで、庭園の写真を集めるのに、ヨーロッパに留学している人の手を煩わせて、わざわざ撮影に行ってもらったり、現地の…