最近読んだ本

志村ふくみ『一色一生』

志村ふくみ『一色一生』(講談社文芸文庫 1999年) 志村ふくみについては、以前、宇佐見英治との対談『一茎有情』を読んで面白かったので、少しずつ買いためていましたが、そのうちの一冊。先日読んだ若松英輔の本にも名前が出てきていたので、また読むこと…

若松英輔/小友聡『すべてには時がある』

若松英輔/小友聡『すべてには時がある―旧約聖書「コヘレトの言葉」をめぐる対話』(NHK出版 2022年) 旧約聖書のなかの昔「伝道の書」と言われていた「コヘレトの言葉」について、このところ読んでいる若松英輔と、神学の専門家で牧師でもある小友聡のテレビ…

若松英輔『神秘の夜の旅』

若松英輔『神秘の夜の旅』(トランスビュー 2011年) タイトルに惹かれて買いましたが、内容は、越知保夫という50歳で亡くなった文芸批評家についての評論。若松英輔が書いた二冊目の本です(一冊目は、井筒俊彦について書いた本)。前回読んだ二冊に比べる…

若松英輔の二冊

若松英輔『悲しみの秘義』(文春文庫 2023年) 若松英輔『生きる哲学』(文春新書 2016年) 堀江敏幸の後は若松英輔を少し読んでみます。この二人は、文章の風合いも書いている内容も異なりますが、私のなかではなぜか同じグループのように感じています。二…

堀江敏幸『回送電車』ほか

堀江敏幸『回送電車』(中公文庫 2008年) 堀江敏幸『一階でも二階でもない夜―回送電車Ⅱ』(中公文庫 2009年) 堀江敏幸は、この「回送電車」をシリーズ化していて、現在Ⅵまで出版されているようです。『回送電車』の冒頭に、「回送電車主義宣言」というのが…

堀江敏幸の二冊

堀江敏幸『正弦曲線』(中央公論新社 2010年) 堀江敏幸『その姿の消し方―Pour saluer André Louchet: à la recherche d’un poète inconnu』(新潮社 2017年) 清水茂や伊藤海彦、矢内原伊作と、最近フランス系エッセイを読んできたので、その流れで読んでみ…

伊藤海彦『旋律と風景』

伊藤海彦『旋律と風景』(国文社 1982年) 伊藤海彦の音楽エッセイ。33の楽曲について、その旋律と分かちがたく繋がっている思い出の風景を綴ったもので、クラシック曲もあれば、タンゴ、シャンソンもあり、東京音頭や尺八曲、大薩摩節という三味線音楽まで…

伊藤海彦の二冊

伊藤海彦『季節の濃淡』(国文社 1982年) 伊藤海彦『渚の消息』(湯川書房 1988年) 久しぶりに伊藤海彦を読んでみました。このブログを始める前、2006年頃に、『きれぎれの空』と編著『詩人の肖像』を読んでいますが、自然の風物を織り込んだ詩人らしい抒…

清水茂『詩とミスティック』

清水茂『詩とミスティック』(小沢書店 1996年) 今年に入って、清水茂を、『詩と呼ばれる希望』、『遠いひびき』、『翳のなかの仄明り』と読んできた続きで取り上げてみました。小沢書店らしい瀟洒な造りの本です。内容は、大きく、詩とミスティックをめぐ…

博学系評論二冊

篠田一士『三田の詩人たち』(講談社文芸文庫 2006年) 松浦寿輝『黄昏客思(こうこんかくし)』(文藝春秋 2015年) この二冊も、たまたま続けて読んだというだけで、そんなに共通点はありません。強いて言えば、二人とも大学の文学の先生で、文学芸術全般…

森於菟と上林暁の随筆集

森於菟(池内紀解説)『耄碌寸前』(みすず書房 2011年) 上林暁/山本善行編『文と本と旅と―上林暁精選随筆集』(中公文庫 2022年) この二人は、森於菟が1890年生まれ、上林暁が1902年で、年も少し離れていますし、仕事の畑もまったく違って、何の関係もあ…

中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』

中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』(新潮文庫 2008年) 入院することがあり、ベッドで寝転がっても読める文庫本を持って行ったので、しばらく文庫本が続きます。日本の古語に疎いので、この本を読んでみたところ、新しく知り得たことが沢山ありました…

清水茂の二冊

清水茂『遠いひびき』(舷燈社 2015年) 清水茂『翳のなかの仄明り―詩についての断想』(青樹社 2004年) 先日読んだ『詩と呼ばれる希望』に続いて、清水茂を読んでみました。『遠いひびき』は、11章のそれぞれが独立したテーマをもった随想集、『翳のなかの…

矢内原伊作『顔について』

矢内原伊作『顔について―矢内原伊作の本 1』(みすず書房 1986年) 前回読んだ清水茂『詩と呼ばれる希望』の解説で、担当編集者が、矢内原伊作と清水茂がともに雑誌「同時代」の同人であり、深い交友があったことについて触れていたこともあり、架蔵してい…

清水茂『詩と呼ばれる希望』

清水茂『詩と呼ばれる希望―ルヴェルディ、ボヌフォワ等をめぐって』(コールサック社 2014年) フランスを舞台にしたエッセーを読んでいたら、なぜか清水茂を読みたくなりました。この本は、清水茂のフランス滞在を題材にした初期エッセイとは違って、副題に…

フランスを舞台にしたエッセー二冊

赤瀬雅子『フランス随想―比較文化的エセー』(秀英書房 2007年) 西出真一郎『木苺の村―フランス文学迷子散歩』(作品社 2010年) フランスへ行くにも、まだロシアの上を飛べないので時間はかかるし、航空料金も高くなってるし、おまけに円安でホテル代も高…

翻訳に関する本二冊

芳賀徹編『翻訳と日本文化』(山川出版社 2000年) 鴻巣友季子『明治大正 翻訳ワンダーランド』(新潮新書 2005年) これまで読んできたのよりは、出版年の新しい本です。これまでとは違った新たな視点があるのが特徴。『翻訳と日本文化』では、書籍にとどま…

吉武好孝『翻訳事始』

吉武好孝『翻訳事始』(早川書房 1995年) 前回読んだ『明治・大正の翻訳史』(初版は1959年)と同じ著者の本。ハヤカワ・ライブラリで1967年に出た初版の再版です。同じ時代の同じ現象を扱っている訳ですから、当然同じ記述がありますが、異なった角度から…

吉武好孝『明治・大正の翻訳史』

吉武好孝『明治・大正の翻訳史』(研究社 1972年) タイトルどおり、明治から大正にかけて外国の小説、評論、詩の翻訳がどう行なわれていったかを、時系列に追ったものですが、それにとどまらず、日本語の文章が翻訳が進むに連れてどう変わっていったか、ま…

野上豐一郎『翻譯論』

野上豐一郎『翻譯論―翻譯の理論と實際』(岩波書店 1938年) 翻訳史でもなく、翻訳作品の解説でもなく、翻訳という行為そのものについて、原理的に考究した本。英文学、能楽の研究者の立場から、具体例を引用しながら、論を展開しています。常識的な発想から…

島田謹二『翻譯文學』

島田謹二『翻譯文學』(至文堂 1951年) 「日本文學教養講座」というシリーズのうちの一冊。このシリーズでは、ほかに『神話傳説説話文學』というのを持っています。島田謹二の本はいろいろ持っていますが、読んだのは『ポーとボードレール』だけ。文章が論…

『近代文学鑑賞講座21 翻訳文学』

河盛好蔵編『近代文学鑑賞講座21 翻訳文学』(角川書店 1969年) これも翻訳文学についての概説書。後半に、代表的な翻訳論を抜粋のかたちで掲載しているのが特徴です。前半は、編者による序論と作品鑑賞となっており、作品鑑賞の部では、随筆、詩、小説、戯…

『翻訳の日本語』

川村二郎/池内紀『日本語の世界15 翻訳の日本語』(中央公論社 1981年) ひと頃、明治・大正期の海外翻訳ものが好きになって、森鴎外、黒岩涙香、森田思軒の翻訳翻案小説、上田敏、日夏耿之介、永井荷風らの訳詩集を読み、勢い余って、翻訳論に関する本もい…

現代詩に関する三冊

渡邊十絲子『今を生きるための現代詩』(講談社現代新書 2013年) 大岡信+谷川俊太郎『エナジー対話 詩の誕生』(エッソ・スタンダード石油株式会社広報部 1975年) 大岡信×谷川俊太郎『対談 現代詩入門』(中公文庫 1989年) 分かりやすく面白そうだったの…

吉野秀雄『鹿鳴集歌解』

吉野秀雄『鹿鳴集歌解』(中公文庫 1981年) 体調がすぐれず、少し間が空いてしまいました。この歳になると、何かと故障が出てきますので、ブログ公開をお休みすることもこれから起こると思いますが、ご了承ください。今のところ、0と5のつく日に、アップす…

奈良の寺と仏像についての本二冊

竹山道雄『古都遍歴―奈良』(新潮社 1954年) 矢内原伊作『古寺思索の旅』(時事通信社 1983年) 前回に続いて、奈良の寺や仏像に関する本を読んでみました。書影(真ん中)には、『古都遍歴―奈良』の改版(1976年)も入れています。『古寺思索の旅』は、奈…

大和古寺巡礼二作品三冊

和辻哲郎『古寺巡礼』(岩波文庫 1986年) 亀井勝一郎『大和古寺風物誌』(新潮文庫 1997年) 龜井勝一郎『改訂増補 大和古寺風物誌』(養徳社 1946年) 奈良に関する本の続きで、古典的二作品を読んでみました。『古寺巡礼』は会津八一や堀辰雄も影響を受け…

奈良を訪れた文人に関する本二冊

千田稔『奈良・大和を愛したあなたへ』(東方出版 2018年) 堀辰雄『大和路・信濃路』(新潮文庫 1986年) 会津八一を読んだついでに、戦前に奈良を訪れ、奈良へのオマージュを捧げた文人たちについての本を読んでみました。千田稔の本は、41人を取りあげ、…

会津八一に関する本二冊

宮川寅雄『秋艸道人随聞』(中公文庫 1982年) 小笠原忠編著『会津八一と奈良』(宝文館出版 1989年) 10月下旬に、奈良日仏協会の催しで、会津八一の歌碑巡りをすることになりました。その予習を兼ねるのと、これまで奈良のお寺をまわるたびに会津八一の歌…

分身テーマの本二冊

坂井信夫『分身』(矢立出版 1985年) ミヒャエル・エンデ丘沢静也訳『鏡のなかの鏡―迷宮』(岩波書店 1985年) 分身テーマの本はこれが最後となります。二冊に共通するのは、詩的雰囲気でしょうか。『分身』は18篇の詩集であり、『鏡のなかの鏡』は、30篇の…