最近読んだ本

赤祖父哲二『異界往還』

赤祖父哲二『異界往還―文学・宗教・科学をつなぐもの』(夢譚書房 1998年) 赤祖父哲二の本は、これまで『イメージ・ウォッチング』と『日本のメタファー』の二冊を読んでいて、二冊とも◎の評価がついてますが、25年以上も前の話で覚えておりません。しかも…

井口正俊/岩尾龍太郎編『異世界・ユートピア・物語』

井口正俊/岩尾龍太郎編『異世界・ユートピア・物語』(九州大学出版会 2001年) 西南学院大学で行なわれた同名の公開講座と福岡県リカレント講座の講義をもとに編集された書物で、9名の研究者がいろんな視点から論文を書いています。巻頭の2論文は私には難し…

異界に関する本と漫画

恋田知子『異界へいざなう女―絵巻・奈良絵本をひもとく』(平凡社 2017年) 諸星大二郎『異界録―諸怪志異(一)』(双葉社 2007年) 諸星大二郎『壺中天―諸怪志異(二)』(双葉社 2007年) 変な取り合わせになりましたが、たまたま読んだ時期が近いだけの話…

松田修『日本逃亡幻譚』

松田修『日本逃亡幻譚―補陀落世界への旅』(朝日新聞社 1978年) 日本における異界概念の種々相を追った書物。松田修は、大学時代に集中講義で、『雨月物語』と『好色一代男』を2年続けて受講したことがありました。まともに出席した数少ない授業のうちのひ…

安永壽延『日本のユートピア思想』

安永壽延『日本のユートピア思想』(法政大学出版局 1971年) 前回に引き続き、日本のユートピアに関連した本。前回が羅列型とすれば、今回は一転、論理型です。60年代特有の鼻息の荒さがあり、和辻哲郎、折口信夫など名だたる先人を一刀両断にしています。…

滝沢精一郎『日本人のユートピア』

滝沢精一郎『日本人のユートピア―茶室と隠れ里』(雄山閣 1978年) 引き続き日本のユートピアの話。著者は民俗学や中国古典の知識が豊富で、読んでいていろんな話が次々出てきます。別の見方をすれば、話がどんどん脱線して、知ってることに引っ張られて論が…

日本のユートピア関連二冊

中西進『ユートピア幻想―万葉びとと神仙思想』(大修館書店 1993年) 日野龍夫『江戸人とユートピア』(朝日選書 1977年) 万葉と江戸のユートピアというので共通するものがあるかと思いきや、まったくテイストの異なる二冊。中西進のものは、万葉時代の歌や…

芳賀徹の桃源二冊

芳賀徹『桃源の水脈―東アジア詩画の比較文化史』(名古屋大学出版会 2019年) 芳賀徹監修『桃源万歳!―東アジア理想郷の系譜』(岡崎市美術博物館 2011年) 桃源に関する本は、前回の『桃源郷』以外に、これまで杉田英明編『桃花源とユートピア』、芳賀徹「…

川合康三『桃源郷』

川合康三『桃源郷―中国の楽園思想』(講談社 2013年) 日本の常世の話の次は、中国の桃源郷についての本。常世とか桃源郷、またユートピアなど、人々が現実とは別のもう一つの世界を思い描くのは世界共通の現象ですが、中国における独自のあり方について、中…

谷川健一『常世論』

谷川健一『常世論―日本人の魂のゆくえ』(講談社学術文庫 1989年) タイム・トラベルの次は、この世の外の話。谷川健一の著書は昔からよく見かけますが、ほとんど読んだことがなく、『神に追われて』という小説的雰囲気の濃厚なノンフィクションと(2014年10…

ミチオ・カク『パラレルワールド』

ミチオ・カク斉藤隆央訳『パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』(NHK出版 2006年) 引き続いて、タイムトラベルに関連した物理学の本。相対性理論誕生後の宇宙や物質に関する現代物理学の趨勢が概観できた気がします。と偉そうに言っても、門外漢の…

ジョン・グリビン『タイム・ワープ』

ジョン・グリビン佐藤文隆/田中三彦訳『タイム・ワープ―平行宇宙への旅』(講談社 1983年) なぜか書棚にあったので、タイムトラベルについて物理学の視点から書かれ本を読んでみました。ふだん科学書を読んでない私には、知らないことが多くありました。著…

青山拓央『タイムトラベルの哲学』

青山拓央『タイムトラベルの哲学』(講談社 2002年) 次は、タイムトラベルについての哲学的考察。新刊で出た当時に一度読んでいます。ちょうどその頃、野矢茂樹の『哲学の謎』や中島義道『「時間」を哲学する』など、時間に触れた入門書的な本を続けて読ん…

浅見克彦『時間SFの文法』

浅見克彦『時間SFの文法―決定論/時間線の分岐/因果ループ』(青弓社 2015年) 私の所持している限りで時間SF作品を読み続けてきましたが、ここからは時間SFやパラレル・ワールドなどについての評論を読んで行きたいと思います。まず多くの作品の例証を挙げな…

時間・次元SFアンソロジー二冊

ロバート・A・ハインラインほか福島正実編『別世界ラプソデー―時間・次元SF』(芳賀書店 1972年) C・ファディマン編三浦朱門訳『第四次元の小説』(荒地出版社 1960年) 二冊とも、読むのは2回目で、『別世界ラプソデー』は35年前、『第四次元の小説』は約4…

タイム・スリップ長編二冊

ジェリー・ユルスマン小尾芙佐訳『エリアンダー・Mの犯罪』(文春文庫 1987年) ジュード・デヴロー幾野宏訳『時のかなたの恋人』(新潮文庫 1996年) わが家にある本のなかから手あたり次第、時間SFに関係した本を読んでいますが、今回はともにかなり長めの…

時間SFの古典『タイム・マシン』ともう一冊

H・G・ウエルズ宇野利泰訳『タイム・マシン―H・G・ウエルズ短篇集Ⅱ』(早川書房 1967年) サム・マーウィン・ジュニア川村哲郎訳『多元宇宙の家』(早川書房 1967年) ハヤカワ・SF・シリーズを2冊並べてみました。『タイム・マシン』は学生時代に一度読んだ…

『時間泥棒』と『時間衝突』

ジェイムズ・P・ホーガン小隅黎訳『時間泥棒』(創元SF文庫 1995年) バリントン・ベイリー大森望訳『時間衝突』(創元SF文庫 1994年) 似たようなタイトルの本。読んだ順番です。原書は『時間泥棒』1994年、『時間衝突』1973年と、『時間衝突』の方がかなり…

アリスン・アトリー『時の旅人』

アリスン・アトリー小野章訳『時の旅人』(評論社 1988年) 前回報告の近代的なSFのあとは、古風な味わいのタイムトラベル・ファンタジーです。アメリカSFと好対照の古色蒼然としたイギリスの伝統を感じさせられました。1939年に刊行されたと言いますから、…

タイムトラベルテーマの短篇集2冊

フィニイ、ヤング他/中村融編『時の娘』(創元SF文庫 2009年) P・J・ファーマー他/伊藤典夫・浅倉久志編『タイム・トラベラー―時間SFコレクション』(新潮文庫 1987年) フィニイのタイムトラベルものをずっと読んできましたが、次はタイムトラベルの短篇集…

ジャック・フィニイの2冊

ジャック・フィニイ山田順子訳『夢の10セント銀貨』(ハヤカワ文庫 1990年) ジャック・フィニイ福島正実訳『マリオンの壁』(角川書店 1975年) 引き続きフィニイを2冊読んでみました。いずれもタイムトラベルを扱った長編ですが、『夢の10セント銀貨』は多…

フィニイ『時の旅人』

ジャック・フィニイ浅倉久志訳『時の旅人』(角川書店 1996年) 『ふりだしに戻る』の続編ということなので、続けて読みました。この本も文庫にすれば上下二冊になるほどの分量で、読みごたえがありました。続編と言っても、『ふりだしに戻る』から25年もの…

ジャック・フィニイ『ふりだしに戻る』

ジャック・フィニイ福島正実訳『ふりだしに戻る(上)・(下)』(角川文庫 1991年) 時間旅行をテーマにしたフィニイの長編を読んでみました。あとがきで訳者も書いているように、『ゲイルズバーグの春を愛す』などの短篇のテイストがあり、それを目いっぱ…

ジャック・フィニイの二冊

フィニイ福島正実訳『レベル3』(早川書房 1961年) ジャック・フィニイ福島正実訳『ゲイルズバーグの春を愛す』(ハヤカワ文庫 1980年) 幻想都市、迷宮都市、架空の国、地図にない町などの本を読んでいますが、これはSFで扱う時間テーマのテイストにかなり…

『どこにもない国』と『地図にない町』

S・ミルハウザーほか柴田元幸編訳『どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集』(松柏社 2006年) フィリップ・K・ディック仁賀克雄編訳『地図にない町―ディック幻想短篇集』(ハヤカワ文庫 1976年) 「どこにもない」とか「地図にない」とか幻の町がテーマと…

東雅夫編『架空の町』

東雅夫編『架空の町』(国書刊行会 1997年) 国書刊行会の「書物の王国」という幻想小説アンソロジー・シリーズの第1巻目。アジアの架空の村の原点ともいえる陶淵明の桃源郷の小話を皮切りに、前半では、マンデヴィルの『東方旅行記』や千夜一夜物語など、遠…

『幻影都市のトポロジー』と『もうひとつの街』

A・ロブ=グリエ江中直紀訳『幻影都市のトポロジー』(新潮社 1979年) ミハル・アイヴァス阿部賢一訳『もうひとつの街』(河出書房新社 2013年) この二冊に共通するのは、夢のなかの出来事のように、支離滅裂、意味不明、何でもありの、書きたい放題、とも…

『方形の円』と『迷宮都市』

ギョルゲ・ササルマン住谷春也訳『方形の円―偽説・都市生成論』(東京創元社 2019年) デヴィッド・ブルックス実川元子訳『迷宮都市』(福武書店 1992年) タイトルに「都市」と名がついて、架空の、幻影の、迷宮の、異次元のといった形容詞のついた、幻想小…

カルヴィーノ『マルコ・ポーロの見えない都市』

イタロ・カルヴィーノ米川良夫訳『マルコ・ポーロの見えない都市』(河出書房新社 1983年) これからしばらくは、架空都市、幻想都市、迷宮都市、異次元都市…に関連した小説、評論、詩を読んで行きたいと思います。まず第一弾は、この分野の先陣を切ったカル…

長谷川正海『日本庭園雑考』

長谷川正海『日本庭園雑考―庭と思想』(東洋文化社 1983年) これで庭の本はいったん終わりにします。著者略歴を見れば医学の教授とあり、趣味が高じて庭の研究に打ち込まれたみたいですが、相当熱心に調べていて、庭の研究者としても十分やっていけそうに思…