5月半ばに古本を14箱売りました。さすがに売った後は、しばらくのあいだ買いそびれるもので、6月半ばまで購入したのは2冊のみ。これでは、古本報告も遠ざかるのみと、先週土曜日に、阪神今津で呑み会があったついでに、久しぶりに天神橋筋商店街の古本屋に立…
赤祖父哲二『異界往還―文学・宗教・科学をつなぐもの』(夢譚書房 1998年) 赤祖父哲二の本は、これまで『イメージ・ウォッチング』と『日本のメタファー』の二冊を読んでいて、二冊とも◎の評価がついてますが、25年以上も前の話で覚えておりません。しかも…
井口正俊/岩尾龍太郎編『異世界・ユートピア・物語』(九州大学出版会 2001年) 西南学院大学で行なわれた同名の公開講座と福岡県リカレント講座の講義をもとに編集された書物で、9名の研究者がいろんな視点から論文を書いています。巻頭の2論文は私には難し…
marcel béalu『PASSAGE DE LA BÊTE』(pierre belfond 1969年) 続いて、マルセル・ベアリュ。今回は、あまり気持ちのいい読書ではありませんでした。冒頭しばらくは落ち着いた筆致で、たまに洗練された表現が出てきて期待を抱きましたが、途中から一転、夫…
恋田知子『異界へいざなう女―絵巻・奈良絵本をひもとく』(平凡社 2017年) 諸星大二郎『異界録―諸怪志異(一)』(双葉社 2007年) 諸星大二郎『壺中天―諸怪志異(二)』(双葉社 2007年) 変な取り合わせになりましたが、たまたま読んだ時期が近いだけの話…
松田修『日本逃亡幻譚―補陀落世界への旅』(朝日新聞社 1978年) 日本における異界概念の種々相を追った書物。松田修は、大学時代に集中講義で、『雨月物語』と『好色一代男』を2年続けて受講したことがありました。まともに出席した数少ない授業のうちのひ…
昨年末ごろから、シベリウスの小品をたまに聴いています。『シベリウス:きわめつきの小品集』というCDで、とくに「聖歌(喜べ、わが魂よ)」と「献身(わが真なる心より)」の2曲が心にしみます。ずっと以前に、北欧小品名曲集のヴァイオリン篇、チェロ篇の…
安永壽延『日本のユートピア思想』(法政大学出版局 1971年) 前回に引き続き、日本のユートピアに関連した本。前回が羅列型とすれば、今回は一転、論理型です。60年代特有の鼻息の荒さがあり、和辻哲郎、折口信夫など名だたる先人を一刀両断にしています。…
滝沢精一郎『日本人のユートピア―茶室と隠れ里』(雄山閣 1978年) 引き続き日本のユートピアの話。著者は民俗学や中国古典の知識が豊富で、読んでいていろんな話が次々出てきます。別の見方をすれば、話がどんどん脱線して、知ってることに引っ張られて論が…
カバー 中 MARCEL BÉALU『la grande marée』(belfond 1973年) 6年ほど前、セーヌ河岸の古本屋で買ったもの。フランスの本にしては珍しくカバーがかかっています。ベアリュは、短篇集『水蜘蛛』を翻訳で読んで以来、『Mémoires de l’ombre(影の記憶)』な…
中西進『ユートピア幻想―万葉びとと神仙思想』(大修館書店 1993年) 日野龍夫『江戸人とユートピア』(朝日選書 1977年) 万葉と江戸のユートピアというので共通するものがあるかと思いきや、まったくテイストの異なる二冊。中西進のものは、万葉時代の歌や…
コロナの行動制限が緩和されて、春の開催は3年ぶりとのこと。久しぶりに古本仲間が4名集まりました。開場と同時に会場に入りましたが、さすがに年齢による自己規制が働いたのか、100円均一棚で昔なら買いこんでいたと思しき本を見過ごすなど、1時間半ほどの…
CATULLE MENDÈS『ZO’HAR―ROMAN CONTEMPORAIN』(G.CHARPENTIER 1886年) 文学史や評論などで、よく名前を目にするカチュール・マンデスを読んでみました。4年ほど前に、神田の田村書店で購入したもの。そう言えばコロナのせいで、神田にもずっと行けてません…
芳賀徹『桃源の水脈―東アジア詩画の比較文化史』(名古屋大学出版会 2019年) 芳賀徹監修『桃源万歳!―東アジア理想郷の系譜』(岡崎市美術博物館 2011年) 桃源に関する本は、前回の『桃源郷』以外に、これまで杉田英明編『桃花源とユートピア』、芳賀徹「…
川合康三『桃源郷―中国の楽園思想』(講談社 2013年) 日本の常世の話の次は、中国の桃源郷についての本。常世とか桃源郷、またユートピアなど、人々が現実とは別のもう一つの世界を思い描くのは世界共通の現象ですが、中国における独自のあり方について、中…
先月末、箕面の友人宅へ昼酒を飲みに行く途上、緑地公園で降りて、天牛江坂店へ立ち寄り、4冊ほど買いました。天牛江坂店は、おそらく大阪で最大の蔵書量があるのではないでしょうか。調べてみると、驚くべきことに、昨年5月以来、古書店での購入がありませ…
谷川健一『常世論―日本人の魂のゆくえ』(講談社学術文庫 1989年) タイム・トラベルの次は、この世の外の話。谷川健一の著書は昔からよく見かけますが、ほとんど読んだことがなく、『神に追われて』という小説的雰囲気の濃厚なノンフィクションと(2014年10…
NOËL DEVAULX『LA DAME DE MURCIE』(GALLIMARD 1987年) 私の愛でるフランス幻想小説の一群のなかに、また新たな作家がつけ加わりました。前回、マルセル・ブリヨンの記事でも触れた『現代フランス幻想小説』というアンソロジーで、表題作「ムルシアの貴婦…
ミチオ・カク斉藤隆央訳『パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』(NHK出版 2006年) 引き続いて、タイムトラベルに関連した物理学の本。相対性理論誕生後の宇宙や物質に関する現代物理学の趨勢が概観できた気がします。と偉そうに言っても、門外漢の…
ジョン・グリビン佐藤文隆/田中三彦訳『タイム・ワープ―平行宇宙への旅』(講談社 1983年) なぜか書棚にあったので、タイムトラベルについて物理学の視点から書かれ本を読んでみました。ふだん科学書を読んでない私には、知らないことが多くありました。著…
marcel brion『l’ombre d’un arbre mort』(albin michel 1970年) ブリヨンの比較的後期の長編小説。これでウィキペディアに載っている小説19篇のうち、残すのは初期の『Un enfant de la terre et du ciel(地と空の子)』と没後編まれたらしき『Ivre d’un …
青山拓央『タイムトラベルの哲学』(講談社 2002年) 次は、タイムトラベルについての哲学的考察。新刊で出た当時に一度読んでいます。ちょうどその頃、野矢茂樹の『哲学の謎』や中島義道『「時間」を哲学する』など、時間に触れた入門書的な本を続けて読ん…
浅見克彦『時間SFの文法―決定論/時間線の分岐/因果ループ』(青弓社 2015年) 私の所持している限りで時間SF作品を読み続けてきましたが、ここからは時間SFやパラレル・ワールドなどについての評論を読んで行きたいと思います。まず多くの作品の例証を挙げな…
4月で72歳になろうかというときに、性懲りもなく、せっせと古本を買いためているのはどうかなと思うこの頃です。20年ぐらい前は、古本市で倒れそうになりながら本に顔を近づけている老人を見かけていたのに、最近はそういう老人を見かけないなと思っていたら…
ロバート・A・ハインラインほか福島正実編『別世界ラプソデー―時間・次元SF』(芳賀書店 1972年) C・ファディマン編三浦朱門訳『第四次元の小説』(荒地出版社 1960年) 二冊とも、読むのは2回目で、『別世界ラプソデー』は35年前、『第四次元の小説』は約4…
ジェリー・ユルスマン小尾芙佐訳『エリアンダー・Mの犯罪』(文春文庫 1987年) ジュード・デヴロー幾野宏訳『時のかなたの恋人』(新潮文庫 1996年) わが家にある本のなかから手あたり次第、時間SFに関係した本を読んでいますが、今回はともにかなり長めの…
Maurice Pons『Le passager de la nuit』(Points 2017年) 引き続き、モーリス・ポンスを読みました。1959年に書かれた初期の作品です。前回読んだ『La passion de Sébastien N.』(1968年)に比べて、こちらは一転してまっとうな小説。共通点は、車が主人…
H・G・ウエルズ宇野利泰訳『タイム・マシン―H・G・ウエルズ短篇集Ⅱ』(早川書房 1967年) サム・マーウィン・ジュニア川村哲郎訳『多元宇宙の家』(早川書房 1967年) ハヤカワ・SF・シリーズを2冊並べてみました。『タイム・マシン』は学生時代に一度読んだ…
Maurice Pons『La passion de Sébastien N.―Une histoire d’amour』(Denoël 1968年) 久しぶりにモーリス・ポンスを読みます。ポンスを読むのは、これでたぶん翻訳1冊を含めて11冊目になります(このページの検索欄で「Maurice Pons」で検索してみてくださ…
前回の古本の記事で、「年末最後の古本市」と書いていたのは、阪神百貨店の古書ノ市のことで、今回はBOOK&CAFEという名前に変わって、喫茶コーナーが併設されていましたが、出品古書店の顔触れは以前と変わってませんでした。四天王寺の古本市などと比べると…