だまし絵に関する本二冊

谷川渥『図説 だまし絵―もうひとつの美術史』(河出書房新社 1999年) 種村季弘/高柳篤『だまし絵―新版・遊びの百科全書2』(河出書房新社 1995年) 錯視の本に続いて、だまし絵に関する本を読んでみました。谷川渥は美学、美術史の研究者なので、どちらかと…

視覚のトリックに関する本二冊

表 裏 白石和也『錯視の造形―メノトリックス』(ダヴィッド社 1978年) R・N・シェパード鈴木光太郎/芳賀康朗訳『視覚のトリック―だまし絵が語る〈見る〉しくみ』(新曜社 1994年) 『錯視の造形』を古本屋で買ったのをきっかけに、長らく積読していただまし…

ERNEST HELLO『Contes Extraordinaires』(エルネスト・エロ『異常な話』)

ERNEST HELLO『Contes Extraordinaires』(PERRIN 1921年) 生田耕作旧蔵書。扉に「神戸奢霸都館呈蔵」という印が捺してありました。また最後の目次の頁の「Caïn(カイン)」に下線が引かれ、ページの下にコメントが鉛筆で書かれていたので、画像を添付する…

清水茂『地下の聖堂』

清水茂『地下の聖堂―詩人片山敏彦』(小沢書店 1988年) 先日読んだ神谷光信の片山敏彦論でよく引用されていたので、読んでみました。片山敏彦について論評した単著としては、神谷光彦を除けば、この本ぐらいしかないのではないでしょうか。清水茂は、17歳の…

久しぶりに神田古本街を覗く

今月中旬、東京で会社時代の仲間が集まる会があって出かけたついでに、少しの時間を利用して、ほぼ5年ぶりに神田の古本街を眺めてきました。三省堂書店のあたりが空き地になっていたのと、田村書店が金土日のみの短縮営業になって閉まっていたこと、虔十書林…

神谷光信の片山敏彦をめぐっての二冊

神谷光信『片山敏彦 夢想と戦慄』(マイブックル 2011年) 神谷光信『片山敏彦 詩心と照応』(マイブックル 2011年) 志村ふくみの『語りかける花』のなかに、片山敏彦の形而上的な短歌が紹介されていたこともあり、神秘主義関連で片山敏彦についての本を読…

須賀敦子『霧のむこうに住みたい』

須賀敦子『霧のむこうに住みたい』(河出書房新社 2003年) これで須賀敦子を読むのはいったん終わりにします。この本は、単行本化されていなかった新聞雑誌への寄稿を、彼女の死後にまとめたもので、イタリア生活の思い出、イタリア各都市の素描、日本の学…

須賀敦子の二冊・続き

須賀敦子『地図のない道』(新潮社 1999年) 須賀敦子『時のかけらたち』(青土社 1998年) この二冊は、須賀敦子の中期から後期にかけての作品。これまで読んできた物語の続篇のような世界が描かれつつも、語り口が少し変わって来ていて、『地図のない道』…

須賀敦子の二冊

須賀敦子『ヴェネツィアの宿』(文春文庫 1999年) 須賀敦子『トリエステの坂道』(みすず書房 1998年) 須賀敦子を続けて読んでいます。前回は比較的初期の作品として、『イタリアの詩人たち』(1977~79)と『コルシア書店の仲間たち』(92)を取りあげま…

NOËL DEVAULX『Instruction civique』(ノエル・ドゥヴォー『市民教育』)

NOËL DEVAULX『Instruction civique』(Gallimard 1986年) ノエル・ドゥヴォーをフランス書で読むのは、『LA DAME DE MURCIE(ムルシアの貴婦人)』(2022年4月5日記事参照)、『L’auberge Parpillon(パルピヨン館)』(2023年3月20日)、『LE PRESSOIR MY…

須賀敦子の初期作品二冊

須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』(文藝春秋 1992年) 須賀敦子『イタリアの詩人たち』(青土社 1998年) 若松英輔の本に須賀敦子のことが出てきて、以前、『ミラノ霧の風景』と『ユルスナールの靴』を読んで感銘を受けたことを思い出したので、しばらく…

篠田桃紅『墨いろ』

篠田桃紅『墨いろ』(PHP 2016年) 以前、『日本の名随筆 香』というアンソロジーに収められていた篠田桃紅の「香」の文章がとても気に入ったので買っていたもの。前回まで読んでいた志村ふくみの文章と、片や染織、片や書という違いはありますが、どこか通…

Iwan Gilkin『Ténèbres』(イヴァン・ジルキン『暗闇』)

Iwan Gilkin『Ténèbres』(Edmond Deman 1892年)のリプリント 5、6年前にこの本の原本初版がオークションで出品されていて、初めてこの詩人のことを知りました。そのとき、面白いと思ったので入札しましたが当然高値で落札できず、bookfinderで検索して、イ…

続・志村ふくみの二冊

志村ふくみ『語りかける花』(人文書院 1993年) 志村ふくみ/志村洋子『たまゆらの道―正倉院からペルシャへ』(世界文化社 2001年) また志村ふくみの続き。今回は、1980年代から新聞や雑誌に連載または掲載された随筆を集めた『語りかける花』と、娘の志村…

志村ふくみの二冊

志村ふくみ『母なる色』(求龍堂 1999年) 志村ふくみ・文/井上隆雄・写真『色を奏でる』(ちくま文庫 1998年) 志村ふくみを続けて読んでいます。『母なる色』は書き下ろしを中心とした随筆集、『色を奏でる』は、『色と糸と織と』(岩波書店1986年)を文庫…

Paul Féval『Le cavalier Fortune』(ポール・フェヴァル『幸運という名の騎士』)

Paul Féval『Le cavalier Fortune』(OLIVIER ORBAN 1982年) ポール・フェヴァルは、10年ほど前に読んだ『Le Chevalier Ténèbre(暗黒騎士)』以来です(2014年1月11日記事参照)。chevalierとかcavalierとか騎士がお好きな人みたい。フェヴァルの本は日本…

四天王寺春の大古本祭り、阪神百貨店古書ノ市ほか

2か月ぶりの古本報告です。4月は二つの大きな古本市がありました。 まず阪神百貨店の古書ノ市には、初日の朝、大阪で会社OB麻雀会があり、1時間ほど時間があったので覗いてきました。 オヨヨ書林の出品コーナーからは、 原葵『くじら屋敷のたそがれ』(国書…

志村ふくみ『一色一生』

志村ふくみ『一色一生』(講談社文芸文庫 1999年) 志村ふくみについては、以前、宇佐見英治との対談『一茎有情』を読んで面白かったので、少しずつ買いためていましたが、そのうちの一冊。先日読んだ若松英輔の本にも名前が出てきていたので、また読むこと…

若松英輔/小友聡『すべてには時がある』

若松英輔/小友聡『すべてには時がある―旧約聖書「コヘレトの言葉」をめぐる対話』(NHK出版 2022年) 旧約聖書のなかの昔「伝道の書」と言われていた「コヘレトの言葉」について、このところ読んでいる若松英輔と、神学の専門家で牧師でもある小友聡のテレビ…

若松英輔『神秘の夜の旅』

若松英輔『神秘の夜の旅』(トランスビュー 2011年) タイトルに惹かれて買いましたが、内容は、越知保夫という50歳で亡くなった文芸批評家についての評論。若松英輔が書いた二冊目の本です(一冊目は、井筒俊彦について書いた本)。前回読んだ二冊に比べる…

若松英輔の二冊

若松英輔『悲しみの秘義』(文春文庫 2023年) 若松英輔『生きる哲学』(文春新書 2016年) 堀江敏幸の後は若松英輔を少し読んでみます。この二人は、文章の風合いも書いている内容も異なりますが、私のなかではなぜか同じグループのように感じています。二…

堀江敏幸『回送電車』ほか

堀江敏幸『回送電車』(中公文庫 2008年) 堀江敏幸『一階でも二階でもない夜―回送電車Ⅱ』(中公文庫 2009年) 堀江敏幸は、この「回送電車」をシリーズ化していて、現在Ⅵまで出版されているようです。『回送電車』の冒頭に、「回送電車主義宣言」というのが…

堀江敏幸の二冊

堀江敏幸『正弦曲線』(中央公論新社 2010年) 堀江敏幸『その姿の消し方―Pour saluer André Louchet: à la recherche d’un poète inconnu』(新潮社 2017年) 清水茂や伊藤海彦、矢内原伊作と、最近フランス系エッセイを読んできたので、その流れで読んでみ…

Émile Verhaeren『Le Travailleur étrange』(エミール・ヴェルハーレン『奇妙な仕事師』)

Émile Verhaeren『Le Travailleur étrange』(Ombres 2013年) この本は、8年前ぐらいにジベール・ジョゼフでたまたま目にした「PETITE BIBLIOTHÈQUE OMBRES(影叢書)」の一冊で、この叢書には、以前読んだPaul Févalの『Le Chevalier Ténèbre(暗黒騎士)…

伊藤海彦『旋律と風景』

伊藤海彦『旋律と風景』(国文社 1982年) 伊藤海彦の音楽エッセイ。33の楽曲について、その旋律と分かちがたく繋がっている思い出の風景を綴ったもので、クラシック曲もあれば、タンゴ、シャンソンもあり、東京音頭や尺八曲、大薩摩節という三味線音楽まで…

伊藤海彦の二冊

伊藤海彦『季節の濃淡』(国文社 1982年) 伊藤海彦『渚の消息』(湯川書房 1988年) 久しぶりに伊藤海彦を読んでみました。このブログを始める前、2006年頃に、『きれぎれの空』と編著『詩人の肖像』を読んでいますが、自然の風物を織り込んだ詩人らしい抒…

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(フレデリック・トリスタン『灰と雷』)

FRÉDÉRICK TRISTAN『La cendre et la foudre』(BALLAND 1982年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで5冊目だと思います。ネットで見ると、トリスタンの作風には、中国もの、幻想驚異もの、偽史もの、迷宮ものの4種あるとしています。なぜ中国もの…

清水茂『詩とミスティック』

清水茂『詩とミスティック』(小沢書店 1996年) 今年に入って、清水茂を、『詩と呼ばれる希望』、『遠いひびき』、『翳のなかの仄明り』と読んできた続きで取り上げてみました。小沢書店らしい瀟洒な造りの本です。内容は、大きく、詩とミスティックをめぐ…

今年は2ヶ月でまだ7冊

今年初めての古本報告です。今年に入って、特別な古本市もなく、わざわざ古書店に行くにも気乗りがせず、興味のある本を細々とネットで注文するのに留まりました。さすがにこれ以上買ってどうする?という声も内から聞こえてきて、この調子で古本買いもその…

博学系評論二冊

篠田一士『三田の詩人たち』(講談社文芸文庫 2006年) 松浦寿輝『黄昏客思(こうこんかくし)』(文藝春秋 2015年) この二冊も、たまたま続けて読んだというだけで、そんなに共通点はありません。強いて言えば、二人とも大学の文学の先生で、文学芸術全般…