奈良の寺と仏像についての本二冊

竹山道雄『古都遍歴―奈良』(新潮社 1954年) 矢内原伊作『古寺思索の旅』(時事通信社 1983年) 前回に続いて、奈良の寺や仏像に関する本を読んでみました。書影(真ん中)には、『古都遍歴―奈良』の改版(1976年)も入れています。『古寺思索の旅』は、奈…

四天王寺秋の大古本祭りほか

日曜日、四天王寺の古本市で、古本仲間の恒例の集まりがありました。といっても3人だけとなりましたが。お昼まで何とか天気も持ちこたえ、雨の降り出した1時に集合して昼呑み会へと移行しました。 四天王寺の古本市は、初日は10時きっちりに開場していますが…

MAURICE RENARD『LE MAÎTRE DE LA LUMIÈRE』(モーリス・ルナール『光を支配するもの』)

カバー 本体 MAURICE RENARD『LE MAÎTRE DE LA LUMIÈRE』(TALLANDIER 1948年) モーリス・ルナールのフランス書を読むのはこれで7冊目。1933年に、「L'Intransigeant(非妥協)」という新聞に連載された小説で、この本が初版です。細かい字でびっちりと詰ま…

大和古寺巡礼二作品三冊

和辻哲郎『古寺巡礼』(岩波文庫 1986年) 亀井勝一郎『大和古寺風物誌』(新潮文庫 1997年) 龜井勝一郎『改訂増補 大和古寺風物誌』(養徳社 1946年) 奈良に関する本の続きで、古典的二作品を読んでみました。『古寺巡礼』は会津八一や堀辰雄も影響を受け…

奈良を訪れた文人に関する本二冊

千田稔『奈良・大和を愛したあなたへ』(東方出版 2018年) 堀辰雄『大和路・信濃路』(新潮文庫 1986年) 会津八一を読んだついでに、戦前に奈良を訪れ、奈良へのオマージュを捧げた文人たちについての本を読んでみました。千田稔の本は、41人を取りあげ、…

会津八一に関する本二冊

宮川寅雄『秋艸道人随聞』(中公文庫 1982年) 小笠原忠編著『会津八一と奈良』(宝文館出版 1989年) 10月下旬に、奈良日仏協会の催しで、会津八一の歌碑巡りをすることになりました。その予習を兼ねるのと、これまで奈良のお寺をまわるたびに会津八一の歌…

分身テーマの本二冊

坂井信夫『分身』(矢立出版 1985年) ミヒャエル・エンデ丘沢静也訳『鏡のなかの鏡―迷宮』(岩波書店 1985年) 分身テーマの本はこれが最後となります。二冊に共通するのは、詩的雰囲気でしょうか。『分身』は18篇の詩集であり、『鏡のなかの鏡』は、30篇の…

『書物の王国11 分身』

東雅夫編『書物の王国11 分身』(国書刊行会 1999年) 今回は、国書刊行会の『書物の王国』の一冊。このシリーズは、テーマ別のアンソロジーで、前にもこのシリーズの『夢』を取りあげたとき書いたように、読んだことのある作品も多いですが、未読の中に佳篇…

Pierre Gripari『Le gentil petit diable』(ピエール・グリパリ『善良な悪魔の子』)

Pierre Gripari『Le gentil petit diable et autres contes de la rue Broca』(Gallimard 1983年) 読み終わってから、これを書こうとネットを見ていたら、なんと、この作品を訳したらしき『ブロカ通りのコント』という本が朝日出版社から出ていることを知…

分身テーマの短篇小説集二冊

マイケル・リチャードソン編・柴田元幸/菅原克也共訳『ダブル/ダブル』(白水社 1991年) 角川書店編『ドッペルゲンガー奇譚集―死を招く影』(角川ホラー文庫 1998年) 海外と日本の分身小説のアンソロジーを読みました。『ダブル/ダブル』のほうは、編集の…

下鴨神社納涼古本まつりほか

遅くなりましたが、下鴨神社の納涼古本まつりの報告。猛烈な暑さに加えて、初日かつ祝日のせいで人が多く、肩越しに覗かないと見れない状態で、まいりました。今年は古本仲間も暑さを敬遠して参加しなかったこともあり、12時までで早々に引き上げました。 均…

JOSÉPHIN PÉLADAN『LES AMANTS DE PISE』(ジョゼファン・ペラダン『ピサの恋人たち』)

JOSÉPHIN PÉLADAN『LES AMANTS DE PISE』(UNION GÉNÉRALE D’ÉDITIONS 1984年) 5年ほど前に、大阪古書会館の古本市で150円で買ったもの。前の持主が誤植を正すなど丁寧に読んだ形跡がありました。ペラダンの名前は、学生の頃から、澁澤龍彦の『悪魔のいる文…

犬飼公之『影の古代』

犬飼公之『影の古代』(桜楓社 1991年) 次は、日本の古代文学のなかで影という言葉がどう使われているかを通して、古代人の感性を考察した本。分身のテーマはそのうちの少しの部分にしか出てきませんが、全体として面白そうなので読んでみました。なじみの…

河合隼雄『影の現象学』

河合隼雄『影の現象学』(講談社学術文庫 2021年) この本も前々回読んだオットー・ランクと同じく、心理学者が書いた本。実際の患者の例も出てきますが、神話や伝説、物語など幅広い素材を用いながら、影について自由に論じています。章立てはありますが、…

クレマン・ロセ『現実とその分身』

クレマン・ロセ金井裕訳『現実とその分身―錯覚にかんする試論』(法政大学出版局 1989年) 今回は、分身についての哲学的考察。途中まで何とかついて行きましたが、後半は皆目分からなくなってしまいました。分身そのものについての記述は少ないというのが印…

オットー・ランク『分身 ドッペルゲンガー』

オットー・ランク有内嘉宏訳『分身 ドッペルゲンガー』(人文書院 1988年) これからしばらく分身や影についての本を読みます。分身テーマについては、学生時代に、改造社の世界大衆文學全集で、シヤミツソオの『影を賣る男の話』(淺野玄府訳)やエエウエル…

たにまち月いちと夏の阪神古書ノ市ほか

先週日曜日に、たにまち月いち古書即売会と阪神百貨店の夏の古書ノ市のはしごをしてきました。勢い込んだ割には、これといった収穫はありませんでしたが、とりあえず報告。 たにまち月いちでは、下記の4冊。 矢野書房にて、 花岡謙二編『日本植物歌集』(寺…

夢に関する最後の二冊

ミシェル・レリス細田直孝訳『夜なき夜、昼なき昼』(現代思潮社 1970年) 瀧口修造『三夢三話』(書肆山田 1980年) 長らく夢をテーマとした読書について書いてきましたが、このあたりでいったんけりを付けたいと思います。最後の二冊は、強いてまとまりを…

清岡卓行の夢に関する三冊

清岡卓行『夢を植える』(講談社 1976年) 清岡卓行『夢のソナチネ』(集英社 1981年) 清岡卓行『ふしぎな鏡の店』(思潮社 1989年) 『書物の王国2 夢』で、「帰途」を読んで面白かったのと、「幻想文学 特集:夢文学大全」で、東雅夫が、戦後作家の夢をテ…

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(フレデリック・トリスタン『蠅たちの王』)

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(CHRISTIAN BOURGOIS 1974年) 引き続きフレデリック・トリスタンを読んでみました。10年ほど前、パリのLibrairie Henri Vignesという古本屋で1ユーロで購入した本。手紙文が少し挿まれるだけで、あとは全篇日誌の…

島尾敏雄の二冊

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』(講談社文庫 1972年) 島尾敏雄『島へ―自選短篇集』(潮出版社 1972年) 「ユリイカ」の夢特集号で、清水徹が加賀乙彦との対談の中で、島尾敏雄の夢の物語を紹介していたり、「伝統と現代」の夢特集で、岡田啓とい…

内田百閒『冥途・旅順入城式』

内田百閒『冥途・旅順入城式』(新潮文庫 1943年) 「幻想文学46 夢文学大全」に収められていた藪下明博「夢のリアリティー」で、内田百閒の『冥途』が紹介されていて、面白そうだったので、読んでみました。『冥途・旅順入城式』は、学生の頃から、幻想小説…

久しぶりに古本屋で購入

先月、大学時代からの友人が亡くなりました。卒業後も年1~2回合宿と称して集まり、泳いだり麻雀をしたりして遊んでおりましたが、当初13人いた仲間も8人となりました。一人また一人と減っていくのは寂しい限りです。とうとう関西の仲間だけでは麻雀もできな…

ミッシェル・ジュヴェ『夢の城』

ミッシェル・ジュヴェ北浜邦夫訳『夢の城』(紀伊國屋書店 1997年) あまり読んだことのないタイプの小説です。18世紀のフランスの夢研究者を主人公に設定して、その試行錯誤を叙述するかたちで、夢の生理学的研究の今日の成果をほのめかしているという組立…

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(フレデリック・トリスタン『名無し男の真面目で滑稽な物語』)

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(Balland 1980年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで三冊目。これまでの二冊は長篇小説で、エピソードが織り込まれながらも全体を統一したストーリーがありましたが、…

『書物の王国2 夢』

東雅夫編『書物の王国2 夢』(国書刊行会 1998年) 『書物の王国』シリーズは、新刊で出た当時は、知っている作品が半分ぐらい入っているので、買うのも何となく損をしたような気になり若干敬遠気味でしたが、この前、同シリーズの『架空の町』を読んで、知…

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」(新紀元社 2021年) 幻想系雑誌としてはいちばん新しい部類でしょうか。初めて読みます。こういう雑誌はずっと続いていって欲しいですね。ぶ厚いですが、活字が大きく読みやすいのはありがたい。昔の雑誌…

「幻想文学 特集:夢文学大全」

「幻想文学46 特集:夢文学大全」(アトリエOCTA 1996年) 文学系雑誌の夢特集続き。「幻想文学」は、準備号だった「金羊毛」を含め創刊号から10年ぐらい(36号まで)は毎号買っていました。当時は通読することはなく新刊展望と気に入った記事だけを読んでい…

文学系雑誌の夢特集二冊

「幻想と怪奇 特集:夢象の世界」(歳月社 1974年) 「早稲田文学 夢まぼろしの物語」(早稲田文学会 1986年) 文学系雑誌の夢特集に移ります。夢理論よりはこちらの方が私の気性に合っているのか、気楽に読めました。が、どれとは言いませんが、いくつかの…

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(フレデリック・トリスタン『バルタザール・コベールの英雄的苦難』)

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(Fayard 1999年) 昨年読んだ『Dieu, l’Univers et madame Berthe(神と宇宙とベルト夫人)』があまりにも衝撃的だったので(10月10日記事参照)、M・シュネデール『フランス幻想文学史…