浅見克彦『時間SFの文法』

浅見克彦『時間SFの文法―決定論/時間線の分岐/因果ループ』(青弓社 2015年) 私の所持している限りで時間SF作品を読み続けてきましたが、ここからは時間SFやパラレル・ワールドなどについての評論を読んで行きたいと思います。まず多くの作品の例証を挙げな…

古本買いもそろそろ店じまいか

4月で72歳になろうかというときに、性懲りもなく、せっせと古本を買いためているのはどうかなと思うこの頃です。20年ぐらい前は、古本市で倒れそうになりながら本に顔を近づけている老人を見かけていたのに、最近はそういう老人を見かけないなと思っていたら…

時間・次元SFアンソロジー二冊

ロバート・A・ハインラインほか福島正実編『別世界ラプソデー―時間・次元SF』(芳賀書店 1972年) C・ファディマン編三浦朱門訳『第四次元の小説』(荒地出版社 1960年) 二冊とも、読むのは2回目で、『別世界ラプソデー』は35年前、『第四次元の小説』は約4…

タイム・スリップ長編二冊

ジェリー・ユルスマン小尾芙佐訳『エリアンダー・Mの犯罪』(文春文庫 1987年) ジュード・デヴロー幾野宏訳『時のかなたの恋人』(新潮文庫 1996年) わが家にある本のなかから手あたり次第、時間SFに関係した本を読んでいますが、今回はともにかなり長めの…

Maurice Pons『Le passager de la nuit』(モーリス・ポンス『夜の同乗者』)

Maurice Pons『Le passager de la nuit』(Points 2017年) 引き続き、モーリス・ポンスを読みました。1959年に書かれた初期の作品です。前回読んだ『La passion de Sébastien N.』(1968年)に比べて、こちらは一転してまっとうな小説。共通点は、車が主人…

時間SFの古典『タイム・マシン』ともう一冊

H・G・ウエルズ宇野利泰訳『タイム・マシン―H・G・ウエルズ短篇集Ⅱ』(早川書房 1967年) サム・マーウィン・ジュニア川村哲郎訳『多元宇宙の家』(早川書房 1967年) ハヤカワ・SF・シリーズを2冊並べてみました。『タイム・マシン』は学生時代に一度読んだ…

Maurice Pons『La passion de Sébastien N.―Une histoire d’amour』(モーリス・ポンス『セバスチャン・Nの情熱―愛の物語』)

Maurice Pons『La passion de Sébastien N.―Une histoire d’amour』(Denoël 1968年) 久しぶりにモーリス・ポンスを読みます。ポンスを読むのは、これでたぶん翻訳1冊を含めて11冊目になります(このページの検索欄で「Maurice Pons」で検索してみてくださ…

年末の阪神百貨店の古書ノ市ほか

前回の古本の記事で、「年末最後の古本市」と書いていたのは、阪神百貨店の古書ノ市のことで、今回はBOOK&CAFEという名前に変わって、喫茶コーナーが併設されていましたが、出品古書店の顔触れは以前と変わってませんでした。四天王寺の古本市などと比べると…

『時間泥棒』と『時間衝突』

ジェイムズ・P・ホーガン小隅黎訳『時間泥棒』(創元SF文庫 1995年) バリントン・ベイリー大森望訳『時間衝突』(創元SF文庫 1994年) 似たようなタイトルの本。読んだ順番です。原書は『時間泥棒』1994年、『時間衝突』1973年と、『時間衝突』の方がかなり…

アリスン・アトリー『時の旅人』

アリスン・アトリー小野章訳『時の旅人』(評論社 1988年) 前回報告の近代的なSFのあとは、古風な味わいのタイムトラベル・ファンタジーです。アメリカSFと好対照の古色蒼然としたイギリスの伝統を感じさせられました。1939年に刊行されたと言いますから、…

ANDRÉ DHÔTEL『Les voyages fantastiques de JULIEN GRAINEBIS』(アンドレ・ドーテル『ジュリアン・グレヌビスの不思議な旅』)

ANDRÉ DHÔTEL『Les voyages fantastiques de JULIEN GRAINEBIS』(PIERRE HORAY 1958年) アンドレ・ドーテルは、大学時代に三笠書房から出ていた『遥かなる旅路(LE PAYS OÛ L’ON N’ARRIVE JAMAIS)』を翻訳で読み好きになった作家です。それで15年ほど前に…

タイムトラベルテーマの短篇集2冊

フィニイ、ヤング他/中村融編『時の娘』(創元SF文庫 2009年) P・J・ファーマー他/伊藤典夫・浅倉久志編『タイム・トラベラー―時間SFコレクション』(新潮文庫 1987年) フィニイのタイムトラベルものをずっと読んできましたが、次はタイムトラベルの短篇集…

ジャック・フィニイの2冊

ジャック・フィニイ山田順子訳『夢の10セント銀貨』(ハヤカワ文庫 1990年) ジャック・フィニイ福島正実訳『マリオンの壁』(角川書店 1975年) 引き続きフィニイを2冊読んでみました。いずれもタイムトラベルを扱った長編ですが、『夢の10セント銀貨』は多…

GÉRARD PRÉVOT『L’INVITÉE DE LORELEI』(ジェラール・プレヴォ『ローレライからの招待』)

GÉRARD PRÉVOT『L’INVITÉE DE LORELEI』(FLEUVE NOIR 1999年) プレヴォの長篇3つ、短篇23、それに日記断片が収められている総ページ数635の大部の本。このうち短篇の19は『LE SPECTRE LARGE(大きい幽霊)』(2015年11月19日記事)で読んでいたので省略。…

年末報告―たにまち月いち古書即売会ほか

年末に近くなると、なぜか本が買いたくなってきます。歳も考えて辛抱しようとするんですが、なかなか思うようにはいきません。 先週、たにまち月いち古書即売会の初日の日に、たまたま甲子園で呑み会があったので、途中下車して立ち寄りました。下記4冊を購…

フィニイ『時の旅人』

ジャック・フィニイ浅倉久志訳『時の旅人』(角川書店 1996年) 『ふりだしに戻る』の続編ということなので、続けて読みました。この本も文庫にすれば上下二冊になるほどの分量で、読みごたえがありました。続編と言っても、『ふりだしに戻る』から25年もの…

ジャック・フィニイ『ふりだしに戻る』

ジャック・フィニイ福島正実訳『ふりだしに戻る(上)・(下)』(角川文庫 1991年) 時間旅行をテーマにしたフィニイの長編を読んでみました。あとがきで訳者も書いているように、『ゲイルズバーグの春を愛す』などの短篇のテイストがあり、それを目いっぱ…

ジャック・フィニイの二冊

フィニイ福島正実訳『レベル3』(早川書房 1961年) ジャック・フィニイ福島正実訳『ゲイルズバーグの春を愛す』(ハヤカワ文庫 1980年) 幻想都市、迷宮都市、架空の国、地図にない町などの本を読んでいますが、これはSFで扱う時間テーマのテイストにかなり…

『どこにもない国』と『地図にない町』

S・ミルハウザーほか柴田元幸編訳『どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集』(松柏社 2006年) フィリップ・K・ディック仁賀克雄編訳『地図にない町―ディック幻想短篇集』(ハヤカワ文庫 1976年) 「どこにもない」とか「地図にない」とか幻の町がテーマと…

東雅夫編『架空の町』

東雅夫編『架空の町』(国書刊行会 1997年) 国書刊行会の「書物の王国」という幻想小説アンソロジー・シリーズの第1巻目。アジアの架空の村の原点ともいえる陶淵明の桃源郷の小話を皮切りに、前半では、マンデヴィルの『東方旅行記』や千夜一夜物語など、遠…

『幻影都市のトポロジー』と『もうひとつの街』

A・ロブ=グリエ江中直紀訳『幻影都市のトポロジー』(新潮社 1979年) ミハル・アイヴァス阿部賢一訳『もうひとつの街』(河出書房新社 2013年) この二冊に共通するのは、夢のなかの出来事のように、支離滅裂、意味不明、何でもありの、書きたい放題、とも…

BRUNO GAY-LUSSAC『Dialogue avec une ombre』(ブリュノ・ゲー=リュサック『影との対話』)

BRUNO GAY-LUSSAC『Dialogue avec une ombre』(GALLIMARD 1972年) ゲー=リュサックの本はこれで二冊目です。前に読んだ『L’AUTRE VISITE(他者の訪れ)』(2015年10月15日記事参照)と同様、難しい単語も少なく平明なフランス語で、現在形で淡々と語られ…

『方形の円』と『迷宮都市』

ギョルゲ・ササルマン住谷春也訳『方形の円―偽説・都市生成論』(東京創元社 2019年) デヴィッド・ブルックス実川元子訳『迷宮都市』(福武書店 1992年) タイトルに「都市」と名がついて、架空の、幻影の、迷宮の、異次元のといった形容詞のついた、幻想小…

また二つの古本市へ

前回古本報告のあと、またふたつの古本市へ行きました。やや過熱気味。 ひとつは阪神百貨店の秋の阪神古書フェア。昔の職場の関係で芦屋に用事があり、帰りしなに1時間ほど立ち寄ることができました。 矢野書房で、 荒俣宏/松岡正剛『月と幻想科学』(工作舎…

JEAN-PIERRE BOURS『celui qui pourrissait』(ジャン・ピエール・ブール『腐っていった男』)

JEAN-PIERRE BOURS『celui qui pourrissait』(marabout 1977年) 5年ほど前、パリの幻想小説・SF専門古書店「L’amour du NOIR」で大量買いした中の一冊。あまり聞いたことのない作家ですが、1977年のジャン・レイ賞を受賞した人で、本業は弁護士のようです…

カルヴィーノ『マルコ・ポーロの見えない都市』

イタロ・カルヴィーノ米川良夫訳『マルコ・ポーロの見えない都市』(河出書房新社 1983年) これからしばらくは、架空都市、幻想都市、迷宮都市、異次元都市…に関連した小説、評論、詩を読んで行きたいと思います。まず第一弾は、この分野の先陣を切ったカル…

長谷川正海『日本庭園雑考』

長谷川正海『日本庭園雑考―庭と思想』(東洋文化社 1983年) これで庭の本はいったん終わりにします。著者略歴を見れば医学の教授とあり、趣味が高じて庭の研究に打ち込まれたみたいですが、相当熱心に調べていて、庭の研究者としても十分やっていけそうに思…

久しぶりに二つの古本市

コロナもようやく下火となり、古本市も続々と再開されました。その第一弾、昨年秋以来の開催となった四天王寺秋の大古本祭りに、初日に出かけました。真っ先に駆けつけた100円均一はものすごい人だかりの密状態。肩越しに本を見つめるのに疲れて早々に退避し…

庭園に関する本三冊

野田正彰『庭園との対話』(日本放送出版協会 1996年) 円地文子編『日本の名随筆―庭』(作品社 1983年) 高木昌史編訳『庭園の歓び―詞華による西欧庭園文化散策』(三交社 1998年) とにかく庭に関しての本。『庭園との対話』はNHK教育テレビの番組のテキス…

MICHEL DE GHELDERODE『SORTILÈGES et autres contes crépsculaires』(ミシェル・ド・ゲルドロード『魔法―薄明物語集』)

MICHEL DE GHELDERODE『SORTILÈGES et autres contes crépsculaires』(bibliothèque marabout 1962年) 大学時代に買った本。単語の意味を余白に丁寧に書き込んでいて、読もうと努力したあとが見えます。がそれもあえなく数ページで挫折しているのが可愛ら…