Jean Lorrain『Venise』(ジャン・ロラン『ヴェニス』)

Jean Lorrain『Venise』(La Bibliothèque 1997年) 今回は、90ページほどの薄っぺらい本ですが、やたらとイタリア語やヴェニスの建物の固有名詞が出てくるので読みにくい。1905年に「絵入り雑誌」に寄稿したヴェニスについてのエッセイと、1898年から1904年…

何かの気配を感じさせる音楽 その⑥

しばらく間が空いてしまいましたが、いよいよドイツ・オーストリアの作曲家篇に移ります。ドイツとなると作曲家の数、作品の数が膨大で、私のようにたまにしか音楽を聴かない者には、網羅的な展望はとてもできませんが、気付いた範囲で気配の音楽を探したい…

福永光司『「馬」の文化と「船」の文化』

福永光司『「馬」の文化と「船」の文化―古代日本と中国文化』(人文書院 1996年) 前回に続いて福永光司の本。中国の北方文化と江南文化の比較、老荘思想、徐福伝説、道教の様々なシンボル、八幡大神、中国歴代皇帝と道教、常世の信仰、墓と廟など、さまざま…

marcel brion『nous avons traversé la montagne』(マルセル・ブリヨン『われわれはその山を通り抜けた』)

marcel brion『nous avons traversé la montagne』(albin michel 1972年) 引き続いてブリヨンを読みました。前回読んだ『Les Vaines Montagnes(辿り着けぬ峰々)』の序文で、奥さんのLiliane Brionが本作に言及して、ブリヨンの最上作品のひとつと書いて…

今年初めて古本市へ行く

ついに今年になって初めて奈良県外へ出ました。古本市も今年初、しかも大阪古書会館の即売会と阪神百貨店古書ノ市の二つの古本市をはしごしました。さすがに寄る年波にどっと疲れて、夜の部の待ち合わせ時間まで持たず、喫茶店で休憩するはめに。自分も出て…

福永光司『道教と古代日本』

福永光司『道教と古代日本』(人文書院 1987年) このところ読んだ『数の文化史を歩く』や『日本史を彩る道教の謎』によく引用されていた本。肝心な説はだいたい読んだことのある話が多かったので、読む順序が逆だったと反省しております。それと、あちこち…

高橋徹/千田稔『日本史を彩る道教の謎』

高橋徹/千田稔『日本史を彩る道教の謎』(日本文芸社 1992年) 先日読んだ田坂昻『数の文化史を歩く』で、日本の古代に道教の影響が色濃くあるという話を読んで興味が湧いたので、ちょうどうまい具合に本棚にあったこの本を引っ張り出してきました。なぜか昨…

吉山浩司『数はどのようにして創られたか』

吉山浩司『数はどのようにして創られたか―中国古代史探究の旅』(私家版 1997年) 昨年、浜松の古本屋で100円で買った本。私家版で、ネットで検索しても著者がどんな方がよく分かりません。たぶん、定年したサラリーマンか歴史の先生でしょう。小説の体裁を…

田坂昻『数の文化史を歩く』

田坂昻『数の文化史を歩く―日本から古代オリエント世界への旅』(風濤社 1993年) 数についての本の続き。久しぶりにわくわくする読書の楽しみがありました。何に惹きつけられたか考えてみると、古代の宇宙観・世界観を日本、中国、狭義のオリエント、西洋に…

『龍彦親王航海記―澁澤龍彦伝』 ほか

関西3府県に緊急事態宣言が昨日までずっと出ていて、不要不急と言われると、つい外へ出るのが億劫となっていました。今年はまだ奈良県から外には足を踏み出しておりません(しかも生駒市と奈良市のみ)。飲み会も、リモート飲み会が5回あっただけ。大人にな…

Marcel Brion『Les Vaines Montagnes』(マルセル・ブリヨン『辿り着けぬ峰々』)

Marcel Brion『Les Vaines Montagnes』(Albin Michel 1985年) 久しぶりにまたブリヨンを読んでみました。これで17冊目。Vaines Montagnesの訳が難しい。単純に訳すと「虚しい山々」となりますが、これでは意味がよく分からないし、山というのが平凡すぎま…

郡司正勝『和数考』

郡司正勝『和数考』(白水社 1997年) 宮崎興二の数尽くしのような記述が面白かったので、数に関する本を本棚から引っ張り出してきました。20年ほど前に一度読んだことのある本ですが、まったく忘れているので再読しました。20年前の読書ノートでは、「博覧…

森豊『聖なる円光』

森豊『聖なる円光』(六興出版 1975年) 形についていろいろ読んできましたが、この本でいったん終えます。今回は、円が象徴する図像として、聖像の頭部や背後を飾る円光を取りあげた本です。日本に仏教が渡来してからの光背の形がどのように移っていったか…

篠田知和基『日本文化の基本形〇△□』

篠田知和基『日本文化の基本形〇△□』(勉誠出版 2007年) 篠田知和基の形についての本は、以前、『ヨーロッパの形―螺旋の文化史』(2011年7月7日記事参照)を読んで以来。その本と同じく、いろんな例証が次から次へとくり出されてきますが、違う例があるよう…

宮崎興二のかたちに関する本二冊

宮崎興二『プラトンと五重塔―かたちから見た日本文化史』(人文書院 1987年) 宮崎興二『なぜ夢殿は八角形か―数にこだわる日本史の謎』(祥伝社 1995年) 『プラトンと五重塔』を先に読みました。ずいぶん前にタイトルに惹かれて買っていた本。先日読んだ「…

矢野峰人譯詩集『黒き獵人』ほか

本年最初の古本報告です。年末に、古本仲間から、「高い古本を買えばたくさん買わなくて済み、置き場にも困らない」というのを聞いて、年初にさっそく実行してみました。以前から欲しくても高値で手が届かなかったのが、ヤフーオークションで比較的安く出て…

ROLAND DORGELÈS『Le château des brouillards』(ロラン・ドルジュレス『霧の館』)

ROLAND DORGELÈS『Le château des brouillards』(Le Livre de Poche 1962年) 生田耕作旧蔵書。ロラン・ドルジュレスの作品は日本でも翻訳がいくつか出ているようです。何かの本で、ネルヴァルが収容されていた精神病院の建物が舞台になっていると読んだよ…

杉浦康平『かたち誕生』

杉浦康平『かたち誕生』(日本放送出版協会 1996年) 今回は、ブックデザイナーによる「かたち」論です。NHK教育テレビで放送された「人間大学」というシリーズのテキスト。こんな放送があったのは知りませんでした。ブックデザイナーとしての著者ならではの…

高木隆司『「かたち」の研究』

高木隆司『「かたち」の研究』(ダイヤモンド社 1980年) 今回は、形を物理から考えるという本です。ふだん理系の本を読むことのない私ですが、この本は、うたい文句に、「日常生活の言葉で物理学を語る、美術系や文科系の学生のための数式のない教科書をつ…

「形の文化誌〔4〕―シンボルの物語」

形の文化会編「形の文化誌〔4〕―シンボルの物語」(工作舎 1996年) 「かたち」に関する本を続けて読んでいます。今回は不思議な雑誌を読みました。理系と文系が入り交じった、専門の異なる諸氏によるさまざまな味わいの論文やエッセイが隣り合って並んでい…

球体に関する本二冊

高知尾仁『球体遊戯』(同文館 1991年) 高橋睦郎『球体の神話学』(河出書房新社 1991年) 球体という同じテーマについて書かれていますが、内容はまったく別のものです。『球体遊戯』は、西欧の15~16世紀の寓意画を素材にして、ギリシア哲学からキリスト…

阪神百貨店古書ノ市ほか

年末の阪神古書ノ市には、例年、忘年会と併せて古本仲間が集まることになっていますが、今年は3名とだんだん少なくなってきました。今回は、コロナで自粛が呼びかけられていたこともあり、4時からの時差開催による茶話会程度のものを予定していましたが、結…

CLAUDE FARRÈRE『L’Homme qui assassina』(クロード・ファレール『殺した男』)

CLAUDE FARRÈRE『L’Homme qui assassina』(PAUL OLLENDORFF 1915年?) クロード・ファレールの本はこれまで5冊読んでいて、今回読むのは5年ぶり。文章がとても分かりやすいので気に入っています。難しい単語も、ときどきトルコ語らしき意味不明の語が出て…

中村禎里『回転する円のヒストリア』

中村禎里『回転する円のヒストリア』(朝日新聞社 1979年) 中村禎里という著者についてはまったく知りませんでしたが、理系と文系が融合したような随筆で、面白く読めました。「数理科学」という雑誌に連載されたものを中心にまとめています。理学部ご出身…

M・ルルカー『象徴としての円』

マンフレート・ルルカー竹内章訳『象徴としての円―人類の思想・宗教・芸術における表現』(法政大学出版局 1991年) 「十字」と「渦巻」の次は「円」についての本です。円による文様は装飾のもっとも古いモチーフのひとつであり、また古来より、円はさまざま…

パスカル・キニャールの二冊

パスカル・キニャール高橋啓訳『めぐり逢う朝』(早川書房 1992年) パスカル・キニャール吉田加南子訳『音楽のレッスン』(河出書房新社 1993年) キニャールの作品は、ずいぶん昔に、端正で詩的な文章が目にとまって、『辺境の館』というのを読んだことが…

大和岩雄『十字架と渦巻』

大和岩雄『十字架と渦巻―象徴としての生と死』(白水社 1995年) 10年近く前に、螺旋や渦巻についての本を何冊か読み、このブログでも感想を書きましたが、その続きで、形についての本を何冊か読んでいきたいと思います。まず、面白そうなタイトルのこの本か…

HUBERT HADDAD『Un rêve de glace』(ユベール・アダッド『氷の夢』)

HUBERT HADDAD『Un rêve de glace』(ZULMA 2006年) 前回読んだ『Géographie des nuages(雲の地誌)』が出色の出来ばえだったので、勢いこんで読みましたが、若干期待外れ。アダッドの小説の処女作のようです。そのせいか文章が凝っていて、単語も聞きなれ…

アルベール・カミュ『ペスト』

アルベール・カミュ宮崎嶺雄訳『ペスト』(新潮文庫 2020年) 奈良日仏協会の催しで、「カミュ『ペスト』を読む」という講演会があったので、原作を読んでおこうと手にしました。最近のコロナ騒ぎに見られる社会現象を考えるうえで参考になるかなという関心…

中平解の回顧随筆二冊

中平解『霧の彼方の人々』(清水弘文堂 1991年) 中平解『冬の没(い)りつ日』(清水弘文堂 1993年) 前回読んだ『フランス語學新考』の戦前の文章と比べると書き方がずいぶんやさしくなっています。中平解が晩年に人生を振り返って、主に人との交流の思い…