2008-01-01から1年間の記事一覧

:PATRICK MODIANO(パトリック・モディアノ)『VESTIAIRE DE L’ENFANCE(子どものころの衣裳部屋)』

パトリック・モディアノ『子どものころの衣裳部屋』 何とか年内に読み終えることができました。 モディアノ独特の想い出探しの情緒に溢れた一篇です。 これまで読んだモディアノ作品は、記憶を失った主人公がハードボイルド探偵のように過去を探すというよう…

:音楽関係2冊、竹原正三著『パリ音楽散歩』、林巧『エキゾチック・ヴァイオリン―アジアの響きをめぐる旅』

1冊目は竹原正三著『パリ音楽散歩』 著者は元バリトン歌手、オペラ青年グループを結成数々のオペラの日本初演をした方だそうで、その後パリに定住、日本語学校の校長先生をされていたとのことです。 さすがにパリ在住者だけあって自ら街中を歩き回って地図…

:MARCEL BRION (マルセル・ブリヨン)『LES ESCALES DE LA HAUTE NUIT(深夜の彷徨)』

マルセル・ブリヨン『深夜の彷徨』 大学時代、友人と競い合いながら大阪の洋書輸入代理店で注文したマラブ叢書のなかの1冊。『フランス現代幻想小説』に収められた「シビラ・ファン・ローン」が難解だった印象がありマルセル・ブリヨンは難しいという固定観…

:時たま聴く曲〜アラビアンテイスト西洋音楽

昔から、小泉文夫さんの影響もあって、民族音楽をたまに聴いていますが、完全な民族音楽よりも、西洋音楽が異国情緒として取り入れたものに、より魅力を感じます。何となくこの感性に後ろめたさを感じてしまいますが、最近では、民族音楽側から進んで西洋音…

:出口裕弘『ボードレール』

学生時代に読んでいたと思いますが、古本屋店頭100円で購入したのをきっかけに読んでみました。今から見ると、文章のやや激したトーンが時代を感じさせます。著者の性格もあるには違いないけれど、断言的で挑戦的な口調、ねばならないあるいは反語の多用。気…

:『ワールドミステリーツァー13【空想篇】』

こんな本が出ているとはつゆ知りませんでした。 各国別の魔界、ミステリーゾーン解説シリーズ「ワールドミステリーツァー」の別冊だそうです。表題のとおり、どこにもない場所、現実にはない空想の場所をテーマに、まとめた一冊。 壺中天や桃源郷、絵の中の…

:ガイ・エンドア『パリの王様―大アレクサンドル・デュマ物語』

最近古本屋へも行かないので、最近読んだ本シリーズで、回数を稼ごうと思います。 この本はエンドアがデュマを素材に書いた小説であって、エピソードの大半は僅かの資料をもとに想像力で大幅に話を拡げて書いたもののようです。それでこんなに面白いのだと思…

:再び仏書に挑戦 Pierre Very(ピエール・ヴェリィ)『LEONARD ou les delices du bouquiniste(レオナールー古本屋の悦楽)』

むかし古本市で、bouqinisteの意味も分からずに、表紙の雰囲気と裏表紙の半分ぐらいしか分からない作家経歴だけで購入したもの。後で分かったのは、本人は推理作家と言われるのを嫌ったらしいが、日本でも幾つか翻訳されている推理小説を中心に書いており、…

:最近読んだ本シリーズ姉妹編よく聴く曲第2弾!『哀愁のトレモロ』

この5〜6年ヨーロッパの大衆音楽を継続的に聴いています。 もとはヴァイオリンが好きだったところから、ジプシー音楽のヴァイオリンを聴き始め、どんどん拡がっていったものです。 最近はまっているのが、ギター系の楽器で、撥弦、打弦楽器というのでしょう…

:ALEXANDRE DUMAS(アレクサンドル・デュマ)“LES MILLE ET UN FANTÕMES(1001幽霊譚)”

アレクサンドル・デュマ『1001幽霊譚』『ビロードの首飾りの女』 前回お約束したので、翻訳の出ていない本をと探してみました。私にとっては、字が小さく、1ページの字数が多かったので、どうなるかと思いましたが、読み始めてみると、量の多さを苦痛と感じ…

:鹿島茂の3冊

鹿島茂『パリの王様たち―ユゴー・デュマ・バルザック三大文豪大物くらべ』(文春文庫) 『60戯画―世紀末パリ人物図鑑』(中公文庫) 『文学的パリガイド』(NHK出版) 鹿島茂さんの本は、昔からちょくちょく読んでいます。古本愛好者必読の『愛書狂』『子供よ…

近頃よく聴く曲:ブルッフ弦楽四重奏曲、ピアノ五重奏曲

最近読んだ本シリーズの姉妹編。最近よく聴く曲。 ブルッフはこの4、5年よく聴いていますが、とくに最近は、この二つのCDをよく聴きます。 ブルッフは同じ時期の作曲家ブラームスと比べるとあまり有名でなく、演奏されるのもヴァイオリン協奏曲第1番がほと…

:『ゴシック名訳集成 暴夜(アラビア)幻想譚』(学研M文庫)

この本は千夜一夜物語の影響下に綴られた物語を集めています。18世紀初頭ガラン訳の登場をきっかけにした西洋での千夜一夜熱のもとで生まれた作品、また日本にはじめて紹介された明治の頃の古式ゆかしき翻訳です。 「ヴァテック」はむかし小川和夫訳で読んで衝…

:Philippe Delerm (フィリップ・ドレルム)“La premiere gorgee de biere et autres plaisirs minuscules(ビールの最初の一口ほかささやかな楽しみ)”

フィリップ・ドレルム『ビールの最初の一口ほかささやかな楽しみ』 翻訳が出ていない本を読もうとして手近にあったこの本を引っ張り出しました。先月神保町のO書店で300円で購入したものです。300円でたっぷり20日間楽しめました。 読解の例文として出てき…

:ボヌフォワの二つの詩集

最近読んだ本シリーズ。最近と言っても、この半年ぐらい机の片隅にずっと置いていて、時たま手に取ったり、ずっと一月以上もほったらかしにしたりという状態でしたが。 ボヌフォワは詩を読み出した頃「現代詩手帳」に平井照敏の評論が載っていて興味を覚えた…

:Amelie Nothomb(アメリー・ノートン) 『Stupeur et tremblements(呆然自失)』

アメリー・ノートン『呆然自失』 昨年から、覚束ないフランス語の本を長い時間かけて読んだりしていますが、何冊読んでも年のせいかなかなか読むスピードが上がりません。同じ単語ばかり何度も引いてわれながら情けなくなってきます。 今回読んだAmelie Noth…

:富士川英郎『西東詩話』

古本報告の合間をぬって、最近読んだ本から面白かったものを紹介しますのコーナーです。 富士川英郎『西東詩話〜日独文化交渉史への側面』 富士川英郎は私の敬愛する文学者の一人で、いつも物静かな語り口で、読書の楽しみを充分に味わわせてくれます。 この…

:マキシム・デュ・カン「文学的回想」(冨山房百科文庫)

お粗末な話ですが、なんとなくデュシャンと間違えて20世紀の人と思っていたら、19世紀真ん中の人だったんですね。ゴーチェやネルヴァルなど、ちょうどロマン派の時代の回想だったので、慌てて読みました。(今頃遅いという声もありますが) フロベールが中心…