最近読んだ本

『書物の王国11 分身』

東雅夫編『書物の王国11 分身』(国書刊行会 1999年) 今回は、国書刊行会の『書物の王国』の一冊。このシリーズは、テーマ別のアンソロジーで、前にもこのシリーズの『夢』を取りあげたとき書いたように、読んだことのある作品も多いですが、未読の中に佳篇…

分身テーマの短篇小説集二冊

マイケル・リチャードソン編・柴田元幸/菅原克也共訳『ダブル/ダブル』(白水社 1991年) 角川書店編『ドッペルゲンガー奇譚集―死を招く影』(角川ホラー文庫 1998年) 海外と日本の分身小説のアンソロジーを読みました。『ダブル/ダブル』のほうは、編集の…

犬飼公之『影の古代』

犬飼公之『影の古代』(桜楓社 1991年) 次は、日本の古代文学のなかで影という言葉がどう使われているかを通して、古代人の感性を考察した本。分身のテーマはそのうちの少しの部分にしか出てきませんが、全体として面白そうなので読んでみました。なじみの…

河合隼雄『影の現象学』

河合隼雄『影の現象学』(講談社学術文庫 2021年) この本も前々回読んだオットー・ランクと同じく、心理学者が書いた本。実際の患者の例も出てきますが、神話や伝説、物語など幅広い素材を用いながら、影について自由に論じています。章立てはありますが、…

クレマン・ロセ『現実とその分身』

クレマン・ロセ金井裕訳『現実とその分身―錯覚にかんする試論』(法政大学出版局 1989年) 今回は、分身についての哲学的考察。途中まで何とかついて行きましたが、後半は皆目分からなくなってしまいました。分身そのものについての記述は少ないというのが印…

オットー・ランク『分身 ドッペルゲンガー』

オットー・ランク有内嘉宏訳『分身 ドッペルゲンガー』(人文書院 1988年) これからしばらく分身や影についての本を読みます。分身テーマについては、学生時代に、改造社の世界大衆文學全集で、シヤミツソオの『影を賣る男の話』(淺野玄府訳)やエエウエル…

夢に関する最後の二冊

ミシェル・レリス細田直孝訳『夜なき夜、昼なき昼』(現代思潮社 1970年) 瀧口修造『三夢三話』(書肆山田 1980年) 長らく夢をテーマとした読書について書いてきましたが、このあたりでいったんけりを付けたいと思います。最後の二冊は、強いてまとまりを…

清岡卓行の夢に関する三冊

清岡卓行『夢を植える』(講談社 1976年) 清岡卓行『夢のソナチネ』(集英社 1981年) 清岡卓行『ふしぎな鏡の店』(思潮社 1989年) 『書物の王国2 夢』で、「帰途」を読んで面白かったのと、「幻想文学 特集:夢文学大全」で、東雅夫が、戦後作家の夢をテ…

島尾敏雄の二冊

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』(講談社文庫 1972年) 島尾敏雄『島へ―自選短篇集』(潮出版社 1972年) 「ユリイカ」の夢特集号で、清水徹が加賀乙彦との対談の中で、島尾敏雄の夢の物語を紹介していたり、「伝統と現代」の夢特集で、岡田啓とい…

内田百閒『冥途・旅順入城式』

内田百閒『冥途・旅順入城式』(新潮文庫 1943年) 「幻想文学46 夢文学大全」に収められていた藪下明博「夢のリアリティー」で、内田百閒の『冥途』が紹介されていて、面白そうだったので、読んでみました。『冥途・旅順入城式』は、学生の頃から、幻想小説…

ミッシェル・ジュヴェ『夢の城』

ミッシェル・ジュヴェ北浜邦夫訳『夢の城』(紀伊國屋書店 1997年) あまり読んだことのないタイプの小説です。18世紀のフランスの夢研究者を主人公に設定して、その試行錯誤を叙述するかたちで、夢の生理学的研究の今日の成果をほのめかしているという組立…

『書物の王国2 夢』

東雅夫編『書物の王国2 夢』(国書刊行会 1998年) 『書物の王国』シリーズは、新刊で出た当時は、知っている作品が半分ぐらい入っているので、買うのも何となく損をしたような気になり若干敬遠気味でしたが、この前、同シリーズの『架空の町』を読んで、知…

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」(新紀元社 2021年) 幻想系雑誌としてはいちばん新しい部類でしょうか。初めて読みます。こういう雑誌はずっと続いていって欲しいですね。ぶ厚いですが、活字が大きく読みやすいのはありがたい。昔の雑誌…

「幻想文学 特集:夢文学大全」

「幻想文学46 特集:夢文学大全」(アトリエOCTA 1996年) 文学系雑誌の夢特集続き。「幻想文学」は、準備号だった「金羊毛」を含め創刊号から10年ぐらい(36号まで)は毎号買っていました。当時は通読することはなく新刊展望と気に入った記事だけを読んでい…

文学系雑誌の夢特集二冊

「幻想と怪奇 特集:夢象の世界」(歳月社 1974年) 「早稲田文学 夢まぼろしの物語」(早稲田文学会 1986年) 文学系雑誌の夢特集に移ります。夢理論よりはこちらの方が私の気性に合っているのか、気楽に読めました。が、どれとは言いませんが、いくつかの…

『日本の名随筆24 夢』

埴谷雄高編『日本の名随筆24 夢』(作品社 1986年) 今回は、夢を題材にした随筆選。これまで読んできた本とは違い、学術臭が抜けて、気楽に読めるものが多くありました。37篇も集めるのにずいぶん苦労があったと思いますが、玉石混交というか、質はバラバラ…

「imago 総特集:夢」

河合隼雄責任編集「imago 総特集:夢」(青土社 1991年) 引き続き雑誌の夢特集。対談一つと29篇の論文からなり、読むのに結構時間がかかりました。半分以上が精神医学の立場からの夢についての論文が中心で、しかも臨床心理学者が多く、責任編集者の河合隼…

「ユリイカ 特集:夢」

種村季弘/由良君美/磯田光一ほか「ユリイカ 特集:夢」(青土社 1979年) 前回に引き続いて、雑誌の夢特集。錚々たるメンバーを集めています。評論とエッセイが12篇、対談1、コラム1、詩2篇で、評論は、文学、絵画の領域から夢を論じたものが中心となってい…

「伝統と現代 総特集:夢」

高田衛/遠丸立/笠原伸夫ほか「伝統と現代 総特集:夢―想像力の源泉と文化の祖型」(伝統と現代社 1973年) 大昔に買って大事に置いておいた本。いくつかの論文は読んだ形跡がありますがまったく覚えておりません。「伝統と現代」は他にも、関心のあるテーマ…

M・ポングラチュほか『夢の王国』

M・ポングラチュ/I・ザントナー種村季弘/池田香代子/岡部仁/土合文夫訳『夢の王国―夢解釈の四千年』(河出書房新社 1987年) 大部の本。三部に分かれ、第一部は、夢をどう考えたかについて古代から現代までの歴史的地域的概観、第二部は、夢に登場する事物の…

ボルヘス『夢の本』

J・L・ボルヘス堀内研二訳『夢の本』(河出文庫 2019年) 持っていたと思っていたが見当たらなかったので最近買った本。ボルヘスによる夢のアンソロジー。夢なので総じて短く、いちばん長いもので24頁、全部で113の話が収められています。さすがにボルヘスだ…

G.H.シューベルト『夢の象徴学』

G.H.シューベルト深田甫訳『夢の象徴学』(青銅社 1976年) 夢についての本を続けて読んでいると、これまでと重複するような記述を多く目にするようになりました。今回は少し時代をさかのぼって、1814年の著作。動物や昆虫の生態、人間の神経組織など幅広い…

カイヨワ『夢の現象学』

ロジェ・カイヨワ金井裕訳『夢の現象学』(思潮社 1986年) これも25年ほど前に一度読んだ本。カイヨワは学生時代に京都の関西日仏学館で講演を聞いたことがありました。その後、『妖精物語からSFへ』、『幻想のさなかにー幻想絵画試論』、『詩法』など、訳…

多田智満子『夢の神話学』

多田智満子『夢の神話学』(第三文明社 1989年) 新刊で出たときに読み、今回23年ぶりの再読。当時は、初めて聞くような話が多くて驚いたらしく、いろんなところに印をつけています。そうした話がこの本にあったことはすっかり忘れておりましたが、このとこ…

J・アラン・ホブソン『夢に迷う脳』

J・アラン・ホブソン池谷裕二監訳/池谷香訳『夢に迷う脳―夜ごと心はどこへ行く?』(朝日出版社 2007年) 夢の働きを脳の生理学的な探究から科学的に捉えようとした著作で、専門的なことは分かりませんが、かなり最新の知見を踏まえた新しい夢の位置づけがさ…

J・A・ハドフィールド『夢と悪夢』

J・A・ハドフィールド伊形洋/度会好一訳『夢と悪夢』(太陽社 1971年) また夢についての本。前回の『夢と死』に比べると、著者は幅広い知見を持ちバランスが取れていて、主張も明確です。また翻訳もこなれていて読みやすい。この本の主張をひとことで言えば…

M-L・フォン・フランツ『夢と死』

M-L・フォン・フランツ氏原寛訳『夢と死―死の間際に見る夢の分析』(人文書院 1989年) ユング派の精神分析学者が、死に関連した夢について書いた本。死ぬ前に見る夢の話が多くて気分が沈んでしまいました。全体の印象からいえば、かなり怪しげな本という感…

ビンスワンガー『夢と実存』ほか

ビンスワンガー荻野恒一訳『夢と実存』(みすず書房 1960年) ベルクソン宇波彰訳「夢」(『精神のエネルギー』〔第三文明社1998年〕所収) 『夢と実存』は、何とか最後まで読み通しましたが、序文というのは本来分かりやすい筈なのに、フーコーの序文がとて…

ハヴロック・エリス『夢の世界』

ハヴロック・エリス藤島昌平譯『夢の世界』(岩波文庫 1941年) 原著は1911年刊。学生の頃に買って積んでおいた本。旧字体で字が詰まっており、とくに割注のポイントが小さすぎて読みにくいが、文章自体はそれほど難しくなく、夢の事例が豊富で面白く読めま…

久米博『夢の解釈学』

久米博『夢の解釈学』(北斗出版 1982年) 夢についての理論書を読んでいきたいと思います。今回は、宗教学や神話学がご専門の著者のようですが、どちらかというと文学の領域からアプローチした本。古代人が夢に対して考えていたことから書き起こし、夢に関…