最近読んだ本
河合隼雄『明恵 夢を生きる』(講談社 2007年) 古代、中世の人びとの夢に関する本を読んできましたが、今回は、日本の中世の代表的な夢日記に関する本を読んでみました。著者はユング派精神分析の大家で、夢の専門家です。断定するのではなくじわじわと輪郭…
酒井紀美『夢語り・夢解きの中世』(朝日選書 2001年) 江口孝夫『夢と日本古典文学』(笠間書院 1974年) 今回も日本の古典文学、説話の中に取り上げられた夢に関連した本。『夢語り・夢解きの中世』は、著者自らも冒頭で、『古代人の夢』に感銘を受けそれ…
西郷信綱『古代人と夢』(平凡社 1993年) 歳を取ったせいか最近夢をよく見るようになりました。ほとんど毎日、とくに明け方の目の覚める前に、大量に見るので、これはボケの始まりかと心配しているところです。昔の職場の仲間とか大学時代の友人ら、亡くな…
多田智満子『川のほとりに』(書肆山田 1998年) 多田智満子『長い川のある國』(書肆山田 2000年) 多田智満子『封を切ると』(書誌山田 2004年) 多田智満子『遊星の人』(邑心文庫 2005年) 前回に続いて、多田智満子の俳句や短歌を含む、後期の詩集を読…
多田智満子『薔薇宇宙』(昭森社 1964年) 多田智満子『鏡の町あるいは眼の森』(昭森社 1968年) 多田智満子『贋の年代記』(山梨シルクセンター出版部 1971年) 『多田智満子詩集』(思潮社 1972年) 多田智満子『四面道』(思潮社 1975年) 多田智満子『…
『入沢康夫詩集』(思潮社 1992年) 入沢康夫『声なき木鼠の唄』(青土社 1971年) 入沢康夫『かつて座亜謙什と名乗った人への九連の散文詩』(青土社 1978年) 入沢康夫『牛の首のある三十の情景』(書肆山田 1979年) 異空間をテーマにした詩としては、「…
永井元章『逃亡用迷路』(ふらんす堂 1995年) 小林茂『幽界より』(書肆山田 2006年) 今はもう元気もなくなりつつありますが、以前は、古本屋や古本市で、名前を知らない著者の場合でも、タイトルに気を惹かれれば手に取って適当なページを読んでみて、少…
寺山修司『棺桶島を記述する試み』(サンリオ出版 1973年) 金井美恵子『春の画の館』(講談社文庫 1979年) 異界と奇想をテーマとした散文詩ということでまとめてみました。両作はテイストはまったく異なります。好悪で言えば、『棺桶島』が圧倒的に面白く…
高橋優子『冥界(ハデス)の泉』(沖積舎 1997年) 高橋優子『薄緑色幻想』(思潮社 2003年) 高橋優子『薔薇の合図(シーニュ)―Signe de la rose』(天使舎 2003年) 高橋優子はまったく知らない人でしたが、オークションで、『薔薇の合図(シーニュ)』が…
上田周二『死霊の憂鬱』(沖積舎 2000年) 上田周二『彷徨』(沖積舎 2009年) 前回、学生の頃に矢島輝夫に衝撃を受けたと書きましたが、上田周二も、『闇の扉』を学生時代に読んで、同様の衝撃を受けたことを覚えています。今回は、タイトルに惹かれて買い…
坂井信夫『影の年代記』(弓立社 1979年) 坂井信夫『レクイエム』(七月堂 1983年) 坂井信夫についてはまったく知りませんでしたが、4年ほど前、神戸の古本市で、『レクイエム』を手に取り、架空の町をテーマとした散文詩のようだったので、購入したのが始…
函 中 時里二郎『胚種譚』(湯川書房 1983年) 時里二郎『翅の伝記』(書肆山田 2003年) この人の詩集は入手が難しくて、この2冊しか読んでませんが、2冊に共通しているのは、『胚種譚』には北川健次という人の銅版画、『翅の伝記』には勝本みつるという人…
粕谷栄市『鄙唄』(書肆山田 2004年) 粕谷栄市『轉落』(思潮社 2004年) 粕谷栄市『遠い川』(思潮社 2010年) 古河文学館編『粒来哲蔵と粕谷栄市』(古河文学館 2006年) 前回に引き続き、粕谷栄市を読みました。これで、入手困難の最新作(と言っても201…
『粕谷栄市詩集』(思潮社 1976年) 『続・粕谷栄市詩集』(思潮社 2003年) 粕谷栄市『鏡と街』(思潮社 1992年) 粕谷栄市『化体』(思潮社 1999年) やはり異界が多く舞台となっている粕谷栄市の散文詩を2回に分けて読もうと思います。まず初回は、処女詩…
高柳誠『卵宇宙/水晶宮/博物誌』(湯川書房 1983年) 高柳誠『都市の肖像』(書肆山田 1988年) 高柳誠『塔』(書肆山田 1993年) 高柳誠『綾取り人』(湯川書房 1985年) 高柳誠/小林健二(装画)『星間の採譜術』(書肆山田 1997年) 高柳誠『夢々忘るる勿…
清岡卓行『萩原朔太郎「猫町」私論』(文藝春秋 1974年) 架空の町、あるいは幻覚の町を描いた小説である萩原朔太郎の「猫町」についての評論を読んでみました。「猫町」は、朔太郎の詩に熱中していた学生時代に読んで、惹きこまれた覚えがあります。 著者は…
君野隆久『ことばで織られた都市―近代の詩と詩人たち』(三元社 2008年) いくつかのテーマの異なった文章が収められていますが、そのなかで、タイトルにもなっている「ことばで織られた都市」と「水路の詩学」が、異界のテーマに関連するような気がして、読…
ジル・ラプージュ中村弓子/長谷泰/巌谷國士訳『ユートピアと文明―輝く都市・虚無の都市』(紀伊國屋書店 1988年) 結構大部な本。ユートピアを古代から現代にかけて通覧し、ユートピアの事例や関連した議論がたくさん盛り込まれていました。これもフランス独…
澤井繁男『ユートピアの憂鬱―カンパネッラ「太陽の都市」の成立』(海鳴社 1985年) アルカディア、黄金時代の次はユートピアに関する本を読んでみました。都市生活者が現実を忌避して肥沃の地に憧れたのがアルカディアとすると、ユートピアは都市そのものを…
ハリー・レヴィン若林節子訳『ルネッサンスにおける黄金時代の神話』(ありえす書房 1988年) ルネッサンス期に、黄金時代の神話がどのように受容されていたかを探究した本。前回の『牧歌』同様、分かりやすく、よくまとまっていて、かついろんな刺激的な議…
ピーター・V・マリネリ藤井治彦訳『牧歌』(研究社 1973年) しばらく西洋の理想郷についての本を読もうと思います。東洋の理想郷としては、桃源郷が文学や絵画の世界でひとつの系譜を形作っていることは、これまでも芳賀徹の著書などで見てきましたが、この…
細田あや子/渡辺和子編『異界の交錯 上巻』(LITHON 2006年) 今はなき天牛書店堺筋本店での購入。宗教史学研究所というところが中心となって、論集を継続的に発行しているようです。この巻は、「異界」について、荒井献、松村一男、熊田陽一郎ら重鎮から若…
田中仁彦『ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険』(中公新書 2004年) 読みやすい文章で、全体の骨子が明確、かついろんな物語が紹介されていたので、楽しく読めました。10年ほど前に、この本にも紹介されている『聖ブランダン航海譚』とか『沈め…
前田速夫『異界歴程』(晶文社 2003年) とにかく「異界」という言葉のついている本をどんどん読んでます。この本は一種の奇書で、日本各地を経巡りながら、民衆の中の怪しげな信仰、特別部落など、日本の暗部の歴史に光を当てようとしています。全8話あり、…
久野昭『死に別れる―日本人のための葬送論』(三省堂 1995年) 久野昭『異界の記憶―日本的たましいの原像を求めて』(三省堂 2004年) 久野昭の著書は、学生の頃に『魔術的観念論の研究』を読んで以来、何冊か買い集めましたが、難しそうなので読まずに積ん…
赤祖父哲二『異界往還―文学・宗教・科学をつなぐもの』(夢譚書房 1998年) 赤祖父哲二の本は、これまで『イメージ・ウォッチング』と『日本のメタファー』の二冊を読んでいて、二冊とも◎の評価がついてますが、25年以上も前の話で覚えておりません。しかも…
井口正俊/岩尾龍太郎編『異世界・ユートピア・物語』(九州大学出版会 2001年) 西南学院大学で行なわれた同名の公開講座と福岡県リカレント講座の講義をもとに編集された書物で、9名の研究者がいろんな視点から論文を書いています。巻頭の2論文は私には難し…
恋田知子『異界へいざなう女―絵巻・奈良絵本をひもとく』(平凡社 2017年) 諸星大二郎『異界録―諸怪志異(一)』(双葉社 2007年) 諸星大二郎『壺中天―諸怪志異(二)』(双葉社 2007年) 変な取り合わせになりましたが、たまたま読んだ時期が近いだけの話…
松田修『日本逃亡幻譚―補陀落世界への旅』(朝日新聞社 1978年) 日本における異界概念の種々相を追った書物。松田修は、大学時代に集中講義で、『雨月物語』と『好色一代男』を2年続けて受講したことがありました。まともに出席した数少ない授業のうちのひ…
安永壽延『日本のユートピア思想』(法政大学出版局 1971年) 前回に引き続き、日本のユートピアに関連した本。前回が羅列型とすれば、今回は一転、論理型です。60年代特有の鼻息の荒さがあり、和辻哲郎、折口信夫など名だたる先人を一刀両断にしています。…