:松本古本ツアー決行

 昨年、金沢古本ツアーに行った東京の友人とふたたび松本の古本屋をまわりました。松本は落ち着いた大人の雰囲気の町で、とても気に入りました。洒落た看板のかかっているお店が目につき、飲み屋もオーセンティックなバーが多くありました。少し中心から離れた松本民芸館は穏やかなたたずまいで、丸山太郎の魅力的な蒐集品が楽しめました。

 目的の古本屋は狭いゾーンの中に集まっていて、七軒効率よく行くことができました。地方の古本屋によくある、文庫は岩波文庫しか置いていず、全般的に高値といった店が二軒あり、そこでは一冊も買えませんでした。そのうちの一店で、友人が表の「全品50%引き」という貼り紙を見て、500円の本を買おうとしたところ、1000円以下はそのままと言われて、泣く泣く500円を支払っておりました。(彼はもう一店の高い値の店で、水島爾保布『新東京繁盛記』を3千なにがしで買ってその不満もどこへやら。)

 まず一軒目のM堂、珍しい本黒っぽい本がたくさん並んでいました。そのなかから探していた
矢野峰人『半面像』(大木書房、昭和18年9月、1000円)
を購入。他二冊あまり見たことのない本だったので、ついでに。
奥野他見男『諷刺諧謔 蛙の盆踊り』(東京楽譜出版社、昭和22年2月、500円)
J・カザノヴァ高村富雄訳『カザノヴァ行状記』(近代社、昭和31年6月、500円)
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 次のA書房は、真ん中の棚に、自然科学と人文学の本が渾然と並んでいて、不思議な何か創造的な印象。そこで、
岡田英弘他『世界の中の日本文字―その優れたシステムとはたらき』(弘文堂、昭和55年6月、525円)
島岡茂『ロマンティクの歴史』(紀伊國屋新書、75年12月、315円)

 看板の出ていないS舎では、ご主人が「鼻の横の黒斑がなければ美人だのに」とおっしゃる牝の猫が足元にじゃれ付いてきて、気に入られたのかも。お昼にそばを食べたときに飲んだ日本酒の酔いに乗って、大量に買いました。
出口裕弘『綺譚庭園―澁澤龍彦のいる風景』(河出書房新社、95年11月、1000円)
橋本治編『日本幻想文学集成 芥川龍之介―裏畠』(国書刊行会、94年9月、800円)
飯塚信雄『ロココへの道―西洋生活文化史点描』(文化出版局、昭和59年2月、1000円)
マルセル・プルウスト齋藤磯雄/近藤光治/竹内道之助譯『愉しみと日日』(三笠書房、53年1月、1000円)
洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮社、昭和53年12月、1000円)
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 市役所の近くで、6月上旬に開店したばかりという古本バーS堂(「古本ツアー・イン・ジャパン」というブログに教えられました)では、民俗学、フィールドワーク、ノンフィクション系の書籍が統一されて並べられていました。店頭の50円均一で、
安藤一郎/河野一郎訳『サンドバーク詩集』(新潮文庫、昭和52年6月、50円)
MICHELIN『Corse』(Michelin、76年、50円)


 オークションでは、珍しいことが起りました。山宮允の詩論集と著作集がまとめて出ていたので、『歌集』を除いて入札したら、競合が現われずすんなりと落札できたまではよかったですが、送られてきたなかに『文集』がなく、代わりに『歌集』が入っていたのです。すぐ出品者に通知し『歌集』は着払いで返送する旨を打診すると、そのまま手元で処分してくださいとのこと。たしかに送料を負担するぐらいなら売れない本を引き取ってもしようがないということなんでしょう。というわけで、すべて入手することができました。
山宮允『詩論集 詩岳に登る』(大雄閣、大正14年4月、1200円)
山宮允著作集第一巻『虚庵歌集』(山宮允著作選集刊行会、昭和39年2月、0円)
山宮允著作集第二巻『虚庵詩集』(山宮允著作選集刊行会、昭和40年9月、1000円)
山宮允著作集第三巻『虚庵文集』(山宮允著作選集刊行会、昭和41年10月、1000円)
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 ほかに長年探していた下記を格安で購入。しかも署名つき。
藤村壮『鳥のいる風景』(海の会、71年11月、100円)
同じ出品者K書房より、平川祐弘の若い頃の著作であまり見かけないもの。すでに壮大なスケールの視野を持っています。
平川祐弘『藝術にあらわれたヴェネチア』(内田老鶴圃、昭和37年10月、710円)
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