2012-01-01から1年間の記事一覧

:柳宗玄『虚空散華』『黒い聖母』の二冊

/// 柳宗玄『虚空散華―生命のかたち』(福武書店 1986年) 柳宗玄『黒い聖母』(福武書店 1986年) この二冊は、『虚空散華』「あとがき」で記しているように、老齢に至った著者が「新しい時が来ると、若者は一年を得、老人は一年を失う(古代中国の言葉)/p27…

:PIERRE LOTI『LES DÉSENCHANTÉES』(ピエール・ロティ『魔法を解かれた女たち』)

PIERRE LOTI『LES DÉSENCHANTÉES』(CALMANN-LÉVY 1970年) ロティのイスタンブールを舞台にした小説は『Azyadé(アジアデ)』『東洋の幻影』に続きこれで三作読んだことになります。 /// この三作の関係は、『Azyadé』がロティの処女作で、トルコ女性ハジー…

:柳宗玄(やなぎむねもと)の本二冊

/// 柳宗玄『秘境のキリスト教美術』(岩波新書 1967年) 柳宗玄『かたちとの対話』(岩波書店 1992年) ふとした気まぐれで、『かたちとの対話』を読み始めると、とんでもなく面白い。引き続いて『秘境のキリスト教美術』を取り出して読んでみると、これが…

:芳賀徹・平川祐弘・亀井俊介・小堀桂一郎編講座比較文学2『日本文学における近代』

芳賀徹・平川祐弘・亀井俊介・小堀桂一郎編講座比較文学2『日本文学における近代』(東京大学出版会 1973年) この本は東京大学教養学部の比較文学比較文化出身の先生を中心とした論文集で、八冊のシリーズの二巻目です。森亮の翻訳詩論「『於母影』から『…

:大阪の古本屋めぐり報告

下鴨神社の古本市へ行った翌日、東京から来ていた古本仲間一人と大阪の古本屋めぐり。まず天神橋筋商店街から。早く着きすぎてT書店店頭で開店時間前から待機。 三木原浩史『シャンソンはそよ風のように―フランス紀行・文化断想』(彩流社、96年2月、700円)→…

:平岡敏夫『夕暮れの文学』

平岡敏夫『夕暮れの文学』(おうふう 2008年) 「夕暮れ」を切り口に日本の近代文学について論じた珍しい本です。この本の前に『〈夕暮れ〉の文学史』を書いていて、その本の補足あるいは事後譚として書かれているようですが、残念ながらその本は読んでおり…

:下鴨納涼古本まつり

今年も、古本仲間と下鴨神社の古本まつり初日に行ってまいりました。 午前中はなんとか曇天ながら雨は降らず、お目当ての本屋の均一本を中心に回りました。 まずK文庫の300円均一棚で、比較的新しいきれいな本を3冊ゲット。 松浦寿輝『半島』(文藝春秋、04…

:多田智満子『神々の指紋―ギリシア神話逍遥』

多田智満子『神々の指紋―ギリシア神話逍遥』(筑摩書房 1989年) 先日から引き続いて、多田智満子さんのエッセイを読んでみました。これで多田智満子のエッセイの単行本は『字遊自在ことばめくり』を除いて全部読んだことになります(の筈)。『字遊自在ことば…

:ライン河の伝説に関する本

/// ←函←中ユゴー榊原晃三編訳『ライン河幻想紀行』(岩波文庫 1985年) 松宮順『ラインの傳説』(ソフィア書房 1962年) ヴィクトル・ユゴー根岸純訳『美男と美女の伝説』(パロル舎 1996年) 次にどの本を読むかを選ぶのが楽しい時間でもあり、また思い悩…

:MAURICE RENARD 『L’INVITATION À LA PEUR』(モーリス・ルナール『恐怖への招待』)

MAURICE RENARD 『L’INVITATION À LA PEUR』(TALLANDIER 1958年) この本も生田耕作旧蔵書。 ルナールの本は昨年の『LE VOYAGE IMMOBILE SUIVI D’AUTRES HISTOIRES SINGULIÈRES』(2011年8月11日記事参照)に続いて2冊目。 このルナールという人はなかなか…

:日本へ帰って古本熱冷めたか

パリ古本報告に熱中のあまり、日本での古本購入の報告が滞っておりました。 先月半ばに、オークションで一人の出品者から下記の本をまとめて購入。 栗田勇『フランス近代詩入門―附フランス詩法概要』(錬金社、昭和33年3月、250円)→これはあまり見たことの…

:多田智満子の花と樹に関する本二冊

/// 多田智満子『花の神話学』(白水社 1984年) 多田智満子『森の世界爺(せかいや)―樹へのまなざし』(人文書院 1997年) 多田智満子さんの詩はもちろん好きですが、散文についても『鏡のテオーリア』『魂の形について』以来、その暗喩に満ちた様々な形象が…

:辰野隆『ふらんす人』

辰野隆『ふらんす人』(講談社文芸文庫 1991年) この本は大きく二つの要素に分けることができます。ひとつは肩の凝らないエッセイ、もうひとつは本職にかかわる学術論文風の文章。もちろん前者に軍配は上がります。辰野隆の真骨頂は軽い味わいのエッセイに…

:アンリ・ド・レニエ志村信英訳『碧玉の杖』

アンリ・ド・レニエ志村信英訳『碧玉の杖』(国書刊行会 1984年) 最近読んだと言っても、読み終わってからもう一か月以上になります。おぼろげな記憶を頼りに。 アンリ・ド・レニエはずっと昔(40年以上にもなるか)に、『生きている過去』『燃え上がる青春』…

:パリ古本ツアー報告 第四弾

長きにわたったこのパリ古本ツアー報告も、いよいよ最後となりました。 パリ古本ツアー六日目と七日目は、中心部から少し離れた古本屋を、東回りと西回りで二日間費やして回りました。鹿島茂さんがどこかで書いていたように、パリの番地はとても分かり易く、…

:パリ古本ツアー報告 第三弾

パリ古本ツアー三日目は、日曜日で古本屋は全部閉まっているので、小雨のなかClignancourtクリニャンクール蚤の市へ。 最初は入口右手のヴェルネゾン地区に入りましたが、ここは狭い道が複雑に入り組んで迷路のような不思議な空間でした。何度も探し歩いて、…

:パリ古本ツアー報告 第二弾

航空便と手で持ち帰った本を整理し、報告をしようとしている最中に、なぜか船便がもう届いてしまいました。6月29日に送ったばかりなのに、10日ぐらいで着くものでしょうか。サービスで航空便にしていただけたのか。 それはさておき、案の定、頭陀袋のなかの…

:パリ古本ツアー報告 第一弾

しばらくお休みをいただいておりましたが、また再開します。 6月下旬から7月上旬にかけて、パリ古本ツアーを決行しました。11日間の滞在で、古本市のべ3か所、蚤の市2か所、古書店55軒、とセーヌ河岸古本屋台をまわりました。購入古本は105冊、新刊17冊、総…

:J・P・クレスペル『モンパルナス讃歌』、矢島翠『ラ・ジャポネーズ―キク・ヤマタの一生』の二冊

/// J・P・クレスペル佐藤昌訳『モンパルナス讃歌―エコル・ド・パリの群像1905-1930』(美術公論社 1977年) 矢島翠『ラ・ジャポネーズ―キク・ヤマタの一生』(ちくま文庫 1990年) 引き続きパリに関連した本を読んでいます。この二冊もお互い直接関係はあ…

:ピエール・シャンピオン有田英也訳『わが懐かしき街』

ピエール・シャンピオン有田英也訳『わが懐かしき街』(図書出版社 1992年) パリ本を集中的に読んでいます。先に読んだドオデエ『巴里左岸』と同じようなトーン、やはりフランス風雄弁冗舌体で書かれています。5、6区あたりの通りの固有名詞が続々と登場し…

:またもW買いで愕然

東京の古本仲間が所用で関西に来ているので、天神橋筋商店街界隈の古本屋を案内しましたが、その際にT書店で購入した下記の本がまたW買いとなってしまいました。以前の本とタイトルも装幀もまったく違っているのが決定的ですが、その本を読んでいなかった…

:MAURICE PONS『ROSA』(モーリス・ポンス『ローザ』)

MAURICE PONS『ROSA』(DENOËL 1967年) 『la maison des brasseurs(ビール醸造業館)』(4/24記事参照)『マドモワゼルB』(4/28記事参照)に引き続いて、モーリス・ポンスを読んでみました。これもなかなか面白い小説でした。 途中から私にしてはかなり速…

:パリに関する本二冊

/// レオン・ドオデエ堀田周一訳『巴里左岸』(牧野書店 1941年) ルネ・ドゥ・ベルヴァル矢島翠編訳『パリ1930年代―詩人の回想』(岩波新書 1981年) この二冊に共通するのは、パリを舞台にした回顧録というところだけで、回想している内容も文章のトーンも…

:高橋邦太郎のパリ本二冊

/// 高橋邦太郎『パリのカフェテラスから』(柴田書店 1976年) 高橋邦太郎『私のパリ案内』(主婦の友社 1977年) しばらくはパリについての本を読んでいこうと思います。まずは高橋邦太郎の本から。 高橋邦太郎は、『パリのどん底』などいくつかの翻訳本を…

:久しぶりに神保町

今週木、金と久しぶりに東京へ出て行きました。木曜日は、西洋美術館のユベール・ロベール展、ピラネージ展と友人の病気見舞い、夜は友人との飲み会で放歌高吟し、金曜日は二日酔いでフラフラのなか、古書会館の趣味の古書展と神保町古本屋めぐり、のハード…

:Marcel Brion『Villa des Hasards』(マルセル・ブリヨン『偶然荘』)

/// Marcel Brion『Villa des Hasards』(Albin Michel 1984年) ブリヨンの文章はいつも遠くを夢見るような、ゆっくりとした口調で語られ、劇場や、公園、迷路、古い建物、仮装舞踏会、音楽などお決まりの素材が出てきて、またブリヨンを読んでいるんだなとい…

:古本本二冊

///紀田順一郎『私の神保町』(晶文社 2004年) 林哲夫『古本スケッチ帳』(青弓社 2002年) 四天王寺、京都勧業館と古本市が続いたこともあり、気分を高めるべく古本に関する本を二冊続けて読みました。この二冊は著者の世代も離れていて、大御所対俊英とい…

:小松伸六『ミュンヘン物語』(文藝春秋 1984年)

先日読んだミュンヘン本三冊に続いて読んでみました。正直、読後感はよくありません。本人も「あとがき」で認めているように、雑文の寄せ集めの印象です。孫をはじめ家族の自慢話など脱線に次ぐ脱線、日本女性のセックスが横に割れていると信じているドイツ…

:京都市勧業館春の大古書即売会ほか

前回予告どおり、京都勧業館古書市の報告です。 初日に出かけましたが、今年はテレビ局の取材は見当たりませんでしたし、心なしか人出も少なかったように思います。開場時の混雑を避けて10時15分ごろ到着、古本仲間で集まったのは一名のみ。昨年と同じく通り…

:四天王寺春の大古本祭りほか

関西の古本仲間と毎年集まるのが恒例となっている四天王寺の古本祭りに、今年もみんな集まりました。 二日目ということもあってか、あまり点数は買えませんでしたが。 薗田香勳『東洋的詩人としてのゲーテ』(増進堂、昭和23年9月、100円)→百円均一コーナー …