最近読んだ本

西沢文隆『庭園論Ⅰ』

西沢文隆『西沢文隆小論集2 庭園論Ⅰ―人と庭と建築の間』(相模書房 1975年) 庭についての本の続き。西洋から日本の庭の方に移行していきます。この本は、庭と建築の関係を空間の視点から論じているのが特徴で、西洋の空間にも目を配りつつ、日本の庭につい…

『庭園の詩学』

チャールズ・W・ムーア/ウィリアム・J・ミッチェル/ウィリアム・ターンブル・ジュニア有岡孝訳『庭園の詩学』(鹿島出版会 1995年) この本には、これまで読んだ庭園の本とは違うテイストがありました。タイトルどおり、詩的な着眼点がすばらしいこと、広…

岡崎文彬の二冊

岡崎文彬『ヨーロッパの名園』(朝日新聞社 1973年) 岡崎文彬『名園のはなし』(同朋舎出版 1985年) 引き続き岡崎文彬。前回の『ヨーロッパの造園』が概説とすれば、この二冊は、著者のお気に入りの庭園を個別に紹介した本。『名園のはなし』のなかで、「…

岡崎文彬『ヨーロッパの造園』

岡崎文彬『ヨーロッパの造園』(鹿島出版会 1975年) いつの頃からか、塔や聖堂、墓地、桃源郷などとともに、庭園に興味が出て、少しずつ古本を買い集めてきました。岡崎文彬の本が未読のまま3冊ありますので、少しずつ読んでいきます。先日読んだ独文・美学…

鼓常良『西洋の庭園』

鼓常良『西洋の庭園』(創元社 1961年) 針ヶ谷鐘吉、岡崎文彬らと並んで、日本人が西洋庭園のことを書いたかなり初期の書物です。 あとがきで、庭園の写真を集めるのに、ヨーロッパに留学している人の手を煩わせて、わざわざ撮影に行ってもらったり、現地の…

庭についての二冊

梅津忠雄『愛の庭―キリスト教美術探究』(日本基督教団出版局 1981年) ジャック・ブノワ=メシャン河野鶴代/横山正訳『人間の庭』(思索社 1985年) 庭という言葉がタイトルにある本を適当に選んだら、かなり色合いの異なる本が二冊並んでしまいました。『…

ジャン・ドリュモー『地上の楽園』

ジャン・ドリュモー西澤文昭/小野潮訳『楽園の歴史① 地上の楽園』(新評論 2000年) 前回に引き続き楽園についての本。これは楽園がどう誕生し、どう考えられてきたかを文献に基づいて歴史的に展望した書物です。全体の構成もしっかりしていて、この本を一冊…

マーリオ・ヤコービ『楽園願望』

マーリオ・ヤコービ松代洋一訳『楽園願望』(紀伊國屋書店 1988年) 今回と次回は、楽園についての本を取りあげます。まず、楽園願望をユング派精神分析の立場から解説したこの本から。歴史、文学、文化人類学の知見も交えながら、人間の本性を深く掘り下げ…

雑誌「is 特集:庭園」

「is 特集:庭園」(ポーラ文化研究所 1984年) 「is」は何冊か所持しております。執筆者に私好みの人が多く、また毎回取り上げられているテーマも面白そうですが、読んでおりませんでした。よく考えてみると、昔は忙しかったせいか雑誌はパラパラ見をするぐ…

「ユリイカ 特集:空中庭園」

「ユリイカ 特集:空中庭園」(青土社 1996年) 建築のテーマからの流れで、これからしばらく庭についての本を読みたいと思います。まず建築と庭の両要素を兼ね備えた空中庭園から。というのはバビロンにあったという空中庭園は幾重にも層をなした露壇に土を…

建築に関する本二冊

函 中 植田実『真夜中の家―絵本空間論』(住まいの図書館出版局 1989年) 澁澤龍彦『城―夢想と現実のモニュメント』(白水社 1981年) 異質な二冊ですが、建築関連で同時期に読んだので、一緒に取りあげました。『真夜中の家』は先日読んだ『真夜中の庭』の…

幻想の建築に関する二冊

坂崎乙郎『幻想の建築』(鹿島出版会 1969年) 「ユリイカ 特集:幻想の建築―〈空間〉と文学」(青土社 1983年) 「幻想の建築」という題のある本を二冊読んでみました。片方は、建築に関連した幻想美術について、塔、回廊、室内、庭園、牢獄、宮殿、大伽藍…

ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』

ウィル・ワイルズ茂木健訳『時間のないホテル』(東京創元社 2017年) タイトルと表紙の絵に惹かれて購入した本。次元SFの一種ですが建築幻想小説のジャンルに入るものと思います。「あとがき」によると、著者は建築やデザイン畑のノンフィクション・ライタ…

高層ビル都市が舞台の小説二作品

ヤン・ヴァイス深見弾訳『迷宮1000』(創元推理文庫 1987年) JAN WEISS『la maison aux mille étages―L’humanité prise au piège(1000階の家―罠にかかった人類)』(MARABOUT 1967年) テア・フォン・ハルボウ秦豊吉譯『メトロポリス』(改造社 1928年) …

建物に関連した幻想文学についての二冊

「幻想文学48 特集:建築幻想文学館」(アトリエOCTA 1996年) 植田実『真夜中の庭―物語にひそむ建築』(みすず書房 2011年) 建築の本の続きですが、しばらく物語の世界に入って行きたいと思います。その道案内となる本を二冊読みました。「幻想文学48」は…

建築に関する本二冊

上田篤『日本人の心と建築の歴史』(鹿島出版会 2006年) 岡野忠幸『建築古事記』(東京美術 1973年) 先日読んだ李家正文の『異国思想の伝来と日本の宗教』のなかにあった神社など日本の建物についての記述が面白く興味が湧いたので、日本建築に関連した本…

李家正文『古代東アジアに遡る』

李家正文『古代東アジアに遡る』(泰流社 1987年) 引き続き李家正文を読みました。前に読んだ『史伝開眼』と同じく、いくつかのテーマを並列に論じたもので、古代東アジアで腰帯にぶらさげていたもの、仏具が金色な訳、異国の花嫁、去勢された男性の実態、…

李家正文の本二冊

李家正文『異国思想の伝来と日本の宗教』(泰流社 1988年) 李家正文『史伝開眼―東アジアのカーテンを開く』(泰流社 1993年) 道教の日本への影響に関連して、本棚にあった李家正文の本を二冊引っ張り出してみました。『異国思想の伝来と日本の宗教』のほう…

福永光司『「馬」の文化と「船」の文化』

福永光司『「馬」の文化と「船」の文化―古代日本と中国文化』(人文書院 1996年) 前回に続いて福永光司の本。中国の北方文化と江南文化の比較、老荘思想、徐福伝説、道教の様々なシンボル、八幡大神、中国歴代皇帝と道教、常世の信仰、墓と廟など、さまざま…

福永光司『道教と古代日本』

福永光司『道教と古代日本』(人文書院 1987年) このところ読んだ『数の文化史を歩く』や『日本史を彩る道教の謎』によく引用されていた本。肝心な説はだいたい読んだことのある話が多かったので、読む順序が逆だったと反省しております。それと、あちこち…

高橋徹/千田稔『日本史を彩る道教の謎』

高橋徹/千田稔『日本史を彩る道教の謎』(日本文芸社 1992年) 先日読んだ田坂昻『数の文化史を歩く』で、日本の古代に道教の影響が色濃くあるという話を読んで興味が湧いたので、ちょうどうまい具合に本棚にあったこの本を引っ張り出してきました。なぜか昨…

吉山浩司『数はどのようにして創られたか』

吉山浩司『数はどのようにして創られたか―中国古代史探究の旅』(私家版 1997年) 昨年、浜松の古本屋で100円で買った本。私家版で、ネットで検索しても著者がどんな方がよく分かりません。たぶん、定年したサラリーマンか歴史の先生でしょう。小説の体裁を…

田坂昻『数の文化史を歩く』

田坂昻『数の文化史を歩く―日本から古代オリエント世界への旅』(風濤社 1993年) 数についての本の続き。久しぶりにわくわくする読書の楽しみがありました。何に惹きつけられたか考えてみると、古代の宇宙観・世界観を日本、中国、狭義のオリエント、西洋に…

郡司正勝『和数考』

郡司正勝『和数考』(白水社 1997年) 宮崎興二の数尽くしのような記述が面白かったので、数に関する本を本棚から引っ張り出してきました。20年ほど前に一度読んだことのある本ですが、まったく忘れているので再読しました。20年前の読書ノートでは、「博覧…

森豊『聖なる円光』

森豊『聖なる円光』(六興出版 1975年) 形についていろいろ読んできましたが、この本でいったん終えます。今回は、円が象徴する図像として、聖像の頭部や背後を飾る円光を取りあげた本です。日本に仏教が渡来してからの光背の形がどのように移っていったか…

篠田知和基『日本文化の基本形〇△□』

篠田知和基『日本文化の基本形〇△□』(勉誠出版 2007年) 篠田知和基の形についての本は、以前、『ヨーロッパの形―螺旋の文化史』(2011年7月7日記事参照)を読んで以来。その本と同じく、いろんな例証が次から次へとくり出されてきますが、違う例があるよう…

宮崎興二のかたちに関する本二冊

宮崎興二『プラトンと五重塔―かたちから見た日本文化史』(人文書院 1987年) 宮崎興二『なぜ夢殿は八角形か―数にこだわる日本史の謎』(祥伝社 1995年) 『プラトンと五重塔』を先に読みました。ずいぶん前にタイトルに惹かれて買っていた本。先日読んだ「…

杉浦康平『かたち誕生』

杉浦康平『かたち誕生』(日本放送出版協会 1996年) 今回は、ブックデザイナーによる「かたち」論です。NHK教育テレビで放送された「人間大学」というシリーズのテキスト。こんな放送があったのは知りませんでした。ブックデザイナーとしての著者ならではの…

高木隆司『「かたち」の研究』

高木隆司『「かたち」の研究』(ダイヤモンド社 1980年) 今回は、形を物理から考えるという本です。ふだん理系の本を読むことのない私ですが、この本は、うたい文句に、「日常生活の言葉で物理学を語る、美術系や文科系の学生のための数式のない教科書をつ…

「形の文化誌〔4〕―シンボルの物語」

形の文化会編「形の文化誌〔4〕―シンボルの物語」(工作舎 1996年) 「かたち」に関する本を続けて読んでいます。今回は不思議な雑誌を読みました。理系と文系が入り交じった、専門の異なる諸氏によるさまざまな味わいの論文やエッセイが隣り合って並んでい…