2023-01-01から1年間の記事一覧

夢に関する最後の二冊

ミシェル・レリス細田直孝訳『夜なき夜、昼なき昼』(現代思潮社 1970年) 瀧口修造『三夢三話』(書肆山田 1980年) 長らく夢をテーマとした読書について書いてきましたが、このあたりでいったんけりを付けたいと思います。最後の二冊は、強いてまとまりを…

清岡卓行の夢に関する三冊

清岡卓行『夢を植える』(講談社 1976年) 清岡卓行『夢のソナチネ』(集英社 1981年) 清岡卓行『ふしぎな鏡の店』(思潮社 1989年) 『書物の王国2 夢』で、「帰途」を読んで面白かったのと、「幻想文学 特集:夢文学大全」で、東雅夫が、戦後作家の夢をテ…

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(フレデリック・トリスタン『蠅たちの王』)

Frédérick Tristan『Le dieu des mouches』(CHRISTIAN BOURGOIS 1974年) 引き続きフレデリック・トリスタンを読んでみました。10年ほど前、パリのLibrairie Henri Vignesという古本屋で1ユーロで購入した本。手紙文が少し挿まれるだけで、あとは全篇日誌の…

島尾敏雄の二冊

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』(講談社文庫 1972年) 島尾敏雄『島へ―自選短篇集』(潮出版社 1972年) 「ユリイカ」の夢特集号で、清水徹が加賀乙彦との対談の中で、島尾敏雄の夢の物語を紹介していたり、「伝統と現代」の夢特集で、岡田啓とい…

内田百閒『冥途・旅順入城式』

内田百閒『冥途・旅順入城式』(新潮文庫 1943年) 「幻想文学46 夢文学大全」に収められていた藪下明博「夢のリアリティー」で、内田百閒の『冥途』が紹介されていて、面白そうだったので、読んでみました。『冥途・旅順入城式』は、学生の頃から、幻想小説…

久しぶりに古本屋で購入

先月、大学時代からの友人が亡くなりました。卒業後も年1~2回合宿と称して集まり、泳いだり麻雀をしたりして遊んでおりましたが、当初13人いた仲間も8人となりました。一人また一人と減っていくのは寂しい限りです。とうとう関西の仲間だけでは麻雀もできな…

ミッシェル・ジュヴェ『夢の城』

ミッシェル・ジュヴェ北浜邦夫訳『夢の城』(紀伊國屋書店 1997年) あまり読んだことのないタイプの小説です。18世紀のフランスの夢研究者を主人公に設定して、その試行錯誤を叙述するかたちで、夢の生理学的研究の今日の成果をほのめかしているという組立…

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(フレデリック・トリスタン『名無し男の真面目で滑稽な物語』)

Frédérick Tristan『HISTOIRE SÉRIEUSE ET DROLATIQUE DE L’HOMME SANS NOM』(Balland 1980年) フレデリック・トリスタンを読むのは、これで三冊目。これまでの二冊は長篇小説で、エピソードが織り込まれながらも全体を統一したストーリーがありましたが、…

『書物の王国2 夢』

東雅夫編『書物の王国2 夢』(国書刊行会 1998年) 『書物の王国』シリーズは、新刊で出た当時は、知っている作品が半分ぐらい入っているので、買うのも何となく損をしたような気になり若干敬遠気味でしたが、この前、同シリーズの『架空の町』を読んで、知…

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」

「幻想と怪奇6 夢境彷徨―種村季弘と夢想の文書館」(新紀元社 2021年) 幻想系雑誌としてはいちばん新しい部類でしょうか。初めて読みます。こういう雑誌はずっと続いていって欲しいですね。ぶ厚いですが、活字が大きく読みやすいのはありがたい。昔の雑誌…

「幻想文学 特集:夢文学大全」

「幻想文学46 特集:夢文学大全」(アトリエOCTA 1996年) 文学系雑誌の夢特集続き。「幻想文学」は、準備号だった「金羊毛」を含め創刊号から10年ぐらい(36号まで)は毎号買っていました。当時は通読することはなく新刊展望と気に入った記事だけを読んでい…

文学系雑誌の夢特集二冊

「幻想と怪奇 特集:夢象の世界」(歳月社 1974年) 「早稲田文学 夢まぼろしの物語」(早稲田文学会 1986年) 文学系雑誌の夢特集に移ります。夢理論よりはこちらの方が私の気性に合っているのか、気楽に読めました。が、どれとは言いませんが、いくつかの…

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(フレデリック・トリスタン『バルタザール・コベールの英雄的苦難』)

Frédérick TRISTAN『Les tribulations héroïques de Balthasar Kober』(Fayard 1999年) 昨年読んだ『Dieu, l’Univers et madame Berthe(神と宇宙とベルト夫人)』があまりにも衝撃的だったので(10月10日記事参照)、M・シュネデール『フランス幻想文学史…

『日本の名随筆24 夢』

埴谷雄高編『日本の名随筆24 夢』(作品社 1986年) 今回は、夢を題材にした随筆選。これまで読んできた本とは違い、学術臭が抜けて、気楽に読めるものが多くありました。37篇も集めるのにずいぶん苦労があったと思いますが、玉石混交というか、質はバラバラ…

「imago 総特集:夢」

河合隼雄責任編集「imago 総特集:夢」(青土社 1991年) 引き続き雑誌の夢特集。対談一つと29篇の論文からなり、読むのに結構時間がかかりました。半分以上が精神医学の立場からの夢についての論文が中心で、しかも臨床心理学者が多く、責任編集者の河合隼…

四天王寺の春の大古本祭りほか

5月初めに、会期半ばの四天王寺春の大古本祭りに行ってきました。久しぶりの古書市のせいか、思わず知らず買い込んでしまいました。 まず100円均一コーナーに行くも収穫なし。次に全棚300円均一の瀬戸内アーカムハウスへ行く。そこで下記3冊。 ジュール・ル…

「ユリイカ 特集:夢」

種村季弘/由良君美/磯田光一ほか「ユリイカ 特集:夢」(青土社 1979年) 前回に引き続いて、雑誌の夢特集。錚々たるメンバーを集めています。評論とエッセイが12篇、対談1、コラム1、詩2篇で、評論は、文学、絵画の領域から夢を論じたものが中心となってい…

「伝統と現代 総特集:夢」

高田衛/遠丸立/笠原伸夫ほか「伝統と現代 総特集:夢―想像力の源泉と文化の祖型」(伝統と現代社 1973年) 大昔に買って大事に置いておいた本。いくつかの論文は読んだ形跡がありますがまったく覚えておりません。「伝統と現代」は他にも、関心のあるテーマ…

NOËL DEVAULX『LE PRESSOIR MYSTIQUE』(ノエル・ドォヴォー『神秘の圧搾機』)

NOËL DEVAULX『LE PRESSOIR MYSTIQUE』(GALLIMARD 1982年) 本書は、1937年から45年に書かれた作品を集めて1948年に出版されています。前回読んだ『l’auberge Parpillon(パルピヨン館)』は、1937年から44年までの作品をまとめて1945年に出版されています…

M・ポングラチュほか『夢の王国』

M・ポングラチュ/I・ザントナー種村季弘/池田香代子/岡部仁/土合文夫訳『夢の王国―夢解釈の四千年』(河出書房新社 1987年) 大部の本。三部に分かれ、第一部は、夢をどう考えたかについて古代から現代までの歴史的地域的概観、第二部は、夢に登場する事物の…

ボルヘス『夢の本』

J・L・ボルヘス堀内研二訳『夢の本』(河出文庫 2019年) 持っていたと思っていたが見当たらなかったので最近買った本。ボルヘスによる夢のアンソロジー。夢なので総じて短く、いちばん長いもので24頁、全部で113の話が収められています。さすがにボルヘスだ…

G.H.シューベルト『夢の象徴学』

G.H.シューベルト深田甫訳『夢の象徴学』(青銅社 1976年) 夢についての本を続けて読んでいると、これまでと重複するような記述を多く目にするようになりました。今回は少し時代をさかのぼって、1814年の著作。動物や昆虫の生態、人間の神経組織など幅広い…

山内義雄『仏蘭西近代詩研究』ほか

今月は、先月よりは増えたもののほそぼそとした購入が続いています。すべてネットでの購入。変わったところでは、下記の3冊でしょうか。 山内義雄『仏蘭西近代詩研究』(金星堂、昭和8年1月、330円) 兼常清佐『与謝野晶子』(角川文庫、昭和33年3月、300円…

カイヨワ『夢の現象学』

ロジェ・カイヨワ金井裕訳『夢の現象学』(思潮社 1986年) これも25年ほど前に一度読んだ本。カイヨワは学生時代に京都の関西日仏学館で講演を聞いたことがありました。その後、『妖精物語からSFへ』、『幻想のさなかにー幻想絵画試論』、『詩法』など、訳…

Noël Devaulx『L’auberge Parpillon』(ノエル・ドゥヴォー『パルピヨン館』)

Noël Devaulx『L’auberge Parpillon』(GALLIMARD 1984年) 昨年読んだ『LA DAME DE MURCIE(ムルシアの貴婦人)』がものすごかったので(2022年4月5日記事参照)、シュネデールの『フランス幻想文学史』でも第一小説集でありかつ代表作として紹介されていた…

多田智満子『夢の神話学』

多田智満子『夢の神話学』(第三文明社 1989年) 新刊で出たときに読み、今回23年ぶりの再読。当時は、初めて聞くような話が多くて驚いたらしく、いろんなところに印をつけています。そうした話がこの本にあったことはすっかり忘れておりましたが、このとこ…

J・アラン・ホブソン『夢に迷う脳』

J・アラン・ホブソン池谷裕二監訳/池谷香訳『夢に迷う脳―夜ごと心はどこへ行く?』(朝日出版社 2007年) 夢の働きを脳の生理学的な探究から科学的に捉えようとした著作で、専門的なことは分かりませんが、かなり最新の知見を踏まえた新しい夢の位置づけがさ…

J・A・ハドフィールド『夢と悪夢』

J・A・ハドフィールド伊形洋/度会好一訳『夢と悪夢』(太陽社 1971年) また夢についての本。前回の『夢と死』に比べると、著者は幅広い知見を持ちバランスが取れていて、主張も明確です。また翻訳もこなれていて読みやすい。この本の主張をひとことで言えば…

GASTON COMPÈRE『LA FEMME DE PUTIPHAR』(ガストン・コンペール『ポティファルの妻』)

GASTON COMPÈRE『LA FEMME DE PUTIPHAR』(marabout 1975年) この作者についても、「小説幻妖弐 ベルギー幻想派特集」所収の森茂太郎の文章で教えられました。12篇が収められた短篇集で、期待して読んでみましたが、はっきり言ってがっかり。理由はいろいろ…

M-L・フォン・フランツ『夢と死』

M-L・フォン・フランツ氏原寛訳『夢と死―死の間際に見る夢の分析』(人文書院 1989年) ユング派の精神分析学者が、死に関連した夢について書いた本。死ぬ前に見る夢の話が多くて気分が沈んでしまいました。全体の印象からいえば、かなり怪しげな本という感…