:フィッツェンハーゲンとルビンシテインのチェロ協奏曲

 恐ろしいことに、音楽の話題から、1年半以上も遠ざかっておりました。コンサートにまったく行かなかったわけではありませんが、タイミングを失して書きそびれてしまいました。CDでは、相変わらず19世紀のチェロ音楽を中心に聴いておりました。前回、「フィッツェンハーゲンのチェロ協奏曲は、全般的にざわついた感じがし耳に馴染めませんでした」と書いておりましたが、何回か聞くうちになかなかいい曲だということがようやく分かりましたので、取り上げます。

 このCD(Hyperion)にはチェロ協奏曲の第1番ロ短調と第2番イ短調「ファンタスティック」、それとチャイコフスキーから献呈され自ら初演した「ロココの主題による変奏曲」、最後に小品「バラード」と宗教的無言歌「諦念」が収められています。チェロ協奏曲は第1番が約16分、第2番も約20分と協奏曲にしては短く、逆に「バラード」は小品と言ってもほとんどチェロ協奏曲と言ってもいいぐらいで17分もあります。「ロココ」を除いてすべて20代のときの作曲といいます。

 協奏曲は1番も2番も3つの楽章が切れ目なしに演奏されています。第1番は、1楽章が少し高揚した気分、第2楽章は心安らぐメロディと、ともに冒頭のチェロの歌い出しが素敵です。全体的にダヴィドフほどの強烈な旋律美はありませんが、初期ロマン派らしいおだやかな雰囲気に包まれます。
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 が、どちらかというと第2番の方がきれいな旋律が多い。例えば、2楽章の冒頭の旋律はこのCDでいちばん気に入った部分ですし、3楽章の後半に束の間登場する夢見るようなひとときも捨てがたいものがあります。CD解説では、「詩的な楽想にはヴュータンの影響が見られると言った人がいるがヴュータンはこの時まだチェロ協奏曲を書いてなかった。詩的な楽想はシューマンの影響によるものだ」というようなことが書かれていました。
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 「バラード」もその名のとおり、穏やかな名曲ですが、フィッツェンハーゲンに注目したきっかけとなった「諦念(Resignation)」がやはり胸に染みるいい曲ですので、90秒だけ引用しておきます。フルート、オーボエクラリネットバスーン木管群に、チェロ、コントラバスの低弦のみという変わった編成の曲です。
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 「ロココの主題による変奏曲」は、初演するにあたって、フィッツェンハーゲンが無断で、大幅にチャイコフスキーの楽譜を手直しし、演奏順を入れかえたと解説にありました。チャイコフスキーも生前はそれを認め、その後ずっとフィッツェンハーゲン改訂版で演奏されてきたとのことです。ネットで見てみると、近年チャイコフスキーのオリジナル楽譜で演奏する機会が増えていると書かれていました。



 ルビンシテインにも同じころ注目して、CDをたくさん買い込みましたが、今のところ、チェロ協奏曲第1番と第2番とだけを聴いています(VMS601)。前回(と言っても昨年の4月)のコメントで、「ルビンシテインにも旋律美が感じられる部分がけっこうあり」と書いたように、全般的に聴きやすい曲で、きれいな旋律がところどころ顔を出します。なかでは第1番の2楽章Adagioの初めの方のメロディと3楽章の中ほどのメロディ(うっとりしていると最後に驚かされる)が秀逸です。
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 第2番の第1楽章の終わり方がかなり個性的でした。第1番の3楽章にこの前触れのような少し似た節回しがあります。
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 何か一年以上足踏みをしていたみたいです。かろうじて「古本ときどき音楽」の「音楽」を死守しました。