:ヴュータン愛聴その後

 先日、ヴュータンについて書いたところ(2月13日記事参照)、violaさんという方からコメントをもらって、ヴィオラソナタが無性に聴きたくなり、ネットで探したら中古で見つかりました。これがとても素晴らしい。別に発注していたチェロ協奏曲のCDも届いたので、ご紹介します。


 CDは次の2枚。
Henry VIEUXTEMPS『Music for Viola and Piano』(Roberto Diaz,Viola・Robert Koenig,Piano)(NAXOS
Henry Vieuxtemps『Cello Concertos Ⅰ&Ⅱ』(MARIE HALLYNCK,Cello、ORCHESTRE NATIONAL DE BELGIQUE、THEODOR GUSCHLBAUER,Dirigeant)(Cyprès)
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 ヴィオラソナタ(作品36)は、一楽章の冒頭がうっとりとなるような美しい旋律です。violaさんに教えてもらったユーチューブで見た演奏が荒っぽいと言うか大胆と言うかに比べて、このCDの演奏はものすごく慎重な音の出し方で、深みを感じさせられます。小舟がしずしずと水路を進んでいく感じ、しかもその水路は狭く、夜で、水面に光がきらめいて・・・この旋律は一楽章の後半にももう一度出てきます。

 私はアダージョやアンダンテが好きなので、二楽章も気に入っています。短いのが残念なところですが、静かな曲で、少し哀愁を帯びた美しい旋律です。

 このアルバムは他に「ヴィオラとピアノのためのエレジー」や「ヴィオラソロのための奇想曲」「夜」「未完成ヴィオラソナタ」がおさめられていますが、いずれの曲もすばらしく、気に入った順番から言えば、ヴィオラソロは、荘重なバロックの雰囲気のなかにどこか浪漫的な味わいも漂う佳品で、この曲を「楽器名、作曲者当てクイズ」にすれば、みんな答えられないと思います。

 「夜」は他の作曲家(Félicien David)の作品を編曲しただけのようですが、やはり何とも言えない懐かしさや優しさが感じられる曲ですし、「エレジー」も静かな厳かな悲しみに溢れた曲です。

 ヴィオラは繊細なフレーズも表現できるし、太い力強い響きもあるし、チェロとヴァイオリンの良いところを併せ持っている気がします。


 チェロ協奏曲のCDのほうは、第一番、第一楽章の冒頭からいきなり風雲急を告げるような雰囲気で引き込まれてしまい、その嵐がおさまったような霧の晴れ間から朗々とチェロの歌が響き渡ります。チェロの響きにはどこか軽さが感じられ、ヴィヴァルディのチェロ協奏曲に共通するような響きが所々にあります。二楽章アンダンテも心が洗われるような気持ちの良い音楽です。


 しばらくはこの2枚を聴いていようと思いますが、あとは何とかヴュータンが偏愛していたという弦楽四重奏曲を聴いてみたいですね。