:いこま国際音楽祭

 「ときどき音楽」が最近なおざりになっているのでひとつ。先週金曜日に「いこま国際音楽祭」に行ってきました。正式名称は、
第4回いこま国際音楽祭 ガラコンサート パート1―シューベルトとその大先輩、大後輩たち
というものです。この音楽祭はドイツを拠点にしている韓伽倻というピアニストが中心に企画をし、海外の音楽仲間を誘って2010年から始めたもので、地元住民としては、身近にこうした機会があるのは嬉しいかぎりです。

 音楽祭自体は5日間にわたって、3つのコンサートとマスタークラスや学校での音楽塾からなっていて、この日はコンサートの初日。演奏曲目は若干渋めの内容でした。
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ニ長調D.384
R・シュトラウス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ホ長調Op.18
モーツァルトクラリネットとチェロのためのソナタ 変ロ長調KV.292
シューベルト:岩上の牧人 変ロ長調D.965
ベートーヴェンクラリネットとチェロのためのデュオ ヘ長調WoO.27-2
というものです。

 なかでもっとも印象に残ったのは、R・シュトラウスの第2楽章で、これは一曲目に演奏したシューベルトの若書き作品のシンプルさに比べて、複雑曖昧な魅力とでも言うべきか、もやもやとした和声、遠いところにあるような神秘の響きが魅力的。ニコラス・チュマチェンコの柔らかなヴァイオリンの響きがとても美しい。第3楽章も華麗。

 次に、シューベルトの「岩上の牧人」は冒頭のヴォルフガング・マイヤーのクラリネットの音色が透きとおるよう。ザビーネ・マイヤーのお兄さんだそうな。その後、歌が始まりますが、はじめの高音から低音に雪崩れるように落ちるフレーズがなんとも言えません。三井ツヤ子さんのメゾ・ソプラノの柔らかい歌声が詩情豊かな空間をつくっていました。後半の弾むようなリズムも魅力的。CDはキャスリーン・バトルのものを持っていますが(これはタイトルが「岩の上の羊飼い」となっている)、バトルの歌声はきれいすぎるので、この日の演奏のほうが良かった。

 最後の曲はもともとクラリネットファゴットのための曲だそうですが、ベートーヴェンはさすがに、チェロ、クラリネットとも歌うような節回しがモーツァルトにはない魅力。跳ねるようなリズムもクラリネットにふさわしく心地よい。

 曲間に入る韓さんのトークもどことなくユーモアがあって、人柄も気取らず好感が持てました。チェロの伊東裕さんは生駒市出身で現在東京芸大3年生、柔かい音を響かせていたので、将来が楽しみです。


 ちなみに第3回の音楽祭もコンサート初日を聴きに行きました。冒頭シリンクスというドビュッシー中心のラインナップで、ヴァイオリン・ソナタをやはりチュマチェンコが弾いていて、柔らかい音と正確なフレージングで見事にドビュッシーの世界を作り上げており、この曲の独創性とカッコよさをあらためて感じさせられたのを覚えています。