:チャイコフスキーと同世代のロシア音楽家

 音楽の話題が途切れていますので、無理やり書いてみます。最近コンサートに行かないうえに、CDを聴く習慣も薄れ、大阪への行き帰りに電車で聴くぐらいになってしまいました。そんな状態で、今お気に入りは『TCHAIKOVSKY FOR CELLO』(ARTE NOVA)というCD、とくにそのなかの次の3曲に惹かれています。
Wilhelm Fitzenhagen「Resignation―sacred song without words」op.8
Karl J.Davidov「Sunday Morning」op.20 No.1
Anatoli Brandukov「Nocturne」
(JENS PETER MAINTZチェロ、DAVID GERINGAS指揮リトアニア室内管弦楽団

 チャイコフスキーの作品も収められていて、「ロココ」や「夜想曲」、「感傷的ワルツ」などすばらしいですが、上記もそれに劣らず魅力的です。この三人は初めて知った名前で、いずれもチャイコフスキーと交流のあった同時代のロシアの作曲家のようです。

 ヴィルヘルム・フィッツェンハーゲンは、モスクワ音楽院チャイコフスキーと教授同士の親友で、「ロココの主題による変奏曲」を献呈され初演をしたと言いますし、カルル・ダヴィドフは、チャイコフスキーサンクトペテルブルク音楽院学長の椅子を争ったという間柄で、チャイコフスキーから「チェロの帝王」と呼ばれていたそうです。アナトーリ・ブランドゥコーフは、フィッツハーゲンからチェロ、チャイコフスキーから作曲を学び、後にチャイコフスキーモスクワ音楽院の教授に招聘しようとしたと言います。年齢は、ダヴィドフが年長(1836年生まれ)、次にチャイコフスキー1840年生まれ)、フィッツェンハーゲン(1848年)、ブランドゥコーフ(1856年)の順です。

 この3曲はいずれもチェロの温かみが感じられる静かな小曲で、とくにフィッツェンハーゲンの「諦め」を聴いていると、溶けていくように身体の力が抜け、心が鎮まります。ブランドゥコーフの「夜想曲」もゆったりとした美しい曲。ダヴィドフの「日曜の朝」はまさしくタイトル通り、のんびりして祝福されたような嬉しい気分が満ちています。どの曲も、チャイコフスキーに通じるような旋律の美しさが感じられるように思います。


 これに味を占めて、この時代のロシアの作曲家に興味が出て、ロシアのヴィオラばかりを集めた『The Russian Viola』(BIS)というCDも聴いてみました。

なかでは、グリンカの「ヴィオラソナタ」、グラズノフの「エレジー」もよかったですが、次の曲がとりわけ心に響きました。
Anton RUBINSTEIN「Nocturne」Op.11 No.2(今井信子ヴィオラRoland Pöntinenピアノ)
ヴュータンのヴィオラソナタ第一楽章の冒頭の雰囲気とよく似ていて、船が波間を滑り出していくような感じがします。アントン・ルビンシテインという人はサンクトペテルブルク音楽院の創立者。かなり年長で(1829年生まれ)、チャイコフスキーは教え子だそうです。


 さらに、今度はロシアのバレエ音楽でヴァイオリンのソロの入る曲を集めた『Violin Solo In Russian Ballets』(MELODIYA)という20年ぐらい前によく聴いていたCDを引っ張り出してみました。

このなかでは、A.KORESHCHENKO『The Magic Mirror』より「Adagio」、ARENSKY『The Egyptian Nights』より「Andante sostenute」、GLAZUNOV『Raymonda』より「Grand Adagio」(Sergei Stadlerヴァイオリン、Alexander Lazarev指揮ボリショイ劇場管弦楽団)が、どれもこれも夢見るような旋律を奏でていて最高の気分。チャイコフスキーより後の世代の作曲家ですが、旋律美は共通です。


 勢いに乗って、フィッツェンハーゲンの「チェロ協奏曲第一番、第二番」、ルービンシテイン「ヴァイオリンソナタ全集」のCDを買いました。感想はまたいずれ。