:最近はまっているCD「fado de COIMBRA(コインブラ・ファド)」


 先日のポルトガル旅行で、コインブラでファドのコンサートを聴いた時に購入したCDにはまっています。


 コインブラの町に着いて歩いていると、黒いマントの女性がコンサートの呼び込みをしていました。事前の旅行ガイドブックでコインブラのファドのことを知りぜひ聴きたいと思っていたので入ってみると、観光客相手の小さな劇場で、その黒マントの女がチケットやCDを売り、片隅でポルトガルギターを抱えた男が一生懸命練習をしていましたが、奥でパソコンを叩いていた男がやおら黒マントを着て歌い出したのにはびっくりしました。

 コインブラのファドがリスボンのファドと違うのは、
1)もっぱら男性が切々と歌うもの(もとは男性が女性の窓辺の下で歌うセレナードだったといいます)
2)ギタリストも歌い手も全身黒ずくめでマントを羽織っていること
3)コインブラ大学が関係しているらしきこと
4)曲の雰囲気がクラシックの歌曲に似ていることで、イタリア歌曲のトスティあたりに近い印象
5)ポルトガルギターと普通のギター(ポルトガルではベースと呼ぶらしい)が伴奏するのは共通のようですが、解説によれば、コインブラの方がベースは低音で奏するもののようです。


 このCDのなかで有名な曲は「ポルトガルの四月」。以前、日本のポルトガルギターマンドリンのデュオ「マリオネット」をよく聴いていて、そのアルバム「リスボン」のなかにも収められていた曲です。これは原題を「Coimbra」といってもとはコインブラの歌だそうです。その日のコンサートでも最後に歌われ、歌手のリードにより我々観客も一緒にハミングしました。

 聴けば聴くほどどの曲も魅力が感じられます。上記4)のとおり、都会的で円熟した(崩れたというべきか)大人の哀愁が感じられるリスボンのファドと違って、コインブラのファドはもう少し端正で、その整った形式のなかに秘めたる情熱といったものが感じられます。ポルトガルギターのやや高く弾ける音色が哀愁をそそります。


 なかでも「Samaritana」「Passarinho da Ribeira」「Contos Velhinhos」「Não Olhes Para os Meus Olhos」「Maria se Fores ao Baile」がとくにお気に入りです。