:ダヴィドフのチェロ協奏曲第1番

 昨年の秋以降、音楽の話題が途切れているので。
 最後の話題は19世紀ロシアの音楽で、フィッツェンハーゲン、ダヴィドフ、ルビンシテインらについて書きました。最近気づいたことですが、正確にはフィッツェンハーゲンはドイツ、ダヴィドフはラトヴィア生まれで、ロシアを舞台に活躍したのでロシアの作曲家ということになっているようです。

 その後彼らのCDをチェロ協奏曲を中心に取り寄せ、ひとあたり聞いてみました。前回「諦め」という曲がよかったのでいちばん期待していたフィッツェンハーゲンのチェロ協奏曲は、全般的にざわついた感じがし耳に馴染めませんでした。なかでは何と言ってもダヴィドフのチェロ協奏曲第1番が出色で、チェロ協奏曲の名曲としてもっと取り上げられてもいいと思いました。

 ルビンシテインにも旋律美が感じられる部分がけっこうありましたが、今回はダヴィドフのチェロ協奏曲第1番、第2番と小品の入った下記のCDを取り上げます。いまのところいちばんのお気に入りで、昨年暮れからずっと聴いていました。

Davidov :Cello Concertos 1,2、3 Salon Pieces、At the Fountain、Berceuse-Romance
Marina Tarasova(cello), Davidov Symphony Orchestra, Lonstantin Krimetz(dir), Alexander Polezhaev(piano)(alto ALC1066)

 ダヴィドフのチェロ協奏曲は、第1番、第2番ともに、オーケストラは控え目でチェロが主役になって歌う場面が多く、とくに第1番は古典的な素朴ともいえる様式の中から、突如チェロが情感に溢れたパッセージを歌うのが魅力的です。全般的に第2番の方がオーケストラとの掛け合いが複雑になっているように思えました。

 第1番の第1楽章では、冒頭引込まれるようなオーケストラの序奏の後、チェロが憂鬱そうなエモーショナルなパッセージを奏で、しばらくしてまた別のメロディが伸びやかな歌い方で出てきます。おそらく第一主題と第二主題でしょう。こうした旋律美はやはりチャイコフスキーに通じるものがあるようです。
第1主題?(https://www.youtube.com/watch?v=9ac9UJpxTx4
第2主題?(https://www.youtube.com/watch?v=T0b1OJbAzt4

 音源を貼り付けることができそうなので、試してみました。著作権について詳しい規定は調べていませんが、「レコード芸術」に添付されている新譜のサンプルCDが90秒ずつの音源で収録されているところをみると、90秒以内であれば引用と認められると勝手に解釈して添付しておきます。

 全楽章がつながっているので、2楽章、3楽章が正確に把握できていないかもしれませんが、第2楽章はカンティレーナと書かれているように、冒頭からチェロがめんめんと歌いあげ、これがまた胸に迫ってきました(https://www.youtube.com/watch?v=sGG_ToLqxhI)。第3楽章にはワルツが出てきますが、あまり楽しそうではなく幽霊が踊っているような雰囲気を感じてしまうのは、こちらの感性がいびつなためでしょうか。

 次のチェロ協奏曲第2番も第1楽章ではチェロ演奏による二つの主題が出てきて双方とも美しい。第2楽章は冒頭からとてもゆったりとチェロが歌い、そのあと余韻としてチェロとクラリネットが掛け合う旋律が出てきて、とてもすてきです。
2番2楽章(https://www.youtube.com/watch?v=42V9A9s2HTw

 他に収められているのは、伸びやかで上品な初めの2曲に比べて3曲目には少しごつごつした感じの曲想が出てくる「三つのサロン風小品」、ぴちぴちと水が跳ねているような描写的な「泉」、北欧風な寂しげなテイストも若干感じられる「子守歌」、チェロ協奏曲第1番3楽章のワルツに似てどこか悲しげで青白い雰囲気のする「ワルツ」、若々しいすがすがしさを感じさせる「ロマンス」、どれもチェロの響きが似合う名曲揃いです。


 ダヴィドフのチェロ協奏曲第3番、第4番のCDは、まだそれほど聴いていません。複雑さがさらに増して、第1番に見られたような素朴な穏やかさが減じているように思います。