サン=サーンスのチェロ協奏曲

  サン=サーンスは、サラリーマン時代、通勤途上でよくヴァイオリンとオーケストラの曲を下記のCDで聴いておりました。

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Saint-Saëns『L’œuvre pour violon & orchestre』(EMI)

Ulf Hoelscher(Vl)、Pierre Dervaux(Cond)、New Philharmonia Orchestra他

今でも、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲を聞くと、その頃の情景や出来事がよみがえってきます。ヴァイオリン協奏曲は第3番が人気のようで、CDも多く出ていますし、演奏会でもよく取り上げられるようです。私も2010年6月17日の記事でコンサートで聴いたこの曲を話題にしています。第1番、第2番の方がどちらかというと好きですが。

 

 この半年ほどは、サン=サーンスのチェロに惹かれて、ずっと一枚のCDを聴き続けています。

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Saint-Saëns『Cello Concertos Nos.1&2』(BMG)

Steven Isserlis(Vc)、Tilson Thomas(Cond)、London Symphony Orchestra

 

 サン=サーンスの音楽は、フォーレやその後のフランス作曲家たちの出発点になっているという評価をよく耳にしますが、音楽の性格は印象派のお洒落さ、モダンさとは一線を画すものがあって、ロマン主義的で、どちらかというと、ドイツ風とも感じられます。ロマン主義風と言っても、初期の清楚で簡素な響きよりは複雑な味わいがあり、楽曲の流れが予想を裏切るような奔放さで展開されていて、後期ロマン派に近いように思います。うまく表現できませんが奇想とかイロニーといったようなものを感じるようなところもあります。チェロ協奏曲第2番第1楽章の半ばぐらいに出てくる旋律では、マーラーを聴いているような錯覚にいつも陥ってしまいます。

 

 サン=サーンスの音楽は、『動物の謝肉祭』の「白鳥」や歌劇『サムソンとデリラ』の「あなたの声に心が開く」のように、とてもメロディが美しいのが特徴ですが、ヴァイオリンやチェロの協奏曲的作品では、メロディだけが突出しているというよりは、つぎつぎと展開していくそれぞれの細部に魅力があり、全体の雰囲気がよく調っているように思います。このCDに収められているチェロ協奏曲は、第1番と第2番、それと「チェロとオーケストラのための組曲」という協奏曲にしては少し軽めのものがありますが、どちらかというと第1番の方が好きで、とくに第1楽章、第3楽章が充実していると感じます。

 

 このCDでは、「La Muse et le poète(ミューズと詩人)」というヴァイオリンとチェロの二重協奏曲的作品がいちばんのお気に入りです。冒頭の淋しさに溢れた旋律を聞くと胸がギュッと絞めつけられてしまいます。(はてなブログになってから曲が簡単には貼りつけられなくなったのが残念)。サン=サーンスは昔にしてはとても長生きをした人で、作曲年が1910年となっていますから、まさに現代音楽に突入しようかというときに、こうした浪漫的古風な味わいの作品が誕生していたというのが驚きです。

 

 最後に収められている「La Prière(祈り)」はオルガンとチェロという不思議な組み合わせで、1919年の最晩年の作品ですが、第一次世界大戦の悲劇に対する鎮魂の祈りのように聞こえます。オルガンとヴァイオリンの組み合わせの曲ではラインベルガー「ヴァイオリンとオルガンのための組曲」のCDをひと頃よく聞きましたが、これもやはりオルガンに引きずられてか穏やかな響きが印象に残っています。