:ヴィエニアフスキを聴く


 久しぶりに音楽の話題。先週末、大阪でヴィエニアフスキのヴァイオリン小品のコンサートがあり、珍しいことなので出かけました。

 ヴィエニアフスキは、ひと頃、ヴァイオリン協奏曲の1番と2番を、例によってギトリスの演奏でよく聴いていました。2曲ともすばらしいですが、1番の方が全体に整っていて、とりわけ第一楽章の胸に迫るようなロマンティックな主題と、第二楽章のなんとも言えずゆったりとした「祈りの歌」が魅力的です。2番の第二楽章も今回アンコールで演奏されましたが、好きな曲。Naxos盤で小品集もよく聴きました。
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 作品数が少ないのが残念ですが、パガニーニブルッフやヴュータン、サン=サーンスらとともに、ロマン派ヴァイオリン協奏曲の全盛期を形づくる作曲家ではないでしょうか。


 演奏会が久しぶりのせいもあり、また小ホールの間近の迫力もあって、冒頭の「レゲンデ」のピアノ伴奏が始まった時、身体がぞくぞくとしました。この日の演奏曲目のなかでは、その「レゲンデop.17」、「創作主題による華麗なる変奏曲op.15」、「カプリッチョワルツop.7」の前半の3曲が印象的でした。

 ヴィエニアフスキの曲の特徴は、少し哀愁を帯びたような土着的なメロディの美しさと、ヴァイオリンの技巧にあると思いますが、この3曲はとくに異郷的な響きが際立っていて魅力的です。ヴィエニアフスキはポーランド出身で、ロシアにも長く滞在していたからでしょうか、ハンガリールーマニアの曲とどこか通じるテイストを感じます。後半のフーバイに捧げたという「オリエンタル幻想曲op.24」はタイトルからして異郷的で、マジャールの響きを感じさせるところもありましたが、若干行き過ぎて中国の音階のように聞こえるところもあったのが珠に瑕。

 ヴァイオリンの技法については専門的なことはあまりわかりませんが、右手で直接弦をつまんだり、左手の小指で弾いたりするピツィカート奏法や、異常なほど高音を出す奏法がちりばめられた超絶技巧の速いパッセージが多く、目まぐるしい思いがしました。前も書きましたが、生演奏の魅力は、CDだけではどんなやり方で音を出しているのか分からなかったところが、実際に目で見て確かめられるところでしょう。曲芸を見ているような気がしました。

 ヴァイオリンの木野雅之氏はギトリスに師事したこともある日本の技巧派で、以前浜離宮でギトリスと共演しているところを拝見したことがあります。立山でもふらりと入った会場で聴いたことがあったようにも思います。

 会場の「ヒビキミュージックサロン リーヴス」というのははじめて行きました。70席ぐらいの超小型ホールで、今はなき「イシハラホール」のリサイタルルームを思い出しました。スペースが小さい割にはヴァイオリンもピアノも音が大きく、響き過ぎていたようにも思いました。

 私だけの悪い癖かもしれませんが、たくさんの曲を一度に聞くと、後半刺激に麻痺してきて感動が鈍っていくようなときがあります。初めの頃のわくわく感が薄れて、何だか心地よいけどそれが当たり前になった世界に入りこんだ感じです。これは齢で体力がなくなってきた証拠でしょう。