:吉江孤雁『童話集 角笛のひヾき』他

オークションはこのところしばらく、連戦連敗のありさまでしたが、
ようやく4冊、落札できました。吉江孤雁と薄田泣菫は同じ出品者です。


大体落札できる時は競争者がいないときが多いということに気づきました。だれにも気づかれないうちにこっそりと買ってしまわないと負けてしまうということでしょうか。また競争になると生来のしみったれた性格が出て安値しか付けられないからでしょうね。


吉江孤雁(喬松)『童話集 角笛のひヾき』は初めて見る本です。少し外装が磨り減ったようになっているのが玉に瑕ですが、中はとてもきれいで、カラーの扉絵1枚と版画の挿絵が5枚(なぜか前半のみに)ついています。内容は、第一次大戦時にパリに在住していた時に見聞きした話を童話に仕立てたものを中心に、ロランの歌や民話などをちりばめたもののようです。語り口が子供向けでとても優しい。紙の質が良いせいかとても軽いのが嬉しい。


薄田泣菫は最近ウェッジ文庫で『独楽園』が出て話題になっていますが、この『樹下石上』も『独楽園』の出版年と近いので、同じような味わいがあるものと期待してのことです。結構高かったので、読まないうちに新刊で出ないことを祈ります。この本は大変重い。


谷川雁『大地の商人』は、再版で、とてもバッチイ割りに高いので躊躇しましたが、若い頃何度も読んだ詩行がどんな形で印刷されていたのかとても興味がわきました。期待にたがわず、少し厚い紙にしっかりと印刷されていました。思潮社の「現代詩文庫」シリーズは詩の普及に貢献したと思いますが、一方で詩の持つ重みを殺してしまったように思います。


田辺保の『フランス 詩のふるさと紀行』も美しい本です。


最後の3冊は隣のT市まで遠征して、BOOK-OFFで買ってきました。私の住んでいるO市のBOOK-OFFより品揃えが豊富でした。BOOK-OFFはお店によって、本の量も質もかなり違います。


吉江孤雁『童話集 角笛のひヾき』(実業之日本社大正14年1月、1000円)
薄田泣菫『樹下石上』(創元社昭和6年12月、1000円)
谷川雁『大地の商人』(母音社、56年4月、850円)
田辺保『フランス 詩のふるさと紀行』(同文書院、94年1月、300円)
佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』(新潮OH!文庫、01年6月、105円)
中島義道『働くのがイヤな人のための本』(新潮文庫、平成16年5月、105円)
多和田葉子『文字移植』(河出文庫、07年4月、105円)