:金沢古本ツアーほか

 今週初め、東京の古本仲間と金沢古本ツアーを決行しました。40年近く前の大学時代にもその相棒と一緒に行った思い出の地です。近江町市場近くのK書房ぐらいしか覚えておりませんが。

 あいにくの雨でしたが、まず一軒目はK書店。ここは新しく開店したばかりで、古本屋としては飛び切り愛想のよい娘さんがいました。
開店祝いも兼ねて、金沢地元出版の本他二冊を購入。
種村季弘泉鏡花「海の鳴る時」の宿』(十月社、平成8年11月、900円)→種村季弘『晴浴雨浴日記』の中の一節と鏡花の原作を合わせた本。
ドミニック・ランセ鈴木啓司訳『ボードレール―詩の現代性』(クセジュ文庫、92年5月、200円)
ヴォルテール池田薫訳『浮世のすがた 他六篇』(岩波文庫、90年10月、100円)

 近くのK書房は昔の店舗とは違う印象でずいぶん立派な店構えになっていましたが結局買わず。
その後、バスに乗ってはるばる行ったN堂はなぜか閉まっていました(次の日も行ったが閉まっていた)。

 翌日は、O書林タテマチ店へ。ここはアート関係が充実。
後藤正治『奇蹟の画家』(講談社、10年2月、1000円)→ルオーの画風に似た神戸の埋もれた画家のドキュメント(らしい)。「中央公論」連載が気に入っていたのと、知ってる人が二人も出てくるので購入。
ワシオ・トシヒコ編著『矢野文夫芸術論集』(舷燈社、96年9月、1000円)
の二冊を購入。
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 近くのB堂書店は店は開いていたが店主の姿がない不用心な店。結局買わず。
次にタクシーで乗り付けたM堂書店では、以前相棒が付録ミステリーを束で買ったという店で、店内はあちこちに束が山積みにされた雑然とした感じ。何かありそうでしたが、結局下記二冊。
『悪魔のダンス―絵の中から誘う悪魔』(視覚デザイン研究所、03年1月、700円)
『Adolphe-William BOUGUEREAU』(Pomegranate Artbooks、95年、700円)→ポストカード集。ブーグローの絵がこんな形で手に入るとは。
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 そこから延々と歩いて行ったO書林せせらぎ通り店が今回二番目の収穫。
花崎采琰『中国の女詩人』(西田書房、昭和60年3月、1200円)
有田忠郎『異質のもの―感性の接点を求めて』(牧神社、75年7月、800円)
龍膽寺雄全集第十一巻 虹と兜虫』(昭和書院、昭和61年4月、800円)→もう一冊短編集がありましたがかさばるので買わず。(買っとくべきだったか)
広田正敏『ラフォルグの肖像』(JCA出版、84年11月、1000円)
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 最後に行ったK閣が今回のベスト店。自動車店の両脇に、左側均一本ガレージセール、右側通常店舗の形の奇妙な配置。
まず均一本コーナーで、
島田謹二『十九世紀英文學』(研究社、56年4月?、167円)
萩原朔太郎全集4 詩論』(小學館、昭和18年12月、167円)
米澤英雄『こころの詩』(黎明書房、昭和50年1月、166円)
を購入。
店舗は閉まっていたのをわざわざ開けてもらって大正解。大学時代の古本屋を彷彿とさせる品揃えでした。
内藤濯『思索の日曜日』(木耳社、昭和48年7月、630円)
大木実『詩人の歩み―詩の鑑賞のために』(さ・え・ら書房、昭和25年1月、500円)→初山滋装幀カット
佐藤昌『パリの街角―文学散歩』(三修社、76年3月、200円)
佐藤春夫『からもの因縁』(勁草書房、昭和40年6月、400円)→中国文学関係の随筆集
高田博厚『パリの巷で―フランス三十年』(講談社昭和35年4月、600円)
村上菊一郎『四季の名詩―日本近代詩鑑賞』(講談社、昭和33年3月、300円)→高田博厚とこの本はともにミリオンブックス。こんな本が出ていたとは。
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 金沢ツアーを前に気分が高揚していたのか、ネットやオークションでもたくさん買い込んでしまいました。
まず、天神橋筋商店街のY書店で4000円でこれまで買い渋っていた本が、ネットで比較的安く出ていたので購入。
森亮『夢なればこそ』(文華書院、昭和51年12月、2500円)

 オークションでは、戦後近辺の現代詩関係の格安出品があったので、ほくほくと落札。佐川英三は聞いたことのない人ですがタイトルだけで入札、ちらっと読んでみると叙情的でストレートな詩風が気に入りました。おまけに金子光晴への献辞が扉部分に!この出品は金子光晴の蔵書かしらん。
春山行夫『新しき詩論』(第一書房昭和15年3月、900円)
佐川英三『詩集 絃楽器』(日本未来派編集所、昭和29年5月、100円)
笹沢美明/上田敏雄/北川冬彦『現代詩の歩み』(寶文館、昭和27年10月、100円)
北園克衛/田中冬二他『現代詩の実験』(寶文館、昭和27年7月、100円)→W本でした
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 いつものK書房から
宇佐見英治『戦中歌集 海に叫ばむ』(砂小屋書房、96年1月、1100円)
「第三次 同時代 第30号 特集:遊び」(黒の会、11年6月、160円)
清水茂『夢の歌』(舷燈社、11年4月、300円)高橋節子挿画

 何度も書きますがオークションの良いところは知らなかった本に出会えることです。
ジェラルド・カーシュ駒月雅子訳『犯罪王カームジン―あるいは世界一の大ぼら吹き』(角川書店、08年9月、510円)

 少し買い過ぎたので、しばらく古本は控えることにしましょう。