:鈴木漠詩集『魚の口』など

 いよいよ退職とともに生駒に帰る日が近づいてきました。
オークションやネット買いも引越しして落ち着くまでしばらく自粛せざるをえなくなりそうです。お小遣いもなくなるので、そのまま本が買えなくなるかもしれません。最後の買い物になるのでしょうか。


オークションとネットでは下記の7冊を購入。
北原白秋『旅の随筆 雲と時計』(偕成社昭和14年8月、320円)
梶浦正之『現代仏蘭西詩壇の検討』(肇書房、昭和19年7月、500円)
ベルトラン伊吹武彦訳『夜のガスパール』(角川書店、昭和22年9月、100円)
藤村壮詩集『あくびを呼ぶ風景』(蜘蛛出版社、62年8月、2000円)
鈴木漠詩集『魚の口』(海の会、63年8月、2000円)
アルベール・ローザ田辺保・杉富士雄他訳『フランス語の特質』(大修館書店、82年3月、520円)
エドガー・ソールタス生田文夫訳『太陽王女』(エディション・イレーヌ、03年1月、1000円)



 今回は長らく探していた鈴木漠と藤村壮の昔の詩集が2冊手に入りました。とりわけ鈴木漠のものは本人の装幀になる美しい詩集で内容も素晴らしいものです。今回最高の収穫、大変気に入りました。



 北原白秋の旅の随筆は、昭和モダニズムを思わせるリズムのある文章で、ところどころ詩を取り混ぜながら、全体は物語仕立になっている。今のきちんとした文章にない取り乱れた感覚が味わえます。



 『現代仏蘭西詩壇の検討』は題名だけで買ってみましたが、象徴詩派から、浪漫派?、高踏派、ユナニスム、ナチュリスム、アンテグラリスム、南方詩派、幻想派、内観詩派、古典派、立体派、ダダイスム、超現実派、女流詩人、ハイカイ一派まで、おそらく100人以上が登場する大パノラマの観があります。著者はあまり聞いたことのない人ですが、東海地方の人で詩集を何冊が出しているようです。1冊はボン書店から出ています。


 今ぺらぺらと捲っていたら、シャルル・クロスの詩「遺言に代えて」が「千の風になって」と少し通じるところがあるように感じました。「千の風」のポイントとなる「私はお墓の中には居ません」という部分が欠けているので、決定的に違いますが。

私が死んでも、墓の上で/お経や弔辞(とむらひ)おしゃべりはして下さるな/ただ、もと私の五肢(からだ)であった肉と皮を/熾んな火中に投げて下さい/それから私の灰を風に吹かして下さい/流れゆく雲の王者の奴にやって下さい/・・・ 


 エドガー・ソータルスの訳者は生田耕作先生のご子息のようです。オークションの写真を見て買いましたが、写真では本の厚みが分かりませんでした。30ページほどのぺらぺらの短編が1000円は高い。(元値は1890円もする)