:フランスの詩集原書二冊ほか

 オークションで、珍しい詩集を二冊落札しました。いずれも格調高くルリュールされています。
HENRI DE RÉGNIER『Les Médailles d’Argile』(MERCURE DE FRANCE、1900年、2000円)
COMTESSE DE NOAILLES『L’OMBRE DES JOURS』(CALMANN-LÉVY、1917年10月、2000円)

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 一冊目は、アンリ・ド・レニエの代表的な詩集で、後藤末雄が『近代仏蘭西文學』のなかで「『粘土牌』といふ神韻縹渺とした表徴詩集」と紹介しています。我が家にある翻訳詩集をいろいろ引っ張りだして調べてみると、この詩集のなかの詩篇を訳したものが結構見つかりました。永井荷風はレニエを愛好していて『珊瑚集』でレニエをいちばん多く(10篇)訳していますが、そのうちの「年の行く夜→LE DERNIER SOIR」。また与謝野寛が訳している「手の絵→PORTRAITS DE MAINS」(人生社刊川野達夫編『フランス詩集』所収)、鈴木信太郎の「爐火→LE FEU」(春陽堂刊『近代仏蘭西象徴詩抄』所収)、山内義雄の「濡れた庭→LE JARDIN MOUILLÉ」(新潮社刊『近代詩人集』所収)。他にもあるかもしれませんが、目についたのはそんなところです。

 二冊目は、ノワイユ伯爵夫人が処女詩集の翌年に出版した詩集です。彼女については、芳賀徹氏が「アステイオン」という雑誌(2014年11月発行号)に「ノワイユ伯爵夫人―忘れえぬおもかげ」という印象深いエッセイを書いていて、興味を抱きました。これについても翻訳詩アンソロジーを探すと、いろいろ出てきました。堀口大學の『月下の一群』にはノワイユ夫人の詩が二篇収められていますが、そのうちの「若さ」がこの詩集の冒頭を飾る「JEUNESSE」、『フランス女流詩人詩抄』の金子美都子訳「青春」も同詩篇福永武彦訳「後の想ひ」(『象牙集』所収)は「LES REGRETS」ということが分かりました。探しながらちらちらとこの詩集を眺め見していると、なかなか読みやすく、悔恨と哀調とノスタルジーに溢れたしっとりと心にひびく詩でとても気に入ってしまいました。

 オークションでタイミング良く、下記の書を落札しました。まだ届いていませんが、ノワイユ伯爵夫人の詩が14編ほど訳されているようです。
石邨幹子譯『つみくさ―現代ふらんす閨秀詩選』(桜井書店、昭和18年、500円)


 オークションでは他に、
ヹルハアラン高村光太郎訳『愛の時』(アムリタ書房、昭和57年4月、100円)→原詩が巻末に収録されているので嬉しい。ヴェルハアランは初期の三部作「Les Soirs」「Les Débâcles」「Les Flambeaux noirs」が私の好みのようだ、早く入手したい。
アルベール・ベガン西岡範明訳『真視の人バルザック―そのヴィジョンの世界』(審美社、73年7月、430円)
井上究一郎/佐貫健訳編『フランス名詩選』(學生社、66年10月、300円)
窪田般彌『影の猟人』(緑地社、昭和33年7月、500円)→発行は小林秀雄になっている。第一詩集。限定350部でなぜか0番。

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 古本屋では、大阪での麻雀会の帰り難波T書店にて
『世界名詩集大成18 東洋篇』(平凡社昭和35年5月、356円)→「ルバイヤート」の持っていない訳が入っていた。また漢詩魚返善雄訳がなかなかよい。