:島田謹二『マノン物語』ほか


 古本屋をしている私の知り合いがネットオークションにも出品しているというのは風の便りに知っておりましたが、先日、落札した本の取引連絡を受け取ったら、それがその知り合いだったので驚きました。向こうも驚いたと思いますが。

 それが島田謹二『マノン物語』です。1ヶ月ぐらい前にも別のオークションで入札し、競合者が現れて2500円まで思い切って値付けしたあげくに、競り負けてしまい悔しい思いをしてたところです。今回は幸い競合者が誰一人として現れず私のものとなりました。

 松野一夫の挿絵が表紙、中表紙カラー各1点と、文中に10点が添えられ、石上露子の序詩もついています。ポオの訳詩や長詩「雅人」からして、荘重な文語体を期待していましたが、山の手言葉風の会話の混じった口語体です。しかしこれもどこか味わいがあります。


 別の話題。先日、日帰りで大阪へ出張がありました。その際、昨年開通したという京阪の中之島線に乗ろうとして、地下鉄の淀屋橋駅で降りました。ところが乗り換えは随分離れた大江橋駅というところだったので、接続の悪さに気分を害してぶつぶつ言いながら地下へ降りていったときに、見つけたのがT書店です。

 新しい古本屋を発見すると嬉しくなってしまいます。新刊と古本の混じったお店で、古本コーナーはすべてが600円均一になっていて、趣味の良い本が揃っておりました。
 ここで村松嘉津『巴里文學散歩』を購入。『續巴里文學散歩』は持っていましたが、この本は持っていなかったはずです。



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 田辺貞之助の3冊は、『女木川界隈』を読んで無性に田辺ものが読みたくなってネットで買い付けたものです。『うろか船』は期待どおり、文学話、フランス系話、風流話などが気楽に語られているようです。
 『江東昔ばなし』は『女木川界隈』とほとんど重複した感じなのにはいささかがっかりしましたが、少しは続編のようなものも混じっているようなので良しとしましょう。
 『風流粋故伝』は本を見てもまったく読んだ記憶がないのですが、昔の読書ノートに感想を書いているのを見つけてしまいました。


以下は最近の購入本をまとめて。
島田謹二『マノン物語』(銀星閣、昭和22年12月、1000円)
村松嘉津『巴里文學散歩』(白水社、59年10月、600円)
田辺貞之助『うろか船』(青蛙房、昭和34年4月、1500円)
田辺貞之助『江東昔ばなし』(菁柿堂、昭和59年6月、630円)
田辺貞之助『風流粋故伝』(新門出版社、80年10月、525円)
マルセル・ブリヨン津守健二訳『ウィーンはなやかな日々―モーツァルトシューベルトの時代のウィーンの日常生活』(音楽之友社、昭和47年9月、590円)
鈴木漠『詩集 変容』(編集工房ノア、98年5月、1000円)
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