大阪中之島美術館でモディリアーニ展を見る

 もう先月の話ですが、奈良日仏協会の催しで、大阪中之島美術館で開館記念のモディリアーニ展を鑑賞する機会がありました。、中之島美術館と言えば、今から35年ぐらい前に、中之島の一画にあった財団に出向していたとき、当時の専務理事から中之島に美術館ができるという話を聞いたことがありました。その後話が立ち消えになっていたので心配していましたが、ようやくできたかと感慨深いものがあります。

 モディリアーニの絵は、昔からあちこちでよく見かけていましたが、細長くしかもやや傾斜した姿ばかりの人物像は、あまりしっくりきませんでしたし、アル中で破滅的な人生とともに語られるその伝説風な享受のされ方が好きではありませんでした。

 ところが不思議なことに、今回、準備のために図書館から借りてきた画集を眺めたり、また展覧会で本物の絵をじっくりと見ているうちに、あの細長い顔や時として四角いけれども目や鼻や口が真中に集まったような表情にじわりと愛着がわいてきて、可愛いと思えるようになりました。

 展覧会鑑賞の前に事前説明会があり、講師を務めた画家南城守さんの解説が的確で、目から鱗が落ちたのも原因の一つ。そのなかで私なりに理解できたことは以下の2点。

モディリアーニの絵の人物像は西洋美術の長い潮流の上にあること。ギリシア以前のキクラデス文明やギリシア彫像の卵型の造型→シエナ派の首を傾げた細長い顔の人物像と抒情的な感性→ピカソブランクーシなどに見られるプリミティヴな表現。

モディリアーニの絵がなぜあそこまで強烈な特徴を持つようになったのか。それは、画家たちが置かれた時代背景によるもの。王侯貴族の後ろ盾のなくなった画家たちは、画商に認めてもらうことが唯一の道となった。一獲千金を夢見て、売れる当てのない絵を必死で描くようになったが、それには強烈な個性を武器にするほかはなかったということ。

 この展覧会では、まず、モディリアーニの生い立ちを絵をまじえて辿りながら、1910年~20年代の社会状況を当時のポスターなどで説明し、次に、1910年代以降パリに集まり、モディリアーニと交友し影響を与えた画家たちの作品を紹介し、その関連で日本画家の作品も並べ、最後に、モディリアーニの作品群を展覧するという、構成の分かりやすさにも感心しました。

 私の好きな絵は、「小さな農夫」と「おさげ髪の少女」。見れば見るほど、人物の表情の愛らしさが増してくるように感じられます。