年末の阪神百貨店の古書ノ市ほか

 前回の古本の記事で、「年末最後の古本市」と書いていたのは、阪神百貨店の古書ノ市のことで、今回はBOOK&CAFEという名前に変わって、喫茶コーナーが併設されていましたが、出品古書店の顔触れは以前と変わってませんでした。四天王寺の古本市などと比べると、白っぽい本が中心で、値段も高く、敬遠する向きもありますが、他の古本市では見かけないような本もたくさん出されているので、私は好きな部類の古書市です。そこで下記2冊を購入。
東雅夫編『書物の王国2 夢』(国書刊行会、98年7月、1300円) 
由良君美メタフィクション脱構築』(文遊社、95年4月、1400円)
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 オークションでは、詩集を安価に買うことができました。
清水茂『私のものではない言葉を』(土曜美術出版販売、19年10月、330円)
清水茂『一面の静寂』(舷燈社、18年4月、300円)
岩切正一郎詩集『秋の余白に』(ふらんす堂、00年12月、300円)→ボードレール論を書いている人。静謐な言葉。
貞久秀紀『昼のふくらみ』(思潮社、99年8月、300円)→2019年11月9日記事参照。
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 詩集以外は次のとおり。
柄澤齊『銀河の棺』(小沢書店、95年3月、600円)→装幀の高級感が何とも言えない。
池上俊一『中世幻想世界への招待』(河出文庫、12年9月、600円)
ミチオ・カク斉藤隆央訳『パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』(NHK出版、06年1月、940円)→私の頭で理解できるかはもとないが、このところ時間SFを読み続けている関係で、理論的な裏付けをしようと思い。
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 「日本の古本屋」では、盛林堂書房から、
浅見克彦『時間SFの文法―決定論/時間線の分岐/因果ループ』(青弓社、15年12月、1500円)→たくさんの時間SF作品を取りあげて、時間理論を考えているらしい。
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 アマゾンの古書では、いずれもバリューブックスで、安価な買い物。
石井辰彦『あけぼの杉の竝木を過ぎて』(書肆山田、20年5月、22円)→歌集。若書きだが、ゴチック・ロマン調も感じられる。「到來(トウライ)の薔薇の香水(パルファン)。生きながら腐臭(フシウ)を放つ身に振りかける」。
内堀弘『古本の時間』(晶文社、13年9月、923円)→カバーなしなので安い。
田中小実昌『世界酔いどれ紀行 ふらふら』(知恵の森文庫、00年8月、21円)→このタイトルと表紙の絵を見ては、買わないわけにはいかない。以前読んだような気もするが。
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 次に、古本ではありませんが、新刊で下記の本を購入。
岡崎武志/古本屋ツアー・イン・ジャパン編『野呂邦暢 古本屋写真集』(ちくま文庫 2021年)
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 懐かしい写真がたくさんありました。神田や早稲田の古本街は、まさに私も野呂邦暢と同様、ある種の憧れを持って若いころから何度となくうろついた場所でした。野呂邦暢の古本と映画の日々を懐かしんだ文章も、当時もがいていた若い自分をいとおしむような目線が感じられ、心に響きます。「読みあげた本を閉じて、表紙を撫でさするようでなければ読書とはいえない」と言う叔父や、ニーチェの「この人を見よ」を一晩で読んで短く勘所を要約したY、ビンスワンガーの現存在分析について語りカーター・ブラウンを原書で読むTなど、彼のまわりには凄い人たちがいっぱい居て、彼を引っ張って行ったことが分かります。