:挿絵本少々

 このところ、愛書狂や挿絵本に関する本を読んでいる影響で、とてもそれらの本に出てくるような高価で貴重なものではないですが、私にしては少し高めの本をオークションで購入しました。次の2冊です。
Marcel Brion『Miroirs d’un age d’or』(私家版、59年1月、2000円)
黄金時代に関するエッセイ。400部限定。無地の函入りで、表紙、裏表紙とも無地。黄金時代を描いた銅版画で本文を挟みこんでいる。中は、マヤの彫像やルソー「眠るジプシー女」、アルチンボルド「春」、ブーシェ派の「鳥籠をかついだ少女」など8点の挿絵。
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左は黄金時代を描いた銅版画、右は扉
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左はヴィルモランの献詩、右は「鳥籠をかついだ少女」のページ

Aloysius Bertrand『Gaspard de la nuit―Fantaisies à la manière de Rembrandt et de Callot』(Les Fremiers Généraux、57年、1901円) 
 副題に「レンブラント・カロー風の幻想曲」とあるように、レンブラントやカロの版画から霊感をえて作られた散文詩。この本には、そのレンブラントやカロを中心に、サルバトール・ローザやクラナッハなど35点の挿絵が挟まれ、ベルトラン自身の16点のデッサンも付録でついている。
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左は表紙、右は扉
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左がカロ、右がパンタグルエルの挿絵
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これはベルトランのデッサン


 次に特筆すべきは、下記の本。
竹友藻風『希臘詞花抄』(新しき村出版部、大正13年8月、500円)
裸本のため安価だが、造本、装幀、紙質、挿絵、印字どれも素晴らしい。「翻譯にはあらず。詞花集を繙きながら、遥かにわが心より浮び出でたるおもかげを捉へたるのみ」という希臘詩人の詩を集めた「希臘詞花抄」、ピエール・ルイスの『ビリティスの歌』から訳出したらしい「パンフィリア牧歌」、最後に「わが創作の詩の中より古代のおもかげをとどむるもの」を集めた「聲律」の3部からなっている。いずれも抒情的な短詩で、味わいは高尚にして典雅。

 オークションではもう1冊。
渋沢孝輔『貝殻幻想―原型とリズム』(小沢書店、昭和59年8月、500円)

 古本屋では、大阪の飲み会のついでに、難波T書房にて、
村松定史『旅と文学―Voyages et impressions littéraires』(沖積舎、11年6月、1000円)→同著者のローデンバッハの詩の翻訳や、ローデンバッハの日本における書誌についての本を読んだことがある。村松定孝の息子さんとのこと。ご自身の海外体験記。
F・v・ロイター桂近乎訳補『ヴァイオリン音楽』(音楽文庫、昭和31年10月、100円)→上記の本を買おうと帳場に持って行ったら、ちょうど机の上に置いてあった。音楽文庫では『ヴァイオリン音楽史』というのを持っているが、この本は初めて見た。音楽文庫はヴァイオリンが好きなようだ。
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 同じく難波T書店にて、税抜580円均一。
「日本の美学17 特集:幻想―夢・幻の文化誌」(ぺりかん社、91年7月、626円)→この本もなぜか持ってなかった。川村邦光「他界の幻視 夢見の技法」が面白そう。

 麻雀会のついでに、いつもの堺筋本町T書店にて、
小杉一雄『奈良美術の系譜』(平凡社、93年6月、1404円)→地元の美術をもう少し勉強しなくてはと思い。読みやすそうで内容も面白そうだし、著者自らの可愛らしい線描デッサンがたくさん入っていたので。