:リヒャルト・シュトラウスの四つの「小品」

 久しぶりに音楽の話題。最近、標記の曲の入ったCDが気に入ってよく聴いています。
RICHARD STRAUSS: Wolfgang Sawallisch(p), Sinnhoffer-Quartett
「Complete Chamber Music1」(ARTS)

 以前にも書いたかもしれませんが、学生の頃は後期ロマン派音楽が好きだったにもかかわらず、マーラーの方ばかりに気が向いて、R・シュトラウスは「英雄の生涯」とか「家庭交響曲」のト書きに見られる世俗っぽさや自己顕示欲に辟易して、遠ざけていました。その後、「メタモルフォーゼン」や「死の変容」などで幾分見直し、最近は「アルプス交響曲」や「ヴァイオリン・ソナタ」にはまっていました。実は、R・シュトラウスの本領であると言われているオペラはまだ真面目に聞いたことがありません(これは楽しみに取っている)。

 この四つの「小品」はいずれもシュトラウスの若い頃の作曲で、素直な感性に溢れた若々しい曲ですが、さりげない技巧も感じられます。サロン音楽的な雰囲気もあり気軽に楽しめます。こういう単純な曲が好きになるというのは、私の頭が単純だからでしょうか。

 なかでも、3曲目の「アラビア風舞曲」(ニ短調 AV182 1893年作曲)が最高の味わい。アラビアの音階が採用されていて、今聴いても現代的な感じがしてとても洒落ています。終わり方がきりっと格好よく、アンコールで演奏すると大受けするような曲です。R・シュトラウスのお茶目な面が出ていて、同じく東洋趣味の曲を多数書いているヨハン・シュトラウス以上だと思います。

 次に、4曲目の「愛の歌」(ト長調 AV182 1893年作曲)はとても美しい曲で、はじめに弦のピツィカート伴奏でピアノがメロディを奏で、次にピアノ伴奏で弦がメロディを奏でる主旋律は、CDの解説書にあるように、黄昏の優しさにみちています。この二つの曲はほぼ同時に作曲され「二つの小品」としてひとくくりにされているようです。

 その次のお気に入りは1曲目「セレナード」(ト長調 AV168 1880年作曲)。北欧の小曲を思わせるどこか寂しげな表情がただよい、シンプルで清冽な抒情が感じられます。サヴァリッシュのピアノの音色がなんとも言えず、天上的に美しい。2曲目の「行進曲」(ニ長調 AV178 1884年作曲)は一転曲想が変わり、勇ましく、典礼音楽風な華麗な印象。


 このCDに同時に収められているのが、同じくリヒャルト・シュトラウスのピアノ四重奏曲(ハ短調 op.13 1886年作曲)で、実は何度聞いても頭にあまり残りません。いつも同じところでハッと気がつくのですが、それは1楽章と4楽章のうねるような流れるようなフレーズの箇所です。弦楽四重奏曲のなかでは、技巧もあり、独創的な印象があります。4楽章などは、オーケストラのふくらみを感じさせるところもあります。

 R・シュトラウス室内楽に興味が湧いてきたので、引き続き「チェロ・ソナタ」「弦楽三重奏のための変奏曲」「弦楽四重奏曲」「ピアノ三重奏曲」「ヴァイオリン協奏曲」などが収められたCDを発注しているところです。


 それから、話題は変わりますが、最近、思い立ってノイズキャンセリングのイヤフォンを購入しました。サラリーマン時代通勤電車の中で使っていましたが、その当時のイヤフォンも紛失してそのままになっていました。しばらくぶりで聴いてみると、性能が向上したのか、嬉しくなるほど電車の轟音が小さくなります。大阪や京都へ出るのが楽しみになりました。