:日夏耿之介の仏訳詩集を購入

 前回予告していた本が届きました。堀口大學仏訳『日夏耿之介の詩』です。こんな本が出ているのはまったく知りませんでした。
traduits en français par Nico-D.Horigoutchi『POÈMES de Konosouké Hinatz』(Fauconnier、1923年4月、6540円送料込)

 実はオークションでこの本が出ていたので、早速入札しましたが、またたく間に9000円以上となり、いつものように古本屋の検索をかけてみましたら、フランスのAで6540円で(しかも1冊だけ)出ていたので、慌てて買った次第です。オークションの本は堀口大學の献呈が入っていたので高かったのですが、私は内容を知りたいだけなので。

 読むところまでは行ってませんが、閑にまかせて、掲載されている仏訳の詩を日本語の原詩と対照してみました。何かのご参考になれば。(仏訳書掲載順、原詩ページ数は講談社『日本現代文學全集38』による)

Voyage d’un Ermite sous la lune「道士月夜の旅」(『黒衣聖母』)p346
La Poupée tentatrice「蠱惑の人形」(『黒衣聖母』)p347
Le beau Garçon au Visage pâle「逭面美童」(『黒衣聖母』)p348
La Tristesse「悲哀」(『黒衣聖母』)p348
La Religion「宗教」(『轉身の頌』)p323
Les deux Mains sur les genoux de Dieu「雙手は神の聖膝の上に」(『轉身の頌』)p324
Là-haut, dans le Ciel「空氣上層」(『轉身の頌』)p324
Ab Intra「AB INTRA」(『轉身の頌』)p328
Fragment「魂は音楽の上に」(『轉身の頌』)p326
Correspondance d’Outre-Tombe「他界消息」(『轉身の頌』)p274(『日本現代文學全集』には見当たらなかったので河出書房『日本現代詩体系第五巻』の頁)
La Toux ambitieuse「野心ある咳」(『轉身の頌』)p335
Professeur de théologie「神学教授」(『轉身の頌』)p340
La Visite「訪問」(『轉身の頌』)p331
La Villa joyeuse「快活なるわがVILLA」(『轉身の頌』)p324
Soupirez「吐息せよ」(『轉身の頌』)p326
Solitude「寂寥」(『轉身の頌』)p335
Prunelles noires「黒瞳」(『轉身の頌』)p336
L’Impuissance est un sacrilège「非力は褻瀆也」(『轉身の頌』)p324
Salutation「挨拶」(『轉身の頌』)p340
Champagne「三鞭酒」(『轉身の頌』)p341
La Mort et l’Amour「死と愛と」(『轉身の頌』)p327
Habitant de la Mer「海の市民」(『転身の頌』)p324
Lune antique「古風な月」(『転身の頌』)p339
Tragédiens dans une Nuit de Printemps「悲劇役者の春の夜」(『轉身の頌』)p339
Prière du Soir「ある宵の祈願の一齣」(『轉身の頌』)p326
Je vis「かかるとき我生く」(『轉身の頌』)p323
Éblouissement「羞明」(『轉身の頌』)p331
Le Vent intelligent「賢こき風」(『黒衣聖母』)p359
N’éparpillez pas votre âme「心を析け渙らすなかれ」(『轉身の頌』)p325
Une Puissance「Une Jouissance」(『轉身の頌』)p323
Cadavre「尸解」(『黒衣聖母』)p354
 これを作成するのに、『日本現代文學全集38』と『日本現代詩体系第五巻』を両方参照しましたが、詩の順番とか、詩の語句とかが両書で異なっていました。『日本現代文學全集38』が大正6年刊の初版、『日本現代文學全集38』が大正11年の再刻本に拠っているからでした。


 他には、オークションで、
「玻璃」創刊號/第二號/第三號(玻璃舎、昭和57年10月/昭和58年9月/昭和59年9月、3冊3000円)

 限定300部。関川佐木夫が中心になった同人誌。「古酒」のメンバーと重なるところがあるように思います。矢野峰人、森亮、新城善雄、星野慎一あたりが有名どころ。2號に早くも南條竹則がミドルトンの翻訳を載せているのは驚きです。西原伊兵衞の「長谷川潔交遊録」は貴重、小城正雄「日夏耿之介『呪文の周圍』の考察」、佐藤良雄「矢野峰人先生と山内義雄先生」というのも面白そうです。他に無名の人たちがたくさん詩を寄せていますが、そんなに質は悪くない印象です。

 創刊號の表紙の銅版画が剥がれていたのが安い理由でしょう。本の作りがさすが関川佐木夫らしく凝った装幀で、前の所有者がまったく読んでおらずアンカットのままなので、ペーパーナイフでとりあえず1ページずつ開きました。良質の和紙なので硬くて刃が通りにくかった。


 他は下記の2冊。いずれもオークションです。
李家正文『異国思想の伝来と日本の宗教』(泰流社、88年1月、126円)→このところ李家正文を読んで面白かったので、オークションを調べてみたら、関心のあるテーマの本が意外と安く手に入りました。仏教、道教儒教それぞれの日本への伝播と、神道が外来思想から受けた影響について書かれているようです。
須永朝彦『血のアラベスク―吸血鬼読本』(ペヨトル工房、93年4月、500円)→若干下世話な印象があって敬遠していた。「吸血鬼文芸小史」が収められていて面白そう。
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