:最近よく聴くCD

 「ときどき音楽」というタイトルなのに、このところ音楽の記事が滞っているのは、コンサートにほとんど行かなくなったのが一因。このままではタイトル倒れか、というので仕方なく最近聴いているCDの話でも書いてつなぐことにします。

 海外旅行では必ずその土地らしいCDを買うことにしていますが、この前の英国・アイルランド旅行の際にも、CDを3枚買ってきました。
「MASTERS OF THE IRISH HARP」(RTÉ lyric.fm)
「SPIRIT OF LONDON」(River Records)
「Music from THE CORONATION OF HER MAJESTY QUEEN ELIZABETHⅡ」(GRIFFIN)
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 アイリッシュ・ハープのCDはダブリンのトリニティ・カレッジの斜め前の小さなCD屋さんで、他の2枚はロンドン塔かウェストミンスター寺院のショップだったと思います。いかにもお土産然としたCDで恐縮です。


 そのなかでも今いちばんよく聴いているのは「SPIRIT OF LONDON」で、ほのぼのとした曲があったり、祝典的な華麗さや厳粛さがある曲もありますが、全体として穏やかで質実な国民性が伝わってくるように感じます。なかでも、
FARNON作曲「The Westminster Walts」
TATE作曲「St.James’s Park-a Lakeside Reverie」
ELGAR作曲「Nimrod」
の3曲がお気に入り。

 「The Westminster Walts」は、どこかミュージカルっぽい曲想で、胸がキュンとなるような懐かしさに溢れています。「St.James’s Park」は、平和に満ちた田園の夕暮を思わせるような静かで心地好い曲です。「Nimrod」は、変奏曲「エニグマ(謎)」op.36の第9曲とのこと。「エニグマ」は演奏会で1回だけ聞いたことがありますが、覚えてませんでした。今回じっくりと聴いてみて、同じくエルガーのチェロ協奏曲の1楽章冒頭部や「威風堂々」にも見られるようなエルガーらしい盛り上げ方が印象的です。ひとつのメロディが低音部と絡みながら反復されていきますが、徐々に音量が大きくなって、まだ続くかなと思ったところで静かに終わって行く感じが、もう一回聴きたいという気持にさせられます。今度「エニグマ」全曲をゆっくりと聴いてみることにしましょう。


 アイリッシュハープのCDはアイルランドを代表するハープの演奏家をずらりと並べたアンソロジーで、入門としては最適のCDだと思います。伝統的な曲と、近代の曲とがほぼ交互に収められていて、伝統曲は近代の作曲家がアレンジしたのも含めて全16曲中①③⑤⑧⑩⑪⑫⑬⑮の9曲。

 伝統曲はいずれも同じ特徴があり、とくに①「The Geese in the Bog」⑤「Port an Deorai/An Phis Fliuch」⑧「The Green Mountain/The Hearty Bucks of Oranmore」⑬「Rakish Paddy/The Bucks of Oranmore/The Mortgage Burn」が際立っていますが、短い音の連なりが一つの小さな単位となって、それが旋回したり反復したりいくつか組み合わさりながら、一つのメロディに織りなされていく形になっています。そのメロディもまた反復しながら少しずつ形を変えて進行していきますが、細かいリズムは同じままです。専門的なことはよく分かりませんが、このリズムはアイルランドのジグというリズムらしい。どこかミニマリズムのコンピュータ音楽のようにも感じられます。がこれはまた同じケルト民族が作った文化遺産であるケルト装飾の反復的な折り重なりと同じ構造を秘めているように思われます。どなたか音楽と装飾の共通性を数学的に解析できる人はいないものでしょうか。

 近代曲のなかでもこうした要素のある曲(⑨「Reel for a Water Diviner」)がありました。また⑦「Da Mihi Manum」にはどこかアジア的な響きを感じましたし、⑫「The Monaghan Jig」には、日本のポルトガル音楽演奏家マリオネットの曲想と同じものを感じました。ハープの音色がポルトガルギターの音色に聞こえてくるから不思議です。それがマリオネットのどの曲に似ているか、調べれば分かると思いますが、今日はしんどいのでこの辺で。


 これ以外にいま車の中でよく聴いているのは、エンニオ・モリコーネ名作集。
「I grandi successi di ENNIO MORRICONE」(BRISA)

スーパーのバーゲンで4枚組1980円の安売りCDで、まだ1枚目しか聴いてませんがなかなかのもの。しばらくこのCDとお付き合いすることになりそうです。