:古本ツアー関連本三冊

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北尾トロ『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』(風塵社 2007年)
北原尚彦『古本買いまくり漫遊記』(本の雑誌社 2009年)
「古本の雑誌―別冊本の雑誌16」(本の雑誌社 2012年)(読んだ順)


 来週、金沢へ古本ツアーに出かけるので、気分を盛り上げようと、古本旅の本を立て続けに読みました。「古本の雑誌」は最近出た新刊ですが「日本全国古本屋ガイド座談会」というのが載っていて何かの参考になるかと思い。

 情報量、面白さともに、「古本の雑誌」が圧倒的。次が北原尚彦、北尾トロの順番でしょうか。

 「古本の雑誌」は、「本の雑誌」にこれまで掲載された古本に関する文章に、新たに企画した読み物を合わせて載せています。稀書自慢、日本全国古本屋ガイド、変わった古本屋(!)、古本の売り方から古本屋の経営に至るまで網羅しています。「古本探し競争」や「古本お宝鑑定団」まであるぞ。巻頭の「座談会古本者人生すごろくを作ろう!」が面白い。「神田の古本屋街に行くぞっていって、神田で降りた・・・あれは通過儀礼(p7)」とありましたが、鹿島茂さんなんかも書いていたと思いますが、私も高校生の時にはるばる上京して同じようなことをしたことを思い出します。

 古本病者が続々と出てきて、びっくりするような症例を披露しているのでたまげました。私なんかはまだ風邪のひきはじめのようなものです。版や表紙が違っていれば集めたり、帯がついているのでまた買ったりするところは尋常ではない。印象に残った古本マニアは、彩古(古書いろどり)、土田館長(ネット「幻想文学館」)、森英俊、Kashiba(ネット「猟奇の鉄人」)、よしだまさし(ネット「ガラクタ風雲」)、牧眞司。いずれもミステリー、SF系の印象です。私と趣味が合いそうなのは扉野良人

 「古書現世」の向井透史さんが、「ネット検索以前はやはり『次いつ会えるかわからない』があったから売れていた所もあるわけで、結局今のようにある程度いつでも買える・・・貸本に近いような世界になれば『蔵書家』という人も確実に減るでしょう(p105)」と鋭く書いてたのを読んで目からウロコ。そうだ、読みたいときだけ検索してネットで注文すれば三日もすれば届くわけで、手に入りやすい本は持たなくてもいいんだと一瞬納得しかけましたが、しかし手元にいつもあるというのは、不合理ですが別の魅力なんですね。

 「自分のホームページに『古本売りますコーナー』(p179)」を作っているというよしだまさしさんの記事を読んで、わたしもダブリ本なんぞをこのブログで売り出そうかとか思ったりもします。郵送作業が面倒臭そうだけど、そのうち。

 あと、国枝史郎が翻訳したアンソロジー『恐怖の街』(松光書院)がちかぢか復刊されるとか、菊池秀行がむかし水田冬樹彦というペンネームでポルノを翻訳していたとか、「アイデアNo354特集:日本オルタナ出版史」(誠文堂新光社)という面白そうな雑誌が出ているとか、いろいろ情報が得られたり、「新刊を書店で買うのは魚を買いに魚屋に行くようなもの、古本には狩りの楽しみがある(p155)」というKashibaさんの言葉に共感したり。                                 


 『古本買いまくり漫遊記』は、たくさんの古本屋が出てきて得るところが多かったですが、類書にはあまり見られない海外古本の情報がたいへん役に立ちました(マレーシアは別として)。ベルギー編で紹介されているブリュッセルの古書ギャラリーには行ったことがありますが、ブリュッセルの他の古本屋や古本村ルデュの情報は貴重です。英国ではロンドンもヘイ・オン・ワンも行ったことがないので、いつか行く機会があれば参考にさせていただくつもりです。

 著者が買った『アラビアンナイト』の「アラジン」のイラストを見て、アラビアでなくて中国だと呆然とされています (p184)。これは描き間違いではなくて、もともとこの話は中国が舞台なんですが。

 他にも不満を言えば、埼玉県のどこかの「ヒミツの場所」でたくさん古本を買った話が紹介されていますが、そんなことは書かなければよいでしょうに、悔しいだけでちっとも面白くなんかない。


 『ぶらぶらぢんぢん古書の旅』は、探求書の趣味が違っていて、なんでこんな本を買うのか不思議な気がしてあまり参考にはなりませんでしたが、旅になぜかついて来る出版社社長とのやり取りなど、文章は軽快で面白い。

 当然ですが、北海道や岡山など『古本買いまくり漫遊記』と同じ本屋が出てきます。両方に出てくるチェーン店の「ほんだらけ」に興味が湧いて調べてみたら、なぜか関西だけにはありませんでした。残念。