:秋古本シーズン到来。四天王寺秋の大古本祭りと天神さんの古本まつり。

 大阪のふたつの古本市に行ってきました。

 まず、四天王寺は初日。天気予報は曇のち晴なのに、朝からずっと小雨が降り続いて、開場の10時になっても100円均一や各書店均一平棚のテントは蔽われたままの状態。仕方なく、テントの中の高い本から見て行きました。30分ほど一冊も収穫のないまま焦りが出てきたころに、下記二冊を購入。
橘外男『ナリン殿下への回想』(春秋社、昭和13年8月、1000円)→裸本で汚いので安くしたと店主が言っていた。
奥野他見男譯『夜の巴里』(潮文閣、大正13年4月、500円)→これも裸本。背表紙には奥野他見男の名前だけ。奥付も奥野他見男著となっており、原著者名はどこにも表記されず。

 やがて雨も上がり、均一台で、下記二冊を購入。
『現代詩人全集 日夏耿之介西條八十・加藤介春』(新潮社、昭和5年2月、300円)→昔100円均一で出ていて新潮文庫と同じ内容と思い買わず、後悔していた本。
『現代詩人全集 初期十二詩人集』(新潮社、昭和5年5月、300円)→珍しい詩人たちが収録されている。

 5冊1000円のコーナーでは、古本仲間と共同購入、私は三冊分。
『繪本稗史小説 第四集』(博文館、大正7年4月、200円)→全巻揃まであと第十集を残すのみ。
式場隆三郎『サド侯爵夫人』(鱒書房、昭和31年2月、200円)
蘆原英了監修『世界春歌抄 イギリス・ドイツ篇』(自由国民社、70年8月、200円)→原詩と対訳になっている。フランスアメリカ篇もあるようなのでぜひ買いたい。

 ここで正午となり、仲間と昼食の後2時半ごろまで会場をうろうろ。夕刻に市内で用事があるため荷物を送ることに決めましたが、箱に余裕があったのでつい買い過ぎてしまいました。
ボオドレエル馬場睦夫譯『惡の華』(洛陽堂、大正9年8月、500円)
小沼丹『懐中時計』(講談社、昭和45年2月、500円)
小牧健夫『珊瑚樹』(白水社昭和11年9月、300円)→小川芋銭装幀。
川路柳虹『藤村詩集』(魚住書店、昭和42年3月、300円)→「詩集」とあるが評論・鑑賞の手引き。
瀧口修造の詩的実験1927〜1937』(思潮社、77年6月、300円)→縮刷版だがそれでも安い。
大和資雄『文學の交流』(鮎書房、昭和18年2月、200円)→比較文学評論が中心。
林望『書薮巡歴』(新潮文庫、平成10年11月、200円)
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 天神さんの古本まつりは土曜日に行きましたが、途中乗り換えをする堺筋本町駅にあるT書店へ寄ったところ、古本まつりで待ち合わせをしていたはずの仲間の一人が店内で物色しているのを発見。同じ思いとは!古本病恐ろしや。
この店で、下記を購入。
霜山徳爾『仮象の世界―「内なるもの」の現象学序説』(思索社、昭和61年4月、380円)
→各章のタイトルが「万華鏡の世界ーまぼろしの巷」「自閉の本質―陸沈孤生の人」「不安の照翳―行人と行人」「人間と慟哭―秋霜冬花」「自由の眩暈―浮雲流光」「遊戯と生命―瑠璃の幻影」など陰々滅々なのに惹かれて。

 天満宮に3時ごろ着、さっそくY書房の3冊500円の棚で、
ド・クィンシー岩田一男訳『スペイン武勇尼僧伝』(評論社、昭和40年6月、200円)→著者名とタイトルに惹かれて。
安田保雄編『「海潮音」原詩集』(冬至書房、昭和48年8月、200円)
あと一冊見つからず、結局一冊200円に。
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 百円均一コーナーでは、興奮した勢いで重たい本を買ってしまいました。
佐藤正彰訳『世界文學大系73千一夜物語』(筑摩書房、昭和39年1月、100円)
厨川文夫譯『ベーオウルフ―附フィンズブルフの戦』(岩波文庫、昭和27年2月、100円)→怪物との戦いが格調高い文章で描かれている。訳者は厨川白村のご長男とのこと。

 あちこちまわって戦果なく、最後にY書房のテントに戻り迷った挙句購入したのが、
ハズリット橋輭石譯『日時計』(關書院、昭和27年11月、1000円)→随筆集。橋輭石の訳文の柔らかさを期待して。訳者本名「泰来」のサインあり。

 その後、天三商店街を北上、T古書で、
伊吹武彦『ジュール・ラフォルグの文体』(白水社、64年1月、900円)
→退官記念出版の一つ、講義をまとめたもので、原詩の細かな注解がなされている。印刷ミスの厖大な正誤表が付いていた。大学時代あまり出席しなかった講義の雰囲気を味わいたいと考えて購入。


 オークションでは、下記を購入。
松尾邦之助『フランス放浪記』(鱒書房、昭和22年4月、480円)

 古本熱下火と言いながら、結構買ってしまいました。