:古本購入減退すれど収穫多し

 このところ古本を買う機会、点数ともに減少しているという実感があります。いろんな要素があると思いますが、ひとつはやはり高齢なだけにこれ以上買っても読めるのかと内心うすうす思っていること、50年も買い続けて買うべき本はだいたい買ってしまったという驕り、それはすなわち新しく興味を抱く分野が開拓できないでいるという好奇心の減退、置くスペースが確保できなくなりつつある、金もなくなりつつ,etc。


 点数が少ない割には、今回私にとっては貴重な本を買うことができました。
 まず、前回古本報告(9/16)の際予告しておりました島田謹二。上下二巻で二段組み、ともに600頁を越し、とても部厚くて重い。日本の比較文学のはじまりから、ラフカディオ・ヘルン、鴎外『即興詩人』、上田敏海潮音』、永井荷風『珊瑚集』、佐藤春夫ポルトガル文』、『東京景物詩』、台湾の外地圏文学、ユーモア比較などを論じた濃い内容。先日読んだ「『田園の憂鬱』考」も収められています。はたして読むかどうか。
島田謹二『日本における外国文学―比較文学研究』上・下巻(朝日新聞社、上巻昭和50年12月・下巻昭和51年2月、2冊で2940円)
///


 今年初め『春愁抄』に収められた「薄暮の薔薇」を読んで、どこやら世紀末象徴詩風の漂う川路柳虹の詩がたいへん気にいっておりますが、オークションで「巴里詩抄」という詩集が出ているのを見つけ、タイトルを見ただけで入札したところ誰も競争相手が現われずすんなりと落札。届いた現物は期待どおりの素晴らしい内容で感激しました。サイズは文庫サイズで、仙花紙でとても軽く、著者自らのペン画が所々添えられています。パリ風景を歌った「巴里詩抄」、南仏、イタリア、ロンドン、ポーランド、あげくは蘇州まで出てくる「南欧詩抄」、抒情小曲「うしろ姿」の三部に分かれています。
川路柳虹『抒情小曲集 巴里詩抄』(臼井書房、昭和22年4月、800円)著者装幀装画
///


 他に、いつものK書房のオークションで、下記二冊。
ダンテ竹友藻風訳『新生』(垂水書房、昭和36年6月、500円)
沓掛良彦編『詩女神(ミューズ)の娘たち―女性詩人、十七の肖像』(未知谷、00年9月、880円)

             

 竹友藻風訳『新生』は藻風の遺作となったもので、訳文はたいへん格調高いものがあります。


 別のオークションで、上田周二の下記の本を見つけ、学生時代「闇の扉」のシュルレアリスム的作風に感銘を受けたことを思い出し、タイトルも同じ作風を思わせたので入札し落札しましたが、なんのことはない作者の自伝でがっくり。
『幼少夢譚』(沖積舎、平成5年9月、365円)