音楽の話題から遠ざかっていたので、最近よく聴いているCDについて。
音楽の聴き方は人によってそれぞれだと思いますが、私の場合は、気に入った曲をみつけたら、その曲をしばらくは繰返してかけるようにしています。ほかにもいろんな曲と並行しながらですが、だいたい3ヶ月ぐらいは聴き続けます。ですから、一年間にだいたい3〜4枚のCDに病み付きになっている勘定です。
このところは標記のCDをよく聴いています。演奏はギル・シャハム(Vn)と江口玲(P)。ひと頃シャハムをよく聴いていて、このCDもその流れでずいぶん昔に買っていたものです。
よく聴くようになったきっかけは、2月に西村朗さんの講演会へ行った時、講演の終わりにフォーレを絶賛する言葉が少し気になり、それまで漠然と聞いていてあまり印象に残っていなかったので、注意して聴くようになりました。
音楽は不思議なもので、まったく自分にとって印象に残らないときと、同じ曲でもある時期突然に自分の中に快く響いてくるときがあるものです。
真っ先に心のなかに沁みこんだのは、「ロマンス 変ロ長調 作品28」、典雅で少し哀愁を感じさせるメロディーが何ともいえません。そのメロディーが、途中の変奏で細かいリズムになって演奏されるその音の揺れる具合、じっとその音の行方を追いかけながら聴いていると、別世界に連れて行かれるような気持ちになります。
「ヴァイオリンソナタ第一番 イ長調 作品13」も、しっかりした構成の4楽章からなる曲で、1楽章、3楽章のピアノのコロコロと転がるような音が魅力的ですが、何と言っても4楽章が圧巻、とてもフォーレらしい情感ゆたかな美しいメロディーが延々と続きます。
このほか、「シシリエンヌ 作品78」「子守歌 作品16」「アンダンテ 変ロ長調 作品75」「月の光 作品46の2」「夢のあとに 作品7の1」ももちろん素晴らしいですが、あまり知らなかった曲で「初見試奏曲」というのは短い曲なのにフォーレの魅力に溢れています。文字どおり音楽大学の試験のために作った曲とのことですが、こんな曲をテストで弾ける学生は羨ましい限りです。
どちらかと言えばドイツ音楽になじんできた耳には、とても新鮮な音の並び具合です。ドビュッシーやラヴェルに共通する魅力だと思いますが、時代を考えると、ドビュッシーやラヴェルより随分早いので、フォーレにフランス音楽の原点があるような気がします。フォーレより時代の早いサン=サーンスにも美しく好きな曲がたくさんありますが、あの独特のフランスっぽい雰囲気はやはりフォーレからだと思います。この洒落た感覚に慣れてくると、敬愛するベートーヴェンやマーラーも田舎のおじさんのような気がしてくるから不思議です。