:ネマニャ「悪魔のトリル」公演

音楽の話題が途切れているので一つ。

昨日(3月5日) 、兵庫県立芸術文化センター大ホールで行なわれた標記のコンサートへ行ってきました。
演奏はネマニャ・ラドロヴィチ率いる弦楽6重奏ユニット「悪魔のトリル」。
///
プログラム               ちらし

このコンサートへ行ったのは、芸文センターのホームページで見て面白そうだと思っているところに、毎日新聞のCD評(だったと思う)で梅津さんが推薦されていたのが決定打となりました。

行儀の良いクラシックに音楽本来の力と楽しさを取り戻そうという最近の傾向にあるもので、ヴァイオリンの持つ悪魔性に焦点を当てて拡大したコンサートと言えるでしょう。

衣裳は全員黒ずくめで、ネマニャは細い革のパンツにロックスター風縮れた長髪、照明はネマニャに赤いスポット、曲によって青も使うなど。演奏スタイルも体を大きく揺らしたり、奏者同士が見合いながら演奏するなどロックコンサート風、カリスマ的雰囲気がある。

音楽以外の要素でも惹き込まれてしまいました。しかも音楽的レベルは決して低くなく、ネマニャのヴァイオリンは、ときには金属音を発して弾きまくりますが、あくまでも清澄で、音程を的確に刻んでいました。

後ろのほうの席だったのに音が明瞭に聞こえたのはホールの音響の素晴らしさだと思います。

印象深かったのは、1曲目のクライスラー「ブニャーニの様式による前奏曲アレグロ」、2曲目のヴィエニャフスキ「伝説曲op.17」、それとアンコールのヴィヴァルディの「四季〜夏第3楽章」、チャルダーシュ風の曲、サラサーテ「アンダルシアのロマンス」(の筈)です。

やはり東欧風やジプシー風のくずれた(エキゾチックなと言った方がよいか)雰囲気の曲がぴったり合うようです。ジプシーヴァイオリンのようなノリですが、ラカトシュのようにジャズ風なところはありません。あくまでもクラシックの枠の中での行儀の悪さです。

バロックの演奏は同じ調子で弾く曲想が多いので、ややもすると金属音が単調に聞こえてくるきらいがあります。ネマニャのヴァイオリンは緩急強弱ニュアンスのある浪漫派以降の作品に向いているような気がします。ただアンコールのヴィヴァルディだけは衝撃的な演奏でした。昔イル・ジャルディーノ・アルモニコで、この曲を聞いたときのことを思い出しました。

他に、ヴィターリ、タルティーニ、シューベルトチャイコフスキーなどを演奏しましたが、シューベルトのロンドは彼らに合っていないように思いました。あくどさがマイナスで、ここはやはりウィーンコンツェルトハウスの古色蒼然かつ可憐な演奏が良いように思います。