:天満敦子ヴァイオリン・リサイタル


 先日、秋篠音楽堂で行なわれた標記コンサートに行ってきました。

 天満敦子さんは、95年3月に、一度サントリーホールで聴いたことがあります。その時も素晴らしい音色と豊かな味わいに魅了されましたが、今回はさらに豊かな音量と熱い演奏に圧倒されました。狭い会場でなおかつ3列目に陣取ったせいでもありましょう。

 アンコールから始まって逆に進んでいくようなコンサートの構成で、リラックスした演奏から、前半最後の曲のヴィターリを境に、熱のこもった本格的な演奏に入るという感じでした。

 天満さんのヴァイオリンは、ヴィオラのような印象を受けるもので、低音部がものすごく豊かな響きで、ときどきギトリスの弾き方に感じるような歌うような柔らかい響きになります。ヴァイオリンの弾き方はよく知りませんが、この柔らかい響きのときは、弓を押さえる力を弱めて、弦と触れるか触れないかの状態で音を出しているような気がしました。

 高音部は、最近の若手ヴァイオリニストたちが清澄な音色を奏でるのに比して、ひしゃげたような濁ったような荒々しい音がして初めは気になりましたが、後半は楽器が馴染んできたのか、こちらの耳が慣れてきたのか、違和感もなくなってきました。

 9月にやはり秋篠音楽堂で聴いた某外人ヴァイオリニストのコンサートでは期待に反して失望を感じましたが、ヴァイオリンの演奏は、ピアノなどと違って、音が外れているような気がし始めると、気が気でなくなり、音楽に集中できなくなってしまいます。

 後半のフランクヴァイオリンソナタは熱演のあまり2楽章が終わったところで満場の拍手が起りました。3楽章は他楽章に比べてこれまであまり印象に残っていませんでしたが、天満さんの演奏で魅力が際立ったように感じました。フランクの異郷性(うまく表現できないので勝手な言葉をあてはめてみました)を強く意識させられる演奏でした。

 「望郷のバラード」はさすがに持ち歌だけあって素晴らしい演奏でしたが、15年前に比べてさらにテンポが遅くなりねちこくなっていたように思います。アンコールはこれも持ちネタの「チャルダーシュ」、スタンディングで拍手を送る人たちも何人か出て満席の会場は興奮に包まれました。これはCDでは味わえない醍醐味ですね。